牛肩肉のフィレンツェ玉葱ソース

写真のことはとやかく言わないように。クリックしないでよろしい。盛り付けについても無視ねがいたい。で、おわかりのとおり"bavette à l'échalote"のなんちゃって、ダイヨウヴァージョンである。ここまでインチキだとかえって清々しいような気もする。が、一瞬、そんな気がするだけである。

ダイヨウはしょせんダイヨウ、なんちゃってはなんちゃってに過ぎない。エシャよりもフィレンツェのほうがたしかに1ヶあたりの価値は上だが、タマネギはタマネギ。フィレンツェは内部で分球しながら肥大するし、色目も香りもかなりシャロット的なんだが、やっぱりタマネギなのである。

なにもすべてのダイヨウを否定しているわけではない。そこのところは誤解しないでいただきたい。わかってやっているかぎりは、それをホンモノと騙らないかぎりは、いろんな事情もあるわけだし、いちいち非難すべきことじゃない。ただ、ダイヨウやミズマシしていることを隠すべきではない。あっけらかんと、「コストがすごいからなんちゃってなんですよ(笑)」と言えばいいのである。

でもまぁ、たとえ「おうちフレンチ」とはいえ、あんまりやるもんじゃないね。不味くはない、というかそこそこおいしくできても、やっぱり気分がよくない。そんなわけでちょいとばかり不機嫌である(笑。

牛スジの赤ワイン煮込み、エピナール添え

盛り付けはヘタ、写真もダメダメでまことに申しわけない。ま、素人料理だから。それに本をいくら読んだってそれだけじゃ料理のウデは上がんないのである。さて、今回は評価用の試食である。ひとつはタマネギ。チポロット(白)の完熟で、煮込みの適性を確認するため。もうひとつは試作中のエピナール。ようするに100%西洋種のホウレンソウなんだけど、今回はやや肥料不足もあって、大株にできなかった。葉だけを摘んでいきなりソテ。ニンニクを挿したフォークでまぜただけ。葉柄(軸)はつかわなかった。ま、やわらかくておいしいフツーのホウレンソウですな。インパクトはない。ついでに、夏のホウレンソウはぜんたいにそうなりやすいけど、エグ味はなかった。

タマネギのほうはバッチリ。日本のペコロスは黄タマネギを小さくつくったものがほとんどだが、こちらは白。じつにいいかんじである。それにしても、日本だとタマネギといえば黄色品種ばかりなのはどうしてなんだろう。そりゃ煮込みの小タマネギなんてのは目がさめるほどおいしいというようなもんじゃないし、そもそもそんなんじゃ困るんだが。でも、煮込みぜんたいが変わるということだけは請け合ってもいい。

一時的に産直にかんする告知をさせていただきます

本年はWEBで産直にかんする告知はしないと明言しておりましたが、臨時で、レストラン様むけ契約栽培の募集させていただきます。ようするに欠員募集ですが、今後の展開を考えると無理にご新規様をさがすのもよくないと思いますので、「絶対うまくおつきあいいただける」という方のみとさせていただきます。

  • まきもの屋の、食文化にかんする思想に共鳴してくださるかた
  • 使いたい食材を事前に明確に提示してくださるかた(今週届いた○○がよかったから来週もよこせ、というような発想をなさらないかた)
  • メールでコミュニケーションが充分にできるかた
  • 食材を実際にどのような仕立にし、お客様の反応はどうだったか、使用感、味などについてこまめにフィードバックくださるかた
  • お取引にあたって、お店のコンセプト、これまでのお料理、掲載雑誌記事、客単価、客層、稼働率等の情報を正直にお報せくださるかた

以上すべての条件を満たして、かつご興味のおありのかたはメールフォームからお問いあわせください。詳細な取引条件(価格は決して安くはありません)をお伝えしたうえでご希望があれば送料+梱包資材費実費でサンプルをご提供させていただきます。

いや、注文の多い料理店ならぬ注文の多いまきもの屋ですな。でもね、しょうがないんですよ。産直ってモロにビジネスのいいところわるいところがでちゃう、ようするに「人と人とのおつきあい」という側面がつよいんです。根っからの商売人というわけでもございませんので、まきもの屋がリチェッテ・レジォナーリとかエスコフィエ、デュボワ、カレームはてはギヨーム・ティレルあたりを原書で読んでいるのはどういうことなのかご理解いただけないと、お取引はうまくいかないんですよ。ましてや、産直なら珍しい野菜が安く手にはいるだろうなんてお考えのかたとのおつきあいはもってのほか、きっぱりとご遠慮させていただいております。

長い名前

もうしばらくしたら出荷スタートであるが、あえて、品種名そのままで出荷させていただく。メランザーナ・ロトンダ・ビアンカ・スフマータ・ディ・ローザ Melanzana rotonda bianca sfumata di rosa。「覚えにくい」なんて次元じゃない。イタリア語になじみがなかったらまず覚えられないであろうことは重々承知のうえである。が、イタリアの伝統品種だから、ほかに言いようがないのである。

商品名をどうするかということはいろいろ考える。それは事実である。が、野菜なんだから、まったくのオリジナルというわけではない。イタリア語、フランス語あるいは英語をベースに、品種名であったり系統名であったり、あるいは仕立の特徴もふくめて、もともとの名称をいかさなくてはならない。すくなくとも「なんちゃらトマト」のように好き勝手に名前をつけるのは主義に反する。

たしかに、市場などでは慣習的に、省略された言いかたや通称というのがあったりするが、自然発生的なものがのぞましい。生産者側から無理矢理に覚えやすい名称をつけてさしあげる必要もないのである。チコリア・ヴァリエガータ・ディ・カステルフランコがたんに「カステル」になっちゃうのはいいのである。ただ、こちらからそういう名称をご提案するつもりはないということである。

べつの商品名で「覚えにくい」と非難されたことがあるが(たいして長いものじゃないのに)、そもそもがそういうふうにお感じになられる方とはご縁がないのである。そういう方は「珍しい」とか「おもしろい」といった程度の価値観で野菜をとらえていらっしゃるのだろうから。

まきもの屋は市場に出荷するナスとしてはいまのところこれ一種しかないから、もし覚えにくいようであれば「まきもの屋のナス」とご用命くだされば事足りると思う。

あんまり売る気がないんだろうと言われればそうかもしれない。なにせ、とってもおいしいんナスなんだけど、正当な評価をいただけるかどうか、あんまり自信はないのである。ほんらい、イタリア、フランス料理でまず必要なのは"melanzana violetta lunga"、"aubergine violette longue"のはず。でも、現状では市場性があるとはとても思えないからやらないのである。メランザーナ・ロトンダ・ビアンカ・スフマータ・ディ・ローザはそれよりも一段マイナーな品種である。実際問題として、日本には在来のナスの品種がじつにたくさんある。イマドキはそういうのをお使いになられることのほうが多いのだろう。キュイズィーヌ・フランコ=ジャポネーズ、クチーナ・イタロ=ジャッポネーゼというやつである。食べ物なんだからおいしければ正義、商売なんだから売れれば正義である。そんなこともあって、この長ーい名前のナスには、赤字にならないことをねがうばかりである。

カレーム

エントリ2つまるごと、ごくごく一部の読者にしかウケないようなネタをやってしまったので、言い訳がましくなにか書いておかなねばなるまい。そうでもしないと、ちょっとゆるめのエントリなんぞ書いた日には即座にパスティシュ(1)をやられちゃうかもしれないので、いろいろタイヘンなのである(笑。

ほとんどの読者諸賢にはまことに気の毒である。ヒマつぶしに、まきもの屋が何か書いたかなぁとBLOGをひらいてみたらいきなりフランス語の試験問題なんだもの。上で書いたようにちょっとしたシャレなんだけど、「ふざけるなっ!」と言いたくなるかもしれない。でも、まきもの屋って風変りな農家のBLOGがそういうものであることは先刻ご承知のはず。そんなわけでご一笑に付していただきたい。

さて、好事家なる読者諸賢のなかでもきわめて好事家な方はすでにお気づきのように、買っちゃったのである。カレームの5巻本。もちろんリプリントのペーパーバック。届いたばかりで、まだ30ページくらいしか読んでいないが、これが滅法面白い。

マリ=アントナン・カレーム(マリ=アントワーヌ・カレーム)。いうまでもなく19世紀のフランス料理の巨人であり、タレイランおかかえの料理人として「ウィーン会議」の舞台裏をささえたことで、さして料理に興味がなくてもフランス史を多少なりともかじっていたら知っている名前である。

その主著(ざんねんながら未完で、4、5巻は弟子が完成させたというが)、L'art de la cuisine française du XIXe siècle(19世紀フランス料理術)である。

フランス語じたいは、誤読しやすい部分や難読箇所もすこしはあるみたいだが、総じて読みやすいんじゃないかと思う。

誤解のないように申し添えておくが、これは趣味じゃなくて、まきもの屋の仕事の一部である。食材を提供する立場にあるからには、その対象となる食文化をできるかぎり知っていなければならない。そうじゃないと、常日頃さんざっぱら批判している「おもしろ野菜」「珍しい野菜」の域をぬけられないからである。まぁ、このはなしは何度か書いてきたし、長くなるから今日はこのへんで。

  • 注1) pastiche; 辞書だと「模倣」などという訳語になっているが、ここでは「パロディ」の一種とご理解いただきたい。アルコールのはなしではないので念のため。
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