Archive for October 2009

王様の耳はロバの耳

やっぱり、書きだしたら止まらないんでしょうね。地面に穴を掘って「王様の耳はロバの耳」と怒鳴っているようなものかもしれません。でも、ネットは公器みたいなもんですから、とっても書きたいネタがあるんですが書けない。おもしろすぎるネタなんだけど、残念ながらこれをわかってくれるのは周囲に家人くらいしかいない。かといってネットで公に書けることでもないんです。こういうネタを考えること自体に「性格の悪さ」がでているなぁと、ちょっと凹んでみたりもします。

しょうがないから話をずらして、ロバといえばなぜかアプレイウスの『黄金のロバ』を思いだします。『変容』Metamorphoses の題でも知られているが、日本では『黄金のロバ』のほうがなじみがあるかもしれません。原題はAsinus aureus、ちなみにフランス語だと、l'Âne d'or。

ロバがらみで、19世紀前半のフランスの作家ジュール・ジャナンのL'Âne mort et la femme guillotinée『死んだロバとギロチンにかけられた女』なる小説の題名もついでに思いだします。なんとも悪趣味なタイトルですな。いうまでもなく『黄金のロバ』をもじったタイトルです。内容は、読んだんだけど、さっぱり記憶にのこっていない。読みかえす気にもならないんだけど、ジャナンの文章はかつて必要があってけっこう読んだなぁ。

で、どれもこれもつまらんのには閉口したもんです。この時代の「小ロマン派」などと呼ばれる作家のなかでは、ペトリュス・ボレルのほうがよっぽどおもしろかった。ボレルはもの書きとしては名をなすことができず(当然ながら生活にも困ったんでしたっけね)、アルジェリアに開拓民として渡り、後半生は農民として過したそうです。最期はいまでいう熱中症で、畑で倒れたというはなしです。「オマエは俺か?」というような経歴ですな。熱中症にならないようにせいぜい気をつけなくては。

フィードバックはほしいけど

ご無沙汰いたしております。書類仕事に追われておりました。意外でしょう? 農家の仕事って農作業だけじゃないんですよ。栽培記録はもちろんのこと、経営者なんですから、帳簿もつけなきゃなんないし、経営分析、マーケティング、商品開発、資金の調達、なんでも やるんです。

それはさておき、生産者としては、他産地や輸入の動向、調理業界のトレンド、流行の業態などなどについての「情報」はもちろん、料理人さん、八百屋さん、レストランでお召しあがりいただくお客様のナマの声、ようするに「フィードバック」というのは喉から手がでるくらい欲しいんです。

ボケーっとしていたらまったく状況がわからないまま、手前勝手に野菜をつくって市場に送るのを繰りかえすことになりますが、それじゃ商売としてはうまくありません。情報、お客様のリアクションをもとに「戦略的」にやっていったほうがいいにきまってるんです。

ただ、みなさんおっしゃることが違うんですよ。たとえばビーツの大きさ。500g超がいいという八百屋さんもいらっしゃれば、300g程度がいい、あるいは200g以下がいいとか、みなさんいろいろです。まことに申しわけないことに、ごく小規模でやっておりますので、そんなにいろんなサイズを取り揃えさせていただくことはできないんですよ。

ミニ・ポワローもそうですね。このところ複数のお客様から、まきもの屋が通常出荷させていただいているサイズよりもかなり細いものをリクエストいただきました。うーん、その太さじゃ、ごく浅い火入れしかできませんね。まぁ、それはいいんですが、ようするに料理人さんがそのくらい細いのに慣れていらっしゃるということなんでしょうかね。

ご要望はしかと承りますが、ただね、せっかくブレット(ビエトラ)がおいしい時期になってきたのに、ちっとも売れないとか、ビーツ(キオッジャ)を生食でお使いになられる料理人さんが多いというはなしと表裏一体のような気がするんです。その調理法は正しいですか? 素材とむきあってくださっていますか?

じつは、チーメ・ディ・ラーパもちょっと心配なんです。これについてはフィードバックがまったくといっていいほどないんでわかりませんが、まさか、さっと茹でただけ、なんて使いかたをみなさんなさっているんじゃ…。あれは、花蕾がバラバラになるくらいまで加熱するのがいいんです。茎に歯応えなんか残っちゃいけません。それじゃせっかくの持ち味がまったく生きないんですよ。それくらいだったら、スティックブロッコリの類をお使いになられたほうがよっぽどコストパフォーマンスがいいでしょう。

商売ですから、お客様のニーズにきちんとお応えするのがいちばん大切です。ただ、そのニーズが正しい理解にもとづくものなのか、けっこう大事な問題だと思っております。ヨーロッパの食文化についての不正確な知識、理解にもとづくニーズにすべてお応えしていたら、いまどきの一般野菜とおんなじ道をたどることになると思っています。

これって、たとえばビストロとかトラットリアでお客さんがパンにつけるバターやオリーブオイルを要求したり、当然の権利のごとくシェアなさったり、はてはイタリア料理店のディナーでパスタだけ注文するとか、そういうのと似てません? お客様の要求=ニーズにどこまでお応えするか、経営者それぞれの判断だと思います。

飲食店さんはお客様のニーズ、反応がダイレクトにわかるはずですが、まきもの屋のような市場に出荷している農家はほとんど目隠し状態なんです。散発的な要求だけ。そこがいちばんの違いですね。

だからこそ、情報、フィードバックが欲しいんです。そうすればこちらからもいろいろ情報発信、ご提案ができますから。

ところで、八百屋さんがこちらに直接コンタクトをおとりくださるときというのは、いろいろとフィードバックいただけてとてもありがたいんですが、そういうのって、ある商品がマーケットで払底しているときだけなんですよね。で、ついでにフィードバックをいただける、と。そりゃそうですよね、欲しいものがあるから連絡くださるわけです。ただ、流通業者様には、築地市場を通していただくようお願いしておりまして、まきもの屋に直接オーダーしてくださっても、正直いってとっても困るんです。八百屋さん→(仲卸さん→)市場のセリ人→まきもの屋の経路でオーダーいただかないと具合がわるいんです

まきもの屋は市場出荷については、市場の担当さんに販売の一切をお願いしています。逆にいうと、どなた様に何をどれだけお売りするかということはまったくタッチしておりません。だから、八百屋さんから「○○が欲しいんだけど」と直接おっしゃられても、当惑するだけなんです。性格的なこともあって、おことわりできないのが辛いところなんです。

だってそうですよね。まきもの屋に直接連絡をとればどんなに「もがき」のときでも手にはいるとなったら、卸も仲卸も存在意義がないでしょう? セリ人さんや仲卸さんの立場だいなし、じゃないでしょうか。ある仲卸さんがおっしゃっていましたが、「そんなことをしちゃ流通をこわしちゃう」んじゃないでしょうか?

八百屋さんからの情報は欲しいです。というか、必要なんです。でも、オーダーは相応のルートできちんとお願いします。っていうか、筋は通してください。どなたかにご迷惑をおかけするわけにはいかんのです。

そりゃ、どんなときでも、どんな商品でも買い支えてくださるというのであればハナシはまったく別かもしれませんが…。ムシのいいはなしかもしれませんが、どうぞよろしくご理解の程。

チーメ・ディ・ラーパにかんする断章

チーメ・ディ・ラーパは誰が何と言おうと「冬野菜」なんです。本来的にはプーリアの地方野菜ということになっていますが、まぁ、南イタリアの「冬野菜」ですな。倉渕は冬が南イタリアとくらべると絶望的に寒いからフツーに栽培すると晩秋が旬ということになります。

むかーし、ナポリに一度だけ行ったことがあります。1月でした。昼間はコートなしでいいくらい、というか、コートを着ていたら暑いくらいだった記憶があります。おとなりのプーリアには行きませんでしたが、冬のおだやかさは似たようなものなんでしょうかね。

そういうおだやかな冬というか、「ずーっと秋みたいな冬」の野菜なわけですね。ずっと北、ヴェネトのラディッキオなんかはもっと寒くないとおいしくならないんで、おなじ「冬野菜」とはいってもずいぶん性格がちがいます。どっちにしたって倉渕の冬からしたら、そりゃもう暖いもんですけど。

何をどうしたわけか、たぶん「花芽」を食べる(というかほんとは茎と葉も食べるんですが)野菜だからでしょうか、日本では春先のイメージがついちゃったみたいですけど、この野菜、気温上昇期は収穫適期がとんでもなく短かいから大変なんですよ。

いわゆる「スティックブロッコリ」とどこがちがうの? という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。スティックブロッコリは中国野菜の「介藍」(カイラン)とブロッコリの交配でつくられたものだそうです。「菜心」(サイシン)とブロッコリの交配種もあるみたいです。どちらも日本で開発されたものですね。

チーメ・ディ・ラーパはおなじアブラナ科ですが「カブ」の仲間です。でも根の肥大はありません。ちょうど、日本の「野沢菜」がもともとは「カブ」だったのと似ていますね。ちなみに、秋冬どりのカブも春まで畑においておくと抽苔して「菜の花」になります。蕾はもちろん食べられます。けっこうおいしいですよ。

植物としての分類よりも、決定的なちがいは「風味」なんですが、これは新鮮なものを適切に調理していただかないとおわかりいただけないんじゃないかとは思います。

これだけ「スティックブロッコリ」が一般化しちゃっていますと、チーメ・ディ・ラーパの出番はそうそうないかも知れませんね。イメージ的に、南イタリアの料理は夏場、冬は北イタリア料理のほうがウケもよさそうですから、南イタリアの冬野菜ってかなりニッチな需要しかないんじゃないでしょうかね。

とはいえ、ご好評いただいておりまして、まことに有り難いかぎりです。秋雨が長引いたうえに台風がきてやや株数は減りましたが、予想よりダメージもなく、11月末まで築地にも少量ですが出荷させていただくことができそうですのでどうぞよろしくお願いいたします。

野生鳥獣

ひさしぶりに雑誌ネタである。晩秋だからジビエ特集。こういう内容の特集ってほとんど1年がかりで製作するんだろうから、それだけでもすごいと素直に感心する。フランス語の校正がもうちょっと綿密だと完璧な雑誌だと思う。これはもちろん非難でも中傷でもない。料理名のフランス語の綴りに「組版ミス」と思われるものがいくつか残っているのを、事実として、指摘しているだけである。気まぐれに重箱の隅を楊枝でつついているようなものかもしれないが、フランス語を勉強途中の未来のシェフのみなさんがまちがった綴りを覚えちゃ具合がわるいでしょう? だから、もし関係各位がお読みになっても生暖くスルーしてくださると期待したい。

著名料理人諸氏の作品の写真をながめていると、全体に茶色い。あたりまえである。肉料理なんだから。野菜の出る幕なんてあるわけがない。野菜生産者としてはちょっと寂しい気もしないではないが、ジビエというのはフランス、イタリア料理の王道、肉をわしわし喰らうのが本質なんだから、野菜は分をわきまえて裏方に徹すればいいのである。

それはともかく、日本全国、ちょっと田舎に行けばどこでもそうだが、倉渕も例に漏れず野生動物の王国である。イノシシ、キツネ、タヌキ、キジ、山ウズラ、クマ、ウサギ…それにサル。シカ、カモシカはいるにはいるが個体数は少ないみたいである。シカ、カモシカは山をひとつふたつ越えた軽井沢、北軽井沢あたりだとたくさんいるらしい。

こいつらの多くは畑を荒らす。文字どおり喰い荒らすのである。カボチャも実とりインゲンもイノシシに全滅させられた。イノシシはビーツの若葉も食べるし、もうちょっと寒くなるとブレット(ビエトラ)も食べまくる。けっこうなグルマンである。マーシュをウサギに食べつくされたこともある。こういう被害は、ようするにこちらがきちんとした対策を講じていなかったせいも大きいから、怒ってもしょうがない。ただ、とにかくたくさんいるのである。このあたりでは、絶対に人間よりもヤツらのほうが数が多いと思う。

桃太郎じゃないけど、サルとかキジなんてものは人里と深山のあいだくらいにいるはずのものなんだが、キジなんてのはそいらじゅうにいる。軽トラックを走らせていると、のんびり道を横切っていたりする。轢いちゃうんじゃないかと一瞬アセるがけっこう素早いもので、いつもピューと走り去る。

サルはほんとうにおそろしい。なにしろ素手でケンカしたら絶対に勝てっこない相手なのである。いまのところは爆竹を鳴らせば逃げてくれるからいいんだけど。って言うか、大きなイノシシを至近距離で見るとかなり怖い。

料理のハナシから離れてしまった。いずれにしても野生動物というのは人間とは利害が相反しているわけで、人間からすれば「有害鳥獣」であることが多い。だから「駆除」したりということもあるんだが、そのいっぽうで、ジビエは「ごちそう」だったりするわけである。

イノシシ、ウサギ、シカなどは、冬の猟期にせっせと獲ってもらったほうが野菜農家としてはありがたいんだが、まことに残念なことに、狩猟をする人は減っているらしい。もっと残念なのは、こういう野生動物が「ジビエ」として需要があるにもかかわらず、仕留めた獲物を実需者に提供するネットワークも仕組みもないことである。だいたいは地元で消費されているみたいである。

もっとも、需要じたいがかなりニッチなものであることをよく認識していないとビジネスにはならない。それに、解体等の技術的なところがしっかりしていないと、使ってもらえないだろうから、クリアすべき壁はけっこう高いと思う。もっとも、狩猟免許を持たないまきもの屋としては、畑に被害がなければそれでいいのである。ようするに他人事にちかいんだが、鉄砲打ちの知りあいもいないわけじゃないので、もし興味のおありの料理人さんがいらっしゃるなら、ご紹介申しあげるくらいのことはできると思うので、メールでご連絡くださっても結構です。ただ、使ってみてダメだったというのも困るので、こういう処理をしてほしいとか、そういういうことを具体的かつ明確に伝えられる方だけにしてください。

パズルはあんまり好きじゃないんだけど…

来年の作付計画を練っている。定番品だけでもミニ・ポワロー、チポロット、チャード、ビーツ、ブレット(ビエトラ)、ミニフェンネル、ルーコラ・セルヴァチカ。これに季節モノがくわわる。どれも生育期間、栽植密度、施肥、(必要なら)防除がぜんぶちがうので、パズルである。

葉茎菜はとくにそうだが、長期間出荷するためには、継続的に種をまき、定植していく必要がある。これが単純に毎週とかならいいんだけど、時期によって生育期間が変わってくるのでむずかしい。つねに収穫適期のものが適量あるのが理想。あまったり足りないというのはよろしくない。が、需要をつねに正しく読めるわけでもないし、天候とくに気温の変化次第で生育スピードが変わることもしばしばなのである。

ならば行きあたりばったり、とにかく種をまいて、できたものを売ればいいじゃん、といければいっそのことラクなのである。でもそういうわけにもいかないから、とにかく綿密に計画をたてる。

とくにむずかしいのが数量の読み。定番品でも時期によって需要の変化があるから、これを的確にとらえていかないと商売としてはうまくないのである。真冬にガスパチョをたくさん仕込んだって売れないでしょ? それとおんなじなんです。ただ、食材の場合は、ごく短期間、スポット的に流通させても、認知してもらえない=使ってもらえない可能性がたかいから、なるべく長期間出荷したほうがいいわけ。

ひとつのことをつきつめて考えるのは得意なんだが、数多くの事柄を按分していくのはじつは苦手なのである。情けないハナシである。

いまの時点での決定事項は、サヴォイは産直のみにすること、エピナールとシコレ・フリゼはふたたび試験栽培。

11月中には細部まで考えを詰めておかなくてはならない(12月には種子の発注がはじまるから)ので、築地経由でまきもの屋の野菜をお取り扱いくださっている方で、品目、品種について何かプロポーザル、ご要望がありましたらお早めにどうぞ。レストラン様むけの産直限定品であればそこそこ小回りがきくのですが、やっぱり種子の発注の都合がありますので、こちらもお早めにおねがいいたします。

イタリア語で「パパ」の複数形は?

つまらぬ語学ネタをひとつ。

イタリア語の名詞は単数形と複数形が、男性名詞だと"-o"→"-i"、 女性名詞だと"-a"→"-e"がほとんど。"-e"→"-i"というパターンもあるけど。

で、まずは男性名詞のばあいだと、"cavolo"(キャベツ)→"cavoli"、"pomodoro"(トマト)→"pomodori"といった具合です。女性名詞の例についてはイタリア語の参考書でも見てください。

さて、何事にも「例外」というのはありまして、ローマ法王のことを"papa"(パーパ)といいますが複数形は"papi"(パーピ)です。上に挙げたパターンとちがいますよね。

ここで問題です。"padre"(パードレ=お父さん)の意味の"papà"(パ)の複数形は? 「パピ」? それとも「パペ」?

こたえは「そのまま」。語末にアッチェント(アクセント)があるときは無変化といいうきまりがあるんです。これ、授業の流れのなかだとけっこうおもしろいんでしょうけど、不特定多数の読者を想定して書いてみたらぜんぜんダメですね。せっかく書いたからアップしますけど、つまんなくてゴメンナサイ。

フランス語は名詞の複数形は基本的に「発音はおなじ」(かわるものもけっこうありますが)、綴りは"-s"にするだけ、なんで、それにくらべるとイタリア語はちょっと面倒です。しかも、こういう例外はいくつかありまして、"uovo"(ウオヴォ=玉子)→"uova"なんか有名です。

イタリア語の単数形、複数形は母音そのものが変わるわけですから、まきもの屋の野菜なんか商品名でけっこう悩むことがあります。プンタレッラかプンタレッレか、チーマ・ディ・ラーパかチーメ・ディ・ラーパか、チポロットかチポロッティか。カタカナにしたときにかなり違う印象ですし、イタリア語の文法なんてみなさん知ったこっちゃないでしょうから。

そうそう、産直の「おまかせ西洋野菜セット」でハーブのことを"aromatica"あるいは"aromatiche"と表記しておりますが、これはもちろん"erba aromatica"、"erbe aromatiche"のことですが、"erba"は略しちゃっていいんです。ちなみに、"aromatico / aromatica / aromatici / aromatiche"は形容詞です。男性単数、女性単数、男性複数、女性複数の順です。形容詞は基本的にはこういうふうに変化します。もとの名詞は"aroma"(アローマ=香り)という男性名詞です。複数形は"aromi"ですんで、さきほどの「ローマ法王」とおんなじパターンですね。

まきもの屋はフランス語やイタリア語の「性数一致」にうるさいですが、これって語学の初級じゃないですか。で、初級語学程度の知識をお持ちのかたはそれこそゴマンといらっしゃいます。そのなかには、間違いをみつけたらそれこそ鬼の首でもとったみたいにツッコミを入れる方もけっこうおられるわけです。

フランス料理、イタリア料理をお好きな方のなかには、語学、文化に興味をお持ちの方は多いはずです。もちろん程度の差こそあれ知識もお持ちでいらっしゃる。そういう方々のご期待に沿うよう努めるのも、西洋野菜生産=異国の食文化をあつかう者として仕事の一部と考えております。まぁ、それを商売上の「ウリ」にしているわけですけど。

ラ・メゾン・デュ・シャ・キ・プロット

ふたたび意味不明のタイトルでございます。いちおう解説申しあげますと、バルザックの小説の題名を無理矢理カタカナにしてみました。「ボール遊びをする猫の店」くらいの意味です(1)

いつも子音の[t]や[d]単独のときのカタカナ表記は困るんですが、"de"[d]を「ド」と書くのが慣例になっておりますから、「ト」にしちゃいました。ついでに云うと、フランス語に「促音」(ちいさい「っ」はないんですが、「ト」との関係であったほうがいいかなとこれも強引に入れております。

が、本日のお題はそういうことじゃなく、「めぞん」でございます。なんか、あるBLOGでお呼びがかかったような気もするんですが、きっと気のせいでしょうから、じぶんのフィールドでやらせていただきます。ところで、むかーし、この語をタイトルに入れたマンガがございましたなぁ。このマンガの大ファンというフランス人の青年に複数会ったことがあります。

それはともかく、"maison"(メゾン)、「家」のことですが、このタイトルにひいたように「店」の意味でもつかうことがあります。日本語とおんなじですな。ペコちゃんのメーカーさんなんかそうですよね。ついでながら、まきもの屋の「屋」も「家屋」というくらいですから、もともとは「店」の意味じゃありませんが、そういうふうに使っていますよね。

フランス語のほうでは、"maison de jeux"(メゾン・ド・ジュ=賭博場)とか"maison de commerce"(メゾン・ド・コメルス=商家、商店)といった一般的な表現もあります。

で、日本ではよくガストロノミックなレストランのことを「グランメゾン」と言うようで、以前もある料理人さんと話題になったこともあるんですが、フランス語でもそういうのか? これは「和製フランス語」なのか? 正直に申しあげますと、わかりません、というか知りません。だって、フツーに"restaurant gastronomique" (レストラン・ガストロノミック)って言いますから。

だから、"grande maison"(グランド・メゾン)(maisonは女性名詞なのでgrandeと女性形になります)とか、"grand-maison"(グランメゾン)といった表現はもしかしたら見聞きしたこともあるかもしれませんが、まったくといっていいほど意識したことがなかったんですよね。だから知らんのです。自分の体験において見たり聞いたりしたことのないものを、「存在しない」と断言できません。知らないものは知らないんです。まぁ、言うとしてもフシギじゃないんですよね。

いま、「グランド・メゾン」と「グランメゾン」、2種類の表記を書きました。これ、理屈の上ではどっちもフランス語として「あり得る」んですよね。"grande maison"(グランド・メゾン)のほうは上で説明したとおりです。女性名詞に形容詞をつけるときは女性形にします。

が、"grand"はそのままのかたちで名詞とむすびつくことがありまして、その場合は一単語になるわけですが、"grand-mère"(グランメール=祖母)、"grand-rue"(グランリュ=中央通り)、そのほか"grand-peur, grand-soif, grand-chose..."いろいろとございます。ここの挙げた例はみんな女性名詞なんです。ハイフン(-、トレデュニオンといいますが)じゃなくて ' でつなぐこともあります。だから"grand-maison"(グランメゾン)という表現があってもフシギじゃないと思います。手元の辞書にはでておりませんが。

しつこいようですが、これはあくまでも「推測」です。だって知らないんですから。知らんモンは知らんのです。フランスで暮らしたことがあるとはいえ、当時はいまのように四六時中食べもののことばかり考えていたわけじゃないですし、ガストロノミーとはまったく無縁でしたから。

カタカナ表記の「グランメゾン」についてはよくわかりませんが、"grande"のさいごの子音[d]を書いていないのが、[r]の音をカタカナ表記の際に書かないことがあるのと同様かもしれません。聞こえにくい音だから聞こえたまんまに表記しちゃうという方式ですね。それはそれでひとつのやりかたですんで。

ある表現が「決定的に間違っている」というのはそうそうあるはなしじゃございません。ただ、こうはあんまり言わないでしょう、こっちの言いかたのほうがフツーですね、というのはけっこうあります。

まきもの屋の商品名ミニ・ポワローですが、日本の市場名はポアロジュンヌあるいはポワロジューヌなんですよね。フランス語で"poireau jeune"とやってもかならずしも「決定的な間違い」じゃない。でもあんまり言わないと思うんですよね。"jeune poireau"あるいは"poireau crayon"のほうがフツーだと思います。フランスからの輸入モノの商品名"Mini-poireau"みたいなのもアリですが。ちなみに"oignon nouveau"(オニョン・ヌーヴォー=日本だと「オニオン・ヌーボー」と言われています)はフツーにアリですね。

まぁ、「グランド・メゾン」でも「グランメゾン」でもいいんじゃないでしょうかね。ただ、語の意味からすると、"restaurant gastronomique"(レストラン・ガストロノミック)のほうがフツーの表現という気がします。それだけのことですんで。

N.B. ここで書いた"grand-maison"説は却下となりました。フランス語としては"grande maison"が正しいということです。"grand-maison"はまきもの屋の脳内世界で繰りひろげられた珍説にすぎません。ある方が、スマートに、さりげなく典拠をお示しくださいました。この場を借りて感謝申しあげます。

間違いを書いたわけですから、このエントリはいっそ消しちゃいたいくらいなんですが、あえて残しておきます。珍説もまた面白いんじゃないか、ということでご容赦ください。

  • 注1) べつにペットショップのお話しじゃありません。看板にラケットを手にした猫の絵がかいてあるという設定なんです

寒くなってまいりました

今年はちょっと最低気温が下がるのがはやいようで、さきほど(22時)に軒下の温度計を見たら5℃。最低気温はだいたい平地よりも8℃〜10℃低いのが普通なんです。夏の最高気温なんかは5℃もちがわなかったりするんですが。

夏が過ぎ、秋になり、まもなくつらい冬。あたりまえのことなんですが、まだ畑にグリークバジルがあるんですよ。これが心配。だいたい、5℃っていうのは野菜用冷蔵庫(「予冷庫」といいます)の設定温度で、バジルは冷気にあたると変色しますから、収穫後は常温管理が基本なんです。グリークバジルは比較的寒さにつよいんで、つよい冷気じゃなければ品質は維持できるんですが、それでも霜が降りたらおしまいです。

霜は風のないよく晴れた晩に、最低気温2、3℃で降りちゃいます。この2、3年は10月20日過ぎに初霜だったんで、そのつもりでいたんですが、油断大敵ですな。まぁ、一度に全滅するほどの冷えこみはないと淡い期待はしてるんですが…。ダメなときはダメなんで、そうなったら仕方ありません。もっとも、9月にはいってからグリークバジルはいささか売れゆきも鈍っていますんで。

いっぽうで、そこそこの寒さにあたったほうがおいしくなる野菜というのもありまして、ブレット(ビエトラ)、ビーツ、チーメ・ディ・ラーパなんか味がのってくると思います。ミニ・ポワローもさらにおいしくなりますね。

N.B. やっぱり心配ですね。ある有名レストランさん(1)がメニューにご採用くださっているという情報を市場経由できいてはいたんですが、そのお店のHPで「今月のメニュー」にあるのを確認しちゃいました。「グリークバジル」とは謳っておられないんですが、たしかにお使いくださってるようで、まきもの屋としても重責を感じます。もっとも、グリークバジルの出荷が10月中旬で終了することは6月の出荷スタートの時点から何度も市場側にはお伝えしてありまして、そのことは先方もご了承くださっているというハナシなんですけど。

  • 注1) まきもの屋にとっては、野菜をお使いいただけるのであれば有名無名は関係ないんですが、じっさい有名店でらっしゃるので、せっかくだから「有名レストランさん」と書かせていただきました。

ミニ・ポワローはせめてひとり一本お召しあがりください

たて続けのアップですが、なにも精神を病んだわけでもありませんし、とくにヒマなわけでもありません。もともと文章を書くのは速いほうなんで、ネタさえあれば数時間で原稿用紙10枚分以上はささっと書いちゃうんですよ。

さて、「辛口」コラムニストT氏にしろ、クチコミサイトの投稿者のみなさんにしろ、巨大掲示板にしろ、いまどきはレストランで一皿の料理を複数の食べ手が「シェア」して当然、という風潮みたいです。オペレーションの都合からか、「シェア」前提のレストランさんもけっこうあるようですが、「こだわり」のオーナーシェフのみなさんは多少なりとも--すくなくとも心情的には--抵抗なさっているようです。

で、生産者の立場から申しあげますと、たとえば肉料理か魚料理にまきもの屋のミニ・ポワローが一本添えてあったとします。その一本はやっぱりお一人様でお召しあがりいただきたいんですよね。

まきもの屋のミニ・ポワローのいちばんわかりやすい特徴は、何といっても「白み」(=軟白部)の長さなんです。で、ボケつまり葱の本体というか軸というか「棒状」のところで、 軟白されていない部分、それから、最近出荷しているのはあんまりにも「白み」を長くしたせいであんまりついていない(一定の長さで切るから)「青み」(=葉)、ぜーんぶ味がちがうんですよ。とっても微妙な差ですけどね。

それに、まきもの屋の味覚がかならずしも鈍いわけではないと思うんですが、ミニ・ポワローってのは10本くらいいちどに食べても飽きない、そのくらいソフィスティケーティドされた味に仕上がっているはずです。良い言い方をすれば「繊細」、身も蓋もない言い方をすれば「味が薄い」んです。一本の半分とか三分の一を「ひとくち」お召しあがりになって評価していただくような食材じゃないと思っております。それを2本、3本一皿に載せてくれなんて、原価の問題もありますし、料理のトータルのバランスもありますから、とてもじゃないけど料理人さんに言えません。料理じたいは料理人さんの作品なんですから、材料を提供する側としては「ああしろ、こうしろ」と注文なんてつけられません。

でも、真面目な料理人さんが渾身の一皿を毎回お客様にご提供するとき、その一皿には、つかわれている食材の数だけ生産者がいて、全部が全部とは申しませんが、やっぱり渾身の一品として食材をご提供しているわけです。「あれも食べたい、これも食べたい」というのは結構なんですが、喰いちらかされちゃかなわんのです。せっかく料理人さんがおいしく調理してくださったものなんですから、しっかりと味わって「味の記憶」(オリヴェの有名な言葉でしたな)に刻みこんでほしいんです。

テーブルマナーなんてものは、本質的には「その場にいる他者に不快な行動をとらない」という一点につきるはずです。だから、「シェア」するにあたっての約束事なんてありませんし、「どうすればスマートにシェアできるか」なんてこともないと思います。誰も不快に思わない範囲で、好きにすればいいはずです。

まぁ、フランスやイタリアですと、外食の際には「一人一皿」が原則で、相方の料理を「味見する」ということくらいはあっても、「シェア」というのは概念じたいないはずです。ためしにフランス語の"partager un plat"という表現を調べてみてください。比喩的には「同じ釜の飯を喰う」という意味ですし、字句どおりでも、きわめて親密な、あるいは家族的な関係でしかあり得ないものなんです。そう、ここで話題にしているのが「外食」であることは留意してくださいね。

われわれ生産者なんて「裏方の裏方」でしかありません。レストランでは食事をなさるお客様が「主役」です。「王様」といってもいいかもしれません(そういうテレビドラマがありましたな)。でも、「暴君」はいけません。寝首をかかれるか失脚すると決まっておりますから。「名君」はやっぱりわたくしども下々の者へのお心遣いをお忘れにならないと思うんですが…。

そんなわけで、シェフのみなさん、食材にこめられた「生産者の想い」を錦の御旗に堂々とシェア拒否宣言なさってくださいな。でも、営業上マイナスにならないようにうまくやってくださいね。べつに、食材に「怨念」がこもっているわけじゃないんで、気楽に、自然体に、でもうまーく営業してください。それが「みんな」の利益につながると思うんですがいかがでしょう?

N.B. えー、いささかイヤラシイとは思うんですが、このエントリと昨日のラテン語タイトルのエントリには、ごく一部の方ならおわかりいただけるであろう仕掛けをさせていただきました。おわかりになりました方はコメントなりメールなりで「笑い」をシェア = partager していただけると幸いです。いえ、すごくクダラナイ仕掛けなんで、おわかりにならなくても生暖かくスルーしてくださいな。つまらないことなんで。

ビエトラと仔羊肩肉のトマト(プリンチペ・ボルゲーゼ)煮込み

台風一過、まだかなり強い風が吹いているが、それとはまったく関係なく(?)、「おうちイタリアン」である。湯剥きしたプリンチペ・ボルゲーゼとフライパンで焦げ目をつけた仔羊、じっくり炒めてビンに保存しておいたタマネギを鍋で煮込み、さらに下茹でしたビエトラの葉柄をくわえて味をなじませただけ。そうそう、風味づけにドラゴンチェッロ(エストラゴン)を一枝。仔羊を焼いたフライパンは赤ワイン少々でデグラセしてそれも加えた。

ご覧のとおり、まったく煮つめていない、それどころか水をけっこう加えた。レストランならブロードを使うところだろうか。

ビエトラの葉は下処理なしにグースファット(というか、鴨のコンフィをつくるのに使っている脂)で炒めてみた。おそらく多数の料理人諸氏が採るであろう調理法の結果を再確認するため。結果? 葉柄とちがってアクもクセもないから「食べられる」。いまどきの言いかただと「フツーにおいしい」といった感じだろうか? こういうやりかたであれば、じっくり炒める意味はあんまりない。脂がまわって、まだ葉がピンとした質感のうちに火からおろしてもいいくらいである。

とくに肉厚で緑の濃い葉だと、たしかにきれいに仕上がるので、彩りとしてはいいと思う。味そのものについては、やっぱりきちんと下茹でして、さらにトロトロになるまで加熱したほうが甘みもでておいしいと思うんだが、いかんせん色がよろしくなくなってしまう。葉柄のほうをしっかり加熱してもらえるなら、これはこれでアリかな、とも思う。個人的にはエピナール(スピナーチォ)よりも好みだが、あっさりしているから、味にパンチがないといわれればそれまでである。

というか、エピナールというとフランスの大学の学食なんかでつけあわせとして皿にのってくる山盛りのピュレみたいなものの記憶があまりにも強いもんだから、それにとらわれちゃっているのかもしれない…。まぁ、それはアリコ・ヴェールにしろプチ・ポワにしろおんなじなんだが。

台風直撃中

台風18号はどうやらこのあたりを直撃するようで、かなり強い風もでてきました。そういう予報がでておりましたので、ある程度覚悟はしておりまして、9日納品の産直のオーダーは1日早くさせていただいたりということはしておりました。じっさい、台風の進路にあたるだろうほとんどの農家は前日獲りで、昨日のうちに出荷作業をおわらせていると思います。

ただ、市場出荷分はまだぜーんぜん何もしていないんですよ。暴風雨のなか無理して畑に出て事故にあったらかないませんので、おさまるまで自宅待機とさせていただきます。

台風にしろ、長雨にしろ、豪雨にしろ、野菜が蒙る被害というのは、その時だけじゃなくて、けっこう後をひくものです。モノによっては3ヶ月以上後まで影響します。天気というか自然にはかないません。振りまわされっぱなしです。それなのに、「長期安定出荷しろ」だの「欠品するな」だのと無理難題を押しつけられ、フザケルナ!と言いたくもなりますが、なにしろ生産者はいちばん弱い立場なんで、謙虚に「ベストを尽しますので」としか申しあげられません。

まぁ、ブレット(ビエトラ)やグリークバジルが1日や2日なくたってどなたも困りはしないと思うんですけどね。って言うか、野菜なんて一時的にはまったく食べなくても平気なはずですんで。困るのはまきもの屋のほうでして、欠品すればお客さんは別の品物を手配なさいますから、次回出荷しても買ってもらえなくなってしまいます。生活がかかっておりますから、なんとかしなきゃいけないんですが…

10月8日12時45分追記

けっこう足の速い台風だったようで、既に中心は通過したみたいだが、ネットで台風情報をみるとモロにこのあたりを通ったようです。雨は止みましたがまだかなりの強風です。

被害状況は数日経ってみないとはっきりしませんが、チーメ・ディ・ラーパはいささかヤバいかもしません。そのほかは「軽」というところでしょうか。ブレット(ビエトラ)やマルチカラード・チャードの葉がもげていたり、ある程度背の高い野菜は倒伏、ビーツなどもいくつかは抜けかかっていたりします…。でも、グリークバジルなんかはまったく問題ないようですし、ぜんたいとしては関係各位にご迷惑をおかけするほどのことはないと思います。

«STAT ROSA PRISTINA NOMINE, NOMINA NUDA TENEMVS»

ヘンなタイトルで申しわけありません。このBLOGをお読みのほとんどの方には「なんじゃこりゃ?」でしょう。ただ、わかる方には「あー、なんだ、『薔薇の名前』か」と思っていただけるんじゃないかと。流行りましたよねぇ。さらにおわかりいただける方ですと「最後の綴りが間違ってるじゃん」と。で、ラテン語をご存知の方ですと、「わざわざ古い綴りで書かんでも…」と。

何のハナシかと申しますと「名前」が今日のお題です。商売上の立場というか、いろいろございまして、このところ店名とか料理名のイタリア語、フランス語はどんなものであっても基本、スルーさせていただくことにしております。まぁ、文法というか言語として間違いのひどいものについては、個人的にはそういうお店に客としてお伺いしない、というだけのことです。

で、このエントリのタイトルなんですが、よくあるイタリア語、フランス語の店名も似たような構造にあるんじゃないか、そういうことについての考察をしてみたいわけです。

レストランのお客さんがイタリア語、フランス語をおわかりになる比率というのはそんなに高くはないでしょうから、やっぱり「イミフ」なはずです。でも、お店のオーナーさんなり経営母体の責任者さんといった方が、想いを込めてつけられているわけです。

ですから、「当店の店名はこういう意味なんですよ」と機会あるごとにお客様にご説明する。「物語性の付与」という点でなかなか有効な戦略になるわけです。料理、サーヴィス、内装、調度がおなじであれば、なんらかの「物語」があったほうが経営的にいいにきまっています。

ただ、これは諸刃の剣みたいなところがありまして、「わからない」お客様にはいいんですが、「わかる」お客様には逆効果だったりするんですよね。とくに「名前」が言語としておかしかったり、「物語」が陳腐だったりすると。まぁ、みなさん大人ですから、いちいちツッコミを入れたりなんかはしないはずです。それに、個人店の場合は、店名なんてのは思いきって業態変更でもしないかぎりそうそうは変えられません。

あとですね、けっこうな数のお客さんが、そういった「物語」なんてものについて「んなこたぁどーでもいいんだよ」みたいに感じられるという可能性もありますよね。そうなると、説明ぬきで覚えてもらえて、嫌悪感を抱かせない、かつ言語として「正しい」名前というのがいちばんのぞましいわけです。

いや、日本なんだから日本語がいちばんいいんじゃないかと個人的には思うんですけどね。その辺は皆さんいろいろお考えがおありでしょうから。

うーん、やっぱり奥歯にモノの挟まったような書きかたしかできませんな。そりゃ、今後、なにかご縁があるかもしれないんですから、これからお店をオープンなさる方々におかれては、くれぐれも「恥ずかしくない」店名をおつけくださいな。名詞と形容詞の性数一致はとくにお気をつけください。それから、前置詞+名詞も要注意です。"chez"、"da"なんかはあんまり間違えることがないと思いますが、前置詞"à"(au, auxも)、イタリア語ですと"a"(al, alla, etc...)あたりはかなり使いかたがむずかしいと思います。とくに熟語表現ですと、前置詞+名詞が「名詞の補語」になるものでないと珍妙です。この文言がおわかりにならないようでしたら避けたほうが無難でしょう。

たとえ日本語でも「まきもの屋」みたいな珍妙で意味不明の屋号のヤツに言われたかぁないと思われてもしょうがありませんな。いえ、上に書いたことはあくまでも「考察」なんで、ご勘弁ください。

有機ぢゃないよ、特別栽培でもないよ

この話題は何度もBLOGで書いたので、まきもの屋当人としては食傷気味なんだが、やっぱり折にふれて書いたほうがいいんでしょうな。

むずかしく言えばキリがないんだけど、ようするに、日本という国においては、「農薬取締法」というのがあって、もうひとつ「肥料取締法」「地力増進法」という法律もありまして、そういうのはきちんと守っております。野菜の使い手、食べ手のみなさんがいちばん気になさる農薬ですが、農薬取締法にもとづいて「登録」という制度がありまして、○○という農薬はこの野菜には△回、収穫×日前までつかっていいですよ、なんてことがこと細かに規定されております。

ここまでが農林水産省の管轄。商品としての食べ物については厚生労働省の管轄で、「食品残留基準」というのがやっぱりこと細かく定められておりまして、○○という農薬は△△という野菜では××ppmまで残留していてもOKなんていうリストになっております。いわゆるポジティブリストというやつです。

後者については、現実的には前者つまり農薬取締法をきちんと守っていれば理屈のうえではまるっきり意識する必要がありません。ひっくりかえして言うと、農薬の袋とかビンにはすっごく小さい字でいろいろと注意書きと「登録」の表が印刷されているんで、それをしっかり読んで、用法、用量をただしくつかえばいいわけなんです。

ここまではわかりやすいですよね。ところが、「有機JAS」とか「特別栽培」なんて別の基準がございまして、これが問題をやっかいにしてくれちゃうんです。ダブルスタンダードなんて言いかたがありますが、これにかんしちゃトリプルスタンダードです。農薬の使用にかんしては、農薬取締法→特別栽培→有機JASの順で「大ざっぱに」いうと少なくなるというか、制限がきびしくなりますが、生産者サイドの視点でも、理屈から言ってもいろいろと問題があるわけでして、「事件は現場で起きているんだ!」と言いたくもなりますね。

ほんとうにかんたんに言って、まきもの屋の野菜というのは、「有機」でもなければ「特別栽培」でもありません。どちらの表示も不可能ではないけれど、その表示をするためのコストが大きすぎるという現実がありまして、いまのところ興味がございません。じゃあ何なの?って、フツーの野菜なんです。ミニ・ポワローはミニ・ポワローであって、「有機ミニ・ポワロー」でも「特別栽培ミニ・ポワロー」でもありません。それで充分だと考えております。

だって、はっきり申しあげて、まきもの屋のミニ・ポワローと同等のものを栽培できる生産者って国内にどれだけいらっしゃるんでしょうか? じっさいのところ、栽培方法は「ヒ ミ ツ」です。ただ、農薬の使用にかんしては、農薬取締法を遵守していることだけは確かです。規定をはるかに下回る使用なのも事実ですが、いちいちそんなこと申しあげる必要がないくらい、自信作なんです。

そりゃ、「栽培履歴」を必要でしたら、情報開示はしなければなりません。よろこんで情報開示させていただきます。ただ、それにもコストはかかるわけですので、相応の追加料金はいただくことにしています。また、その情報じたいはbrutなものですから、○月×日堆肥1500kg(N18kg,P21kg,K15kg)散布、△日定植、××日防除(イミダクロプリド、10000 倍、150ℓ/10a、×△日フルベンジアミド2000倍100ℓ/10a)…なんてのを見て、どれだけの方が理解してくださるんでしょうか?…。無理ですよね。

で、ダブル、トリプルスタンダードの「有機」「特別栽培」の出番なんですが、こういう制度って、いわゆる「一般野菜」を念頭においたものですから(農薬取締法の規定もそうなんですけどね)、まきもの屋がやっているようなマイナーな野菜だとかならずしもあてはまらないんです。もちろん「解釈」の問題でクリアできるのもありまして、そういうのは農水省がリストアップしてくれているんですが、ぜんぶじゃないんですよ。

つまり、マイナー品目については「有機」「特別栽培」っていう表示は不可能じゃないけど、現実にはとっても大変なことで、そんなことをするビジネス上のメリットなんてとてもじゃないけど見いだせないんです。だって、いまの時期(9月下旬〜10月)にミニ・ビーツ(キオッジャ)を出荷できる農家が日本にどれだけいると思いますか? デトロイトのミニ・ビーツじゃないですよ。キオッジャだとほんとうに数えるほどです。商売としてはそれで充分に成りたつんですから、法をまもってさえいれば、その屋上屋を架したような「有機」「特別栽培」なんていらんのです。

まきもの屋がめざすのは「高品質のおいしい、ホンモノの西洋野菜」です。それで充分じゃないですか。たとえ実態として有機にちかかろうが、農薬の使用頻度や種類が少なかろうが、そんなこといちいち大声で喧伝するつもりはありません。法律まもってるだけなんですから。

いやぁ、もぅ、面倒ですから、「有機」とか「特別栽培」とか「無農薬」なんておっしゃる方は、ほかの農家さんをさがしてください。まきもの屋の野菜は「有機」でも「特別栽培」でも「無農薬」でもございません。この話題、食傷気味どころか苦痛なんです。

ちなみに、築地の卸売場では、まきもの屋の野菜は「有機こだわり農産物コーナー」通称「こだわりコーナー」での扱いとなっておりますが、「有機」じゃなくて「こだわり」に力点があるとお考えくださいな。三浦の「ピエトロ」とか茨城の「ホルン」、宮城の「プンタ」なんかもそちらの扱いですが、みなさんがかならずしも有機JASの認証をとっておられないと記憶しております。「特栽」の表示はいろいろ微妙なところがあるんで言及をひかえさせていただきますが。

ブランシールしただけの「はねだし」野菜と牛頬肉の赤ワイン煮

ミニ・ポワロー、アリコ・ブール、チーメ・ディ・ラーパ。どれもマヨネーズと相性がいいんだけど、その誘惑(!?)をふりきって、あえて牛頬肉の赤ワイン煮にそのままあわせてみる。この料理のまえにグラーナ・パダーノのリゾットをつくったから、こんなのでも「おうちイタリアン」と言ってもいいかもしれないんだけど、イタリア料理っぽくするんなら、つけあわせは別皿のほうがいいでしょうな。

いまどきの日本のイタリア料理だと「つけあわせ」は一緒盛りがふつうだとは思うんだけど、トラットリアなんかでセコンド・ピアットをたのむときに、一緒に「コントルノ」-- サイドディッシュなんて訳す場合もあるみたいだが -- を注文するのがむかしながらのスタイルのようですね。いまはどうか知らないけど。

さて、この「コントルノ」"contorno"というコトバ、いうまでもなく"contornare"(コントルナーレ=周りを囲む)という動詞から派生したものですよね。つまり、メインの料理の周りを囲むものなんですよね、コトバのもともとの意味としては。だから、写真のミニ・ポワローみたいに料理の周りを囲んでいるのが正しいわけです(笑。

フランス料理だとつけあわせは「ガルニチュール」"garniture"といいますね。これは動詞"garnir"(ガルニール=添える)の派生語です。こちらは囲んだりはしません。昔の料理の図や写真をみると、たとえば鱒の周りをぐるりとジャガイモが囲んでいたりしますが、コトバとしてはやっぱり「添えもの」なんですね。

フランス語で「Bを添えたA」というのは"A garni(e) de B"となります。類似表現で"A accompagné(e) de B"というのもあります。AとBをまちがえるとちょっとはずかしいかも知れませんね。いずれにしても、この表現いまどき風じゃないというか、けっこう古くさい感じなので、料理名ではあんまり見かけませんね。