Archive for May 2009

Swine !...

イノシシに畑を荒らされてしまった…。ただ侵入して歩きまわられるだけでも、マルチを破いたり野菜を踏みつぶしたりとかなりの被害なのに、こともあろうに生育途中のブレット(ビエトラ)とビーツを喰いあらしたのである。その数10や20じゃない。野菜がまだ小さいからたくさん食べたのだろうか…。まさか「ベビーリーフはうまいな」なんて…そうなのか?

イノシシは一般に、畑の野菜といえばジャガイモ、カボチャなどといった、糖質の多いものを食害するんで、葉物はそんなに好まないはず。葉茎菜についていえば、ウサギのほうがよっぽど悪辣なはずなんだが…。いや、数年前にはプンタをやられたし、去年のブレット(ビエトラ)の最後の分でどうも食害しているらしい形跡があるにはあった。でも、信じられないし信じたくないじゃない…。すくなくとも奴等はブレットもビーツもプンタも知らないはず、いまだかつて食べたことなんかないはずなのに…。だいたい、晩秋ならわかるが、今時分は食べるものなんかたくさんあるだろうに。

そういう意味じゃ、人間なんかよりもよっぽどグルメ(笑)である。ブレット(ビエトラ)を見て、「何コレ? セルリ?」なんてのたまう八百屋さんだっているらしいのに。そういえば、先日、茹でておいたビーツ(キオッジャ)を岡田松吉(飼い猫の名)に盗み喰いされた。この猫、チーメ・ディ・ラーパ、ジャガイモ、スイートコーン、枝豆、コールラビあたりを好むんだが、まさかビーツを食べるとは…。

タイトルの"swine"は英語で「ブタ野郎」の意。ふつうイノシシは"wild boar"という。フランス語では"sanglier"、イタリア語は"cinghiale"という。罵倒語のほうは、フランス語だと"cochon"(コション、「豚」のこと)。「豚肉」は"porc"(ポール、まちがっても「ポー」じゃないよ。どうも日本のフランス料理業界では"R"の音を恣意的に落す傾向があるのがむかしから嫌いだ)。

こんなつまらぬことを書いても気が晴れるわけじゃないので、急いで対策を講じなくてはならない。明日は防除もしなきゃなんないのに…。

ビーツ(キオッジャ)の塩竈焼き

アラン・パサールのスペシアリテとして有名だが、ビーツさえいいものであれば、誰でもおいしくつくれる。たぶん、いまのところ日本のレストランでは滅多にお目にかかれないはずである。意地悪な言いかたをすれば、これだけシンプルな「素材勝負」の料理を、店でだす度胸があるかということだろうか? 「焼きっぱなしの肉」で勝負? というのとおなじことである。

塩竈焼きとはいっても、卵白で塩をかためたりしない。ただ塩の山のなかにビーツを埋めて焼くだけである。この方法だと大量に塩をつかうことになる。というわけで、ちょうどビーツ(キオッジャ)を入れてちょっと隙間のあく大きさのスフレ型があったから、これに塩をしいてからビーツを入れ、隙間に塩をつめて焼く。180℃のオーヴンで、めやすはビーツ500gあたり1時間ということだ。まきもの屋のビーツ(キオッジャ)はせいぜいが200〜400gだから、ちょっと短めになる。

塩にローズマリーを混ぜこんだりもするようだが、ビーツ(キオッジャ)のばあいはあんまりクセがないから省略してもじゅうぶんにおいしい。上質のバルサミコをたらすといいらしいんだが、そんな高価なものはないので、これも省略である。

とってもおいしいが、最大の欠点は、これだけでかなりのボリュームになるということか。レストランで出すとするなら、お二人様お取り分けで、200gくらいのものなら適量だろうか。まわりにミニチャードかベビーのデトロイトなんか飾ってやるといいかもしれない。ただ、ちょっと時間がかかる料理だから、食事の流れを考えるとレストランの料理としてはやっぱりむずかしいかもしれない。1時間もかかると、せっかちなお客さんはデセールまでたどりついちゃうだろうから、前菜の位置づけだとどうにもならないかも。レストランの料理にならないのは、ほんとうのところこういう理由からだと思う。

ちなみに、例の年輪模様だが、こんな感じである。ただ、これはビーツ(キオッジャ)の個体差によるところもあるので、いつもおなじとはかぎらない。それと、今回は200gで40分の加熱だったが、中心のほうはやや歯応えがのこる仕上り。もっとやわらかくしたほうがおいしいと思う。

マルチカラード・チャードのレシピ?

マルチカラード・チャードはようするにブレット(ビエトラ)と本質的におんなじだから、とくにマルチカラード・チャードでなければというレシピはないように思う。もんだいはヴィヴィッドな色合いをどう活かしていくかということである。

あのジョエル・チエボー氏も好んで栽培なさっていることからもわかるように、近年はフランスのガストロノミーの世界でもこの色彩の魅力を皿のうえにとりいれているようだ。そう、フランス料理の世界ではどちらかというとガストロノミックな食材なのである。そういう見方をすると、「目で味わう」というレヴェルを要求する野菜といってもいい。

基本的にはブレット(ビエトラ)の品種ちがいなわけだから、調理法はおなじである。やわらかく下茹でしたものをバターやオリーヴオイルで炒めるのがもっともかんたんな方法だろう。あるいは、ゴルゴンゾーラと生クリームでグラタンにするのもおいしい。いずれにしても、きれいな皿にするには、葉と葉柄(軸)を下処理から別々にするのがいいだろう。このBLOGで紹介したブレット(ビエトラ)あるいはマルチカラード・チャードの料理をリストアップしておくと…

Le Ricette Regionali Italianeにでてくるビエトラをつかった料理名をぬきだしたんだが、この本を読むのは本職の料理人さんだけだろうから、釈迦に説法だろう。

ごく若どりのものならいいが、大株のものは、まちがっても生のまま刻んでサラダなんかにしてはいけない。葉柄(軸)がちょっとセルリみたいだからなんて連想はよろしくない。それだけはやめたほうがいい。ちゃんと調理しないとおいしくないはずである。逆に、ただしく調理すればとってもおいしい野菜である。センスがよければ見た目にもたのしいから、なかなか有望な素材だと思う。

ブレット(ビエトラ)のキッシュ

満を持しての登場(?)である。肉料理や魚料理のつけあわせとか、グラタンもいいんだが、フランス料理ならやっぱりこれはハズせないのである。パート・ブリゼは家人につくってもらった。苦手なんだもん…。さて、ブレットだけでもいいんだが、新タマネギの季節なのであわせてみた。今回はイエロースイートスパニッシュの抽苔株。まぁ、これはなくてもいいかもしれないんだが…。

ポイントは水っぽくならないように、葉は下茹でせず、そのまま刻んで炒め、下処理した葉柄(軸)もあわせて水気をじゅうぶんにとばしておくことだろうか。下茹でしたものをしっかりと絞ってもいいんだが、くずれちゃったらかなしいだろうし、かといって水っぽいのは絶対にNGなのである。

これだけでもけっこうおいしいと思うんだが、レストランの料理だったら、ラルドン・フュメ(=ベーコン)くらいは入れてもいいかもしれない。ちょっと旨味が過剰になるような気もしないじゃないが、そのくらいのほうがいいんだろうな…。

ベーコンといえば、モンティ・パイソンのあの有名な「スパム」のなかで、"bacon"を「バイコン」と連呼していたのが思いだされる。「スペインでは雨は平野に降る」が「スパイン」「ライン」「プライン」になるのとおんなじである。どういうわけか、クルーゾー警部が"monky"を「ミンキー」と発音していたのまで連想される。さらにどうでもいいか…。ちなみに Le Ricette Regionali Italiane では、南のほうの料理については"pomodori"じゃなくて"pomidori"になっている。イタリア語は地方色ゆたかだから、こういうのはめずらしくもなんともないが、ブリティッシュだとトポロジカルな言語の差異よりも社会階層的なもののほうがめだつのは、やっぱりそういう社会なんだろうと、いまさらながら考えてみる。

それはさておき、このレシピ、次回30日発送の「まきもの屋の自家用野菜セット」の付録にする予定です。オーダーお待ちしています(笑。

ビーツ(キオッジャ)の不遇?

お待たせいたしました。来週あたりから出荷スタートです。そんなわけで、ちょっと販促も兼ねて、あらためてこの野菜のご紹介、と思ったんだが、このところ「白まき」っぽい文章が多いから、たまには「黒まき」的な書きかたでもしてみようか。

ビーツじたい、日本ではあんまり普及していない野菜である。せいぜいがボルシチにつかうということが知られているくらいだろうか。もちろんビートレッドという食用色素の原料としていろんなところでつかわれているが、原材料表示をそんなにしっかりと読んでいるひとも多くはないかもしれない。まぁ、知っていたとしても、あの真っ赤なデトロイト・ダークレッドのイメージはかなりつよいだろう。

あれもいいビーツなんだが、いかんせんクセがつよい。日本人の好みにはなかなかあわないかもしれない。だからだろうか、ビーツのただしい下処理の方法も知らずに、「自分の好みではない」などと言い放つ輩が平然とフランス料理店を構えていたりする。ただしい調理方法を知らないんだから、ただしくビーツという野菜を評価できるわけないのである。ビーツなんてのはフランス料理じゃ基本食材でしょうに…。

もうひとつ、ある流通業者さんのサイトで、このキオッジャがなんと「カブ」として紹介されていたのに唖然とした。たしかにビーツはイタリア語で別名"rapa rossa"(ラーパ=カブ)である。が、いわゆるカブは学名"Brassica rapa"、アブラナ科であって、ビーツは学名"Beta vulgaris"アカザ科。まったくちがうものである。しかも、ご丁寧にキオッジャの切り口の写真まで掲載しているんだからまことに不思議である。切ったのなら、どうみてもカブじゃないことくらいわかるでしょうに…。輸入品らしいけど、カブとのちがいがわからないくらい鮮度が落ちていたということなのだろうか…。もちろん、八百屋さんがちゃんとしたイタリア語の知識をもっているとはかぎらないから、"rapa rossa"という名前に惑わされるというのもわからなくはないんだが…。見てるこっちが恥しくなっちゃう(1)

さて、ビーツ(キオッジャ)である。イタリア語でただしくいうと"barbabietola rossa di Chioggia"である。キオッジャというのはヴェネツィアのちかくの街の名。イタリアは地方野菜がおおいから、土地の名を冠した野菜もけっこうある。日本でも下仁田ネギとか天王寺カブとか亀戸ダイコンとかコマツナ(小松川が名称の由来)とかいろいろあるでしょ。それとおんなじ。で、キオッジャという地名はじつはいろんな野菜についていて、有名どころだと、このビーツのほかに、 "cicoria rossa di Chioggia"(いわゆるトレヴィスの一種)、"zucca marina di Chioggia"(カボチャ)なんかもある。

このビーツ(キオッジャ)の特徴は、デトロイト・ダークレッドあたりとくらべてクセがないこと。ビーツ=食べにくい、というイメージがあるなら、それはかんたんに覆せるはず。もうひとつは輪切りにしたときの白と赤の年輪模様か。もっともこちらは加熱するとボケちゃうんだが、どうもこの見た目のインパクトばかりが先行しやすいようである。

じつはここにビーツ(キオッジャ)がいまひとつ広く知られていない理由があるように思う。ようするに、生で食べるならごくうすーくスライスすることになるんだが、やっぱり見た目だけといっても過言ではない。きちんと加熱調理したほうが絶対においしいのである。ところが加熱調理すると見た目のインパクトがないからつまらない。それじゃあ売れませんがな。

だからだろうか、日本でも直売をやっている農家とか家庭菜園ではけっこうむかしから広く栽培されてきてはいるはずなんだが、青果としてはなかなか流通していなかったみたいである。とてもおいしいんだが、なかなか定着できない不遇の野菜かもしれない…。

  • 注1) そういえば、福岡蕾菜とプンタレッレを混同している業務用食材卸なんてとこもあった。福岡蕾菜はアブラナ科、プンタはチコリエだからキク科である。

チコリア・カタローニャのスパゲッティーニ

ひさしぶりの料理BLOG、本日のパスタランチ(笑)である。ちょっと若どりだが、チコリア・カタローニャを今日発送の「おまかせ西洋野菜セット」にお入れすることにしたので、そのまえに味見である。先日畑でそのままかじってみたから、いちおう「味見」はすんでいるともいえるんだが、やっぱり「料理」しておかないと。

かるくブランシールしたものを適当な大きさに切って、アンチョヴィ、冷凍サンマルツァーノのペーストとともにじっくり炒め煮にする(といっても、DeCeccoのNo.11を茹でるあいだくらい)。 ただそれだけだが、けっこうおいしい。チコリエとはいえそんなに極端に苦いわけじゃないのだが、生だとちょっと硬いかもしれない。これでもけっこうやわらかくなるように仕立てたし、その狙いどおりにはなっている。

この野菜、かんたんにいえばプンタレッレの花芽がでるまえのものである。日本ではどういうわけか、プンタレッレのほうが有名だが、プンタはラツィオ州とくにローマの地方野菜にすぎず、全国区としてはチコリア・カタローニャのほうが一般的である。とくに北イタリアでは「プンタレッレ? 何それ?」というかんじらしい。プンタは冬のあいだだけだが、こちらは周年栽培されているそうだ。厳密にいうと3種類くらいに分類されるが、メジャーなのは"frastagliata"とよばれるもの。もちろんまきもの屋のチコリア・カタローニャもこれである。

とてもベーシックで、しかもおいしい野菜なので、ブレット(ビエトラ)とともに、ぜひとも料理人諸氏におためしいただきたいもののひとつである。ごく少量だが来週かそのつぎには築地市場へも出荷する予定なので、よろしくお願いします。

Le Ricette Regionali Italiane から biete =ブレット(ビエトラ)をつかった料理をリストアップしてみる(後編)

前回、本のおおむね半分のところでリストの作成を挫折したわけだが、後半は案外少なかった。南でもけっこう食べるようなイメージがあったんだけど…、記憶ちがいか…?

  • Biete al pomodoro (Lazio) No.1384
  • Virtù (Abruzzo et Molise) No.1481
  • Calzone di verdura (Basilicata) No.1801

Biete, coste, erbette, cardonetti...ほかにもこの野菜の別名はあったと思うから、見落としもけっこうあるかもしれないが、とりあえずこんなところかな。

Le Ricette Regionali Italiane から biete =ブレット(ビエトラ)をつかった料理をリストアップしてみる(前編)

  • Torta verde di riso (Val d'Aosta) No.64
  • Torta di acciughe (Liguria) No.199
  • Torta di biete alla genovese (Liguria) No.200
  • Mitili ripieni alla spezzina (Liguria) No.266
  • Seppie in zimino (Liguria) No.270
  • Frittata di biete (Liguria) No.285
  • Casônsèi (Lombardia) No.371
  • Strangolapreti (Trentino) No.555
  • Cassoni fritti (Emilia Romagna) No.857
  • Erbazzone fritto (Emilia Romagna) No.860
  • Scarpazzon o Erbazzone all'emiliana (Emilia Romagna) No.864
  • Tortelli ripieni con biete (Emilia Romagna) No.933
  • Tortelli sulla lastra (Emilia Romagna) No.934
  • Cacciucco di ceci alla toscana (Toscana) No.1099
  • Minestrone alla livornese (Toscana) No.1108
  • Totani all'inzimino (Toscana) No.1142

"Biete"だけじゃなくて、"erbette"だの"coste"だの、地方名が多いんだもの…けっこう疲れますな…。ヴェネト州なんかは料理名もモロに方言だし…。

チポロット(ロッソ)のソテーとブレット(ビエトラ)のバター風味、バヴェットステーキ

盛りつけがマンネリ化しているという家人の批判なんかどこ吹く風(料理は素人なんだからいいじゃないか…)、本日唐突に初出荷となったチポロット(ロッソ)である。「完熟」じゃなくて若どりだから、赤は表面だけ。一枚むくとなんとも中途半端というか微妙な色合いである。が、それがかえっていい感じのように思うのだがいかがだろうか。味はチポロット(ビアンコ)(=白)とくらべるとややソリッドというかタイトな印象。調理の仕方によっては、やさしい味わいのビアンコとうまくコントラストがつけられていいんじゃないだろうか。はっきりいって自信作である。

ちなみに、赤い葉つきの小タマネギを「チポロット」といっているのは、まきもの屋の独自の商品名である。イタリアにもトロペーアにしろフィレンツェにしろ、似たようなものはたくさんあって、このチポロット(ロッソ)もイタリア系の品種をつかっているが、"cipollotto"とはあんまり言わないと思う。大きかろうと小さかろうと、"cipolla"、タマネギはタマネギなのだ。

もうひとつはブレット(ビエトラ)のためしどり。なんの工夫もなく、くたくたになるまで下茹でしたものをバターで炒めただけ。これがけっこうおいしいのである。バターをケチっちゃいけないのがポイント。

さて、つけあわせはバヴェットである。正確にいうとオーストのフラップミート。どうでもいいんだが、まえから、いまひとつストンと腑におちなかったことのひとつに「バヴェット」=「ハラミ」説がある。よくそういうふうに説明されているんだけど、フランス語だと"bavette"="onglet"(ハラミ)ではないのである。日本語の「ハラミ」の定義をまきもの屋がよくわかっていないから、よけいに混乱するのかもしれないが、「インサイドスカート」とか「アウトサイドスカート」あたりを「バヴェット」といわれるとやっぱり違和感がある。これらはあくまでも"onglet"であって、"bavette"ではないはず。

フランス語の"bavette"は、厳密には3種類あるそうで、"bavette d'aloyeau"、"bavette de flanchet"それから"bavette de pot-au-feu"というらしい。もちろん部位がちがうわけだが、ビストロ料理で有名というか定番の"bavette à l'echalote"でつかわれているのは"bavette d'aloyeau"である。日本語では「カイノミ」、英語だと"flap meat"である。

やっかいなのは、学食とかカフェなんかで"steak frites"(ステーク・フリット=ステーキのフライドポテト添え)でよくでてくるやつが"onglet"ということ。みためが似ているから、これを「バヴェット」だと思いこんでいた時期がまきもの屋もけっこう長かった。でもちがうんですよね。食べるとわかるけど…。

ステーキというと、日本では「フィレ」("filet"、シャトーブリアンとかフィレ・ミニョン)と「サーロイン」(フランス語だと"faux-filet")あたりが定番みたいだが、やっぱり"entrecôte"(アントルコット=リブロース)である。これはつけあわせがたとえフライドポテトであっても、"steak frites"とはいわないと思う。たいていは"entrecôte grillé"という。

参考:
オーストラリア産食肉ハンドブック
boeuf-charolais.com

ビーツ(キオッジャ)のチップスと鴨のコンフィ

ナルトじゃございません(笑。ビーツ(キオッジャ)の年輪模様をいかす加熱調理の禁じ手、チップスである。きれいに揚げるのはとんでもなくむずかしい。すくなくともまきもの屋のごとき料理の素人には難易度が高い。温度設定が正確にできるフライヤーならいいんだろうけれど、北京鍋に油をはって揚げているんじゃおはなしにならない。

で、味は、たしかにおいしいんだが、家人曰く「おさつチップス」みたいである。ようするに「お菓子」味なのだ。畑に肥料をやってマルチを張り、種をまいて間引きをしたまきもの屋の仕事が、こんな「お菓子」になっちゃうなんて…(笑。

しかも、水分が多いから油で揚げると縮むこと縮むこと…、もとの2割くらいになってしまう。だから料理人諸氏にはあまりおすすめしたくないのである。もっとも、気のきいたバーで「おつまみ」に出てきたらちょっといいかもしれない。あるいは、レストランの料理でも、「デクリネゾン」のひとつとして、ほかにちゃんと調理したビーツ(キオッジャ)と いっしょに皿のうえに載っているなら、それはそれでおもしろいだろう。

さて、「つけあわせ」はまたしても鴨のコンフィ。まとめて仕込んで冷凍してあるから、家人とふたりして夕飯つくりを押しつけあうような農繁期には便利なのである。もともとがフランスの農家の保存食なんだから、西洋野菜農家の家庭料理としてはそんなにミスマッチでもないと思うのだが…。それにしても、外食でものすごくおいしいのに出会ったことがないのは正直なところだ。あんまりにも素朴な料理だから、そんなものなんだろうか…。

poireau baguette

調製した全長40cm、fût (葉鞘部=軸)30〜35cm、白み約20cm。もはやこうなると、mini poireau というよりは、フランスでいうpoireau baguette (ポワロー・バゲット)にちかい。Baguette (バゲット)は「細い棒」のこと。いわゆる「フランスパン」も棒みたいだからbaguette (「バケット」じゃございません)、お箸もbaguettes (こちらはかならず複数形、2本でつかうから)。

市場出荷にしても、産直のセットにしても、「ミニ・ポワロー」の名称のままである。「ポワロー・バゲット」なんていわれたって困るでしょう? 日本でいったいどれだけのひとがこの名称を知っているというのか…。「ミニ」はだれでもわかる言葉だが、「バゲット」となると、上で解説したくらいである。なにしろ、どうみても「バタール」なパンのことを「バット」といってはばからないパン屋さんとかレストランさんも少なからずあるのだ。

本来は、5〜6月にかけてポワローの端境期なわけで、そこを狙ってつくるのがこの「ポワロー・バゲット」なんだが、時期からいって、どうしても抽苔(花芽=葱坊主がでること)のタイミングとなる。多少の抽苔は許容されるらしいんだが、それでもいいからポワローを食べたいわけで、人間というのはなんとも欲深いものである。

この時期のポワローの特徴は、太さよりも長さがでやすいこと。だから「細い棒」なのである。太いポワローはやっぱり冬の野菜である。日本に輸入されているリーキも、いまの時期はもう南半球モノである。いや、国内でも周年供給は理論上は可能なはずなんだが、そこまでするほどのものでもないだろう。なにしろ、輸入モノは「日本向特選」なんだから…。このあたりは「ベルギーエシャ」とおなじような事情である。

ビーツ(キオッジャ)のサラダ、アンチョヴィ風味のヴィネグレットで

今日は家人作。家人いわく「バカボンサラダ」らしい。ご覧のとおりとしか申しあげようがないんで、これにて終了? では、いかにもつまらない。このサイトでも再三申しあげてきたが、ビーツ(キオッジャ)の真価は加熱したときの味にある。生のままスライスするとたいそうインパクトのある野菜だから、そういう使いかたをされる傾向はたしかにあるみたいだが、どうせなら、「見る」ことと「味わう」ことを両立させていただきたいものである。

ビーツ(キオッジャ)の模様をなるべくのこすような加熱処理については、こちらをご参照いただきたいが、なーんにも考えずにふつうにビーツの下処理をすれば、それはそれはきれいなオレンジっぽいピンク(発色のぐあいは個体によってやや異なるが…)になるんだから、なにもあの年輪模様なんかなくたっていいじゃないかという気にもなる。

そうはいっても、生でもアクもすくないし、新鮮なものは甘くておいしいから(1)、スライスじたいを否定するわけじゃない(2)。ただ、そればっかり一辺倒じゃ、なんともこの野菜がかわいそうなのである。

デトロイト系の赤いビーツしかご存知なければ、キオッジャの味は生でも加熱したものでも、「これがビーツ?」というようなものかもしれない。ただ、新しい野菜なんかじゃなくて、伝統品種なんですよね…。たんに日本で流通していなかっただけ。そんなにさわぐほどのもんじゃない。

というわけで、まもなく出荷スタートとなるわけだが、まずはミニビーツのかたちではじめさせていただく。フルサイズは月末になっちゃうかな…。どちらも産直のほうで先行販売する予定なので、レストラン様むけ「おまかせ西洋野菜セット」個人様むけ「まきもの屋の自家用野菜セット」、よろしかったらどうぞ。

  • 注1) 甘みという点では、やっぱり秋どりがいい。初夏どりはどっちかというとサワヤカな味である。
  • 注2) スライスしたものを油で揚げてチップスにするというテもある。年輪模様もはっきりだせるし美味。ただし、上手に揚げるのはけっこうむずかしい。

リチェッタを読む

枕頭の書となっているRicette Regionali Italianiである。そう、ちゃんと暇をみて勉強しているんです(笑。枕頭の書とはいっても、けっこう知らない語があるから、雰囲気で読んでいるだけだったりするのだが、やっぱりちゃんと辞書をひかないとわからないことしばしばなのはもちろんである。

で、まきもの屋は職業柄わかるんだが、No.555, STRANGOLAPRETIというミネストラ。材料に"coste (solo la parte verde)"とある。訳すと「コステ(緑のところだけ)」となる。ふつうイタリア語で"costa"というと「肋骨」とか「沿岸」である。フランス語だと"côte"。「コートダジュール」の「コート」である。

それはともかく、「緑のところだけ」とあるくらいだから野菜のことだ。まきもの屋が何の野菜だかすぐにわからないというのは問題があるが、料理人諸氏はべつとして、日本の一般読者にはつらいかもしれない(いや、こんな本、プロしか読まないか…)。ちゃんと辞書にでているのか気になって調べてみたら、小学館の伊和辞典では、該当しそうなのは「(葉の)主脈」しかでていない。 Garzanti だと"nervatura centrale di una foglia [...] per antonomasia, le bietole"とでてくる。前半は小学館の辞書とおなじ説明で、後半、「とりわけ、ビエトラのことをいう」とある。そう、 Garzanti くらい引かないと辞書というか書物のレヴェルだとわからないのである。

ビエトラは葉柄(軸)の幅が広くて白いものがポピュラーである。そこから"costa"という別称もでてきたわけである。この野菜のメインはなんといってもこの葉柄(軸)なんである。ところがこのリチェッタでは「緑のところだけ」つまり葉だけをつかうことになっている。つまり、"costa"="bietola"といっても、言葉それじたいのもとの意味である"costa"(葉柄というか葉の主脈)はつかわないのである。こういう錯綜というのはたまらなくたのしい。

ところで、今年はちょっとした事情でマルチカラード・チャードが先行して出荷スタートとなったわけだが、葉柄が白く幅広の"bietola verde a costa larga argentata"つまり「ブレット(ビエトラ)」ももうしばらくしたら出荷できそうである。出荷期間は5月下旬から11月中旬までの予定(途中で失敗しなければ…)。とってもおいしい野菜なので、どうかご期待ください。

チポロットとは

考えてみたら、チポロットという商品名についての解説をしていなかった。写真でおわかりのとおり、ようするに葉つきの小タマネギである。オニオン・ヌーボーと何がちがうの? ときかれると、品種と時期、栽培方法がちがうとしかおこたえしようがないかもしれない。なにしろ、オニオン・ヌーボーを心して食べたことがないから。それに、「比較広告」みたいなことは、よっぽどのことがないかぎり、あんまりしないほうがいいだろうから、このへんは不問に付していただけるとありがたい。

どちらかというと複数形の「チポロッティ」cipollotti といういいかたのほうが日本では一般的かもしれない。単数形か複数形かだけのことだから、たいした問題ではない。ちょっとむずかしいのは、イタリア語でいう cipollotto は、九条ネギみたいに根元がまっすぐのものと、ノチェーラ産チポロット cipollotto nocerino DOP に代表される、ミニミニのタマネギと両方あること。

Cipollina novella という言いかたもあるが、これはどちらかというと「新タマネギ」の語感にちかいみたいである。USでは mini onions とか、cipollini onions なんて言いかたをしているみたいだ。ちなみに、シブレットはイタリア語でerba cipollina という。ようするに、葉が円筒形のネギの類を cipolla といっているわけで、根元が玉になっているかどうかはたいしたもんだいではないのである。

フランス語だと、チポロットに相当するいいかたは知らない。大きかろうと小さかろうと、白タマネギは oignon blanc、赤タマネギは oignon rouge である。じつはイタリア語でも似たようなところがあって、ノチェーラ産チポロットなんかも商品名にすぎないから、一般的ないいかたとしては、チポッラ cipolla で大きいものも小さいものもいっしょくたに表現する。

そんなわけで、まきもの屋のチポロットも本質的にはタマネギである。ただ、じぶんで食べてみて、もしかしたらタマネギの概念をひっくりかえすくらいおいしいのにびっくりしている。手前味噌ならぬ「手前チポ」であるが、お値段もミニ・ポワローよりはおもとめやすいものでしょうから(1)、ぜひ一度おためしください。

  • 注1) 市場出荷だと価格の決定権は生産者にはないんですよ。いちおう「希望価格」は荷受につたえてはいるんですが、なかなか思うようにいかないのが現実で…。

チポロットと仔羊肩肉の煮込み、クスクス

とはいっても、チポロットはさいしょから煮込んだんじゃ煮溶けちゃうから、さいごにかるく煮込むだけ。でもそれじゃあスープに味がでないから、玉の大きいやつを刻んで炒めたものをベースにしている。ほかに野菜は冷凍のトマトペーストだけ。ブロードはおろか固形スープの素なんてもちろんつかっていないのだが、これだけでウマウマである。あとは香りづけにハウスで摘んできたタイムを少々。もっとも、食べるときにアリサをつけちゃうからあんまり意味はないかも。

それにしても、栽培している本人が言うのもナンだが、チポロット旨すぎである。ふつうはこんなあまりにもシンプルな仕立てだと、味に奥行がなくなってしまうものだが、そんなこたぁございません。はっきりいって、おひとりさま5本なんて多すぎます。ましてや、レストランの料理だったら、ブロードをつかったり、ほかの野菜も入れたりなんてことをするわけで、それだったら1本で充分でしょう。

ところで、チポロットの味なんだが、甘いことはもちろん甘い。そうとうに甘いといっていいはず。香りはとってもマイルド。ちょっと不思議なのはけっこう旨味があること。若どりだと味もうすいようなイメージがあるが、未熟なときのほうが舌に感じるアミノ酸は多いみたいだ。完熟すると炭水化物とくに糖分が比率としては多くなってくるはず。

ちなみに、まきもの屋のチポロットはまだ出はじめなので、ごく少量の出荷である。今日も1ケースしか出荷できなかった(1ケースで200本も入っちゃうんだから…)。そんなわけで、いまのところは築地でもあんまりご覧いただく機会はないかも…。なにしろ市場の担当氏でさえ現物を見ないうちにお客さんが持っていってしまったというハナシである。あ、もちろん産直のセットにはお入れできますんで、そちらもどうぞよろしくお願いします。

産直の商品構成を整理してみる

正直いって営業方針というか、マーケティング面で揺らいでいる。「迷走」しているといっていいかもしれない。これまで産直の「おまかせ西洋野菜セット」はレストランさん限定にさせていただいてきた。が、お問いあわせ、ご要望を多数いただいているため、個人の方からの オーダーにもお応えすべきと考えるに至ったわけである。

レストランさんむけの「おまかせ西洋野菜セット」は定期便を前提としているんだが、これだとおなじ野菜がなにかしら毎週入る。一般家庭だと、いくらなんでも飽きてしまうはず。量の問題は、株どりのものをのぞけば、調節は可能だから、たいしたことではない。あとは、単発でオーダーいただける体制をこちらが整えさえすればいい。が、じつはこれがいちばんむずかしいのである。

なにしろ商品となる野菜を必要量確保しておかなければならない。で、オーダーがはいらなかったらもちろんその分はロスになってしまう。ロスということは、畑で野菜がダメになってしまうということである。生産者としてはこれがいちばんつらい。それでも、週5ケース限定ならばなんとかなるかな…、とにかくやってみよう、というわけである。

で、まきもの屋の産直の商品構成としては

レストラン様むけ「おまかせ西洋野菜セット」

  • 毎週火曜発送
  • 定期便のみ、シーズン(5月〜1月)単位でのお取引
  • レストランさん限定商品

個人様むけ「まきもの屋の自家用野菜セット」

  • 週5セット限定
  • 毎週土曜発送
  • 単発オーダーOK (もちろん毎週の定期便にもできます)
  • どなたでもオーダーいただけます(レストランさん、料理教室さんetc.ももちろんOK)
  • 決済は宅配便の代引きを利用(現在準備中)
  • 基本的に4人家族むけ程度の分量で、折々には自家用に栽培している和モノ野菜も入る
  • 日本であまりなじみのない野菜については、野菜解説とレシピもご提供

このふたつのセットは、オーダーシステムや野菜の量ももちろんちがうが、なにより「情報」の質と量がちがう。プロの料理人さんにたいしては、明らかに専門外の野菜以外は原則としてなんにもご説明なしで済まさせていただいている。もちろんご質問いただけば詳細にご説明申しあげているが…。これにたいして、個人様むけ「まきもの屋の自家用野菜セット」のほうは、野菜解説とレシピをおつけすることを前提にしている。ひょっとしたら野菜そのものよりもこっちのほうが商品価値があるんじゃないか(笑。

ところで、産直の発送日が週2回あるんなら、どっちでもいいじゃないか、というご意見もあろうが、おなじ野菜をお入れするとはいっても、性格のちがう商品を混在してご用意することはできないのである。効率はわるいし、なにより間違いのもとになる。こればっかりはご勘弁いただきたい。

こんな季節に「ゼンマル」のベルト交換、その他の補修

野菜の蘊蓄でもなければ、料理ブログでもない。写真を撮る余裕もなかったから文章だけ、しかも夏秋レタス農家でないかぎりたぶんおわかりいただけないはなしである。どうかご容赦の程。

ふつう機械の整備というのは農閑期つまり冬のうちにやっておくものなのだが、「全面マルチ」(通称ゼンマル)は補修部品がやたらと高価なので、まだ使える状態で交換するのはさすがに気がとがめてしまうのである。だから、事前に交換すべき部品は入手しておいて、ぎりぎりまで使う。ほぼ限界というところで、農繁期に交換というムチャなことに相成る。。

だいたい、どうしても必要なものだから、見積なしで注文する。あとで請求書をみて
( ゚д゚) という状態になる。というか、請求書がくるまで
((((;゚Д゚))))ガクブルである。なにしろ、今回の整備にかかった部品代だけで、このオンボロを手にいれたときの本体価格を越えているのだ。

まきもの屋がつかっている「全面マルチ」は初期型を中古で安く手にいれたものなので、いま手にはいる部品がかならずしもピッタリというわけではない。で、部品を交換するたびに、うまく取り付けられるように加工する。だから、整備しているんだか改造しているんだかわからない状態になってしまう。

しかもこの機械、とんでもなく整備性がわるい。コンベア・ベルトを交換するには、コンベアのユニットをフレームに止めてあるボルトをはずして、上に引っ張りあげるようにして取りださなくてはならない。コンベアはかなり重いので、ひとりだとそのまま取りはずすのは難儀である。で、最後部の土かけユニットを先に外しておく。これだって相当にたいへんなんだが、それでも、どうにかひとりでコンベアをはずせるようになる。たぶん整備工場で上から吊して取り外す前提でつくってあるんだろうな…。コンベア・ベルトなんて消耗品なのに…。

今回はコンベア・ベルトの交換のほかに、コンベアの先端部のスクレイパーと樹脂板の交換やカバーの補修をした。樹脂板の交換ははじめてだから、穴があわないので、仕方なくコンベア・ユニットにドリルで穴をあける。ほかにもけっこう加工した。

あとはロータリーのツメとマルチ押えのスポンジの交換がのこっているが、これは部品がとどくのが連休明けになってしまうから、とりあえず終了。グリースアップと注油してから、試運転を兼ねてマルチ張りをする。なかなか快調である。が、とんでもなく疲れた。明日は連休中の臨時開市のための出荷である。売れるんかな…?