Archive for November 2009

まきもの屋シリーズ

文体をもとにもどしてみる。

さて、ヘンな言葉である。まきもの屋が言いだした表現ではない。まきもの屋が築地に出荷している一連の商品について、築地の一部でいわれている呼称のようだ。

ヘンだけど、ちょっとおもしろい。「シリーズ」、フランス語だと"série"(セリ)、イタリア語で"serie"(セリエ)。「一連のもの」の意である。

「連続している」ことが含意であるから、USモノのテレヴィドラマなんか、"série américaine"(セリ・アメリケーヌ)と言う。すごく古くは「奥様は魔女」とか、ちょっと古くは「ダーマとグレッグ」みたいなのである。

そう、「継続」ではなくて「連続」なのである。次は何がでてくるか、というニュアンスさえ感じられる。もっとも、「まきもの屋シリーズ」と市場の現場でおっしゃっている方々はそこまで考えておられないと思うが、妙に言葉にこだわるまきもの屋としては、さらなる商品開発のプレッシャー(笑)に感じられなくもない。いや、不断の商品開発は経営上の理由はもちろん、趣味みたいなところもあるし、勝手にやっているところもあるんだけど。

商才がないのか、どういうわけか、考えに考え抜いた商品よりも、思いつきに近いというか、あんまり深く考えないで市場に投入したもののほうが反響があったりするのが困ったところである。下手の考え休むに似たり、といったところだろうか。まことに悩ましい。

言葉のイメージはどうであれ、「まきもの屋シリーズ」として認知していただいたということは、とりもなおさず、お客様に受けいれてくださっているということであり、まことにありがたい。

レタス、キャベツの栽培から西洋野菜に全面シフトする際に、いつもお世話になっているM社長、市場の担当Y氏が口をそろえておっしゃっていたのが「ブランド化」である(口をそろえて「携帯を持て」と強要もされたが)。まだまだ「まきもの屋ブランド」にはほど遠いだろうが、「まきもの屋シリーズ」はその第一歩といえるのだろうか。

商売として西洋野菜の生産をしているわけだから、お客様のご期待に沿うのが第一である。むずかしいのは、「お客様のご期待」がかならずしも具体的なニーズじゃなかったりすることである。ようするに「潜在的需要」をうまく引きだすことが求められているわけである。

そうはいっても、「顕在的な需要」があれば、それにこしたことはないのである。みなさん「アレが欲しい、コレを栽培しろ」とおっしゃってくださればラクなんだが、ご遠慮なさっているのだろうか。遠慮しなくていいんですよ。種まきする前なら、言うのはタダなんだから。

そう、言うのはタダ。独占契約じゃないかぎり、なにも「責任をもって全量引きとれ」なんて申しません。ある新規商品について、どうするかの判断はまきもの屋じしんがするわけで、かりにリクエストいただいたとしても、まきもの屋が「見込みなし」と思えば実現しないわけ。実行に移さなければ商品は実現できないんだから。

いまのところ、「まきもの屋シリーズ」は、M社長からのプロポーザル、まきもの屋の趣味の野菜、まきもの屋の思いつき、でできている感じである。このBLOGをご高覧くださっている料理人さん、八百屋さん、「まきもの屋シリーズ」のさらなる展開に関わりませんか? もちろんそれ自体は無償ですが(笑。

マルチカラー・キャロット

ニンジンの歴史を考えるとちょっとおかしなネーミングです。そもそも、ニンジンというのは色の発現がきわめて不安定なものだったそうで、本質的にはマルチカラーだったわけです。写真のはぜんぶ近代品種なので、色ごとにちがう品種をつかっています。

それはともかく、今年は種子を入手できなくてあきらめていた紫の別品種、期待していたんだけど、また種とりに失敗したかもしれないというはなし。ショックです。急いで代替をさがしているところなんですが…。

とはいえ、ニンジンというのは不当に安値をつけられている野菜のなかでも、コスト無視でとんでもない安値が恒常的につづいているもののひとつなんですよね。マルチカラーだろうが何だろうが、ニンジンはニンジンなんで、手間を考えたら生産意欲なんてとてもじゃないけどなくなっちゃいます。

いまのところきちんと評価してくださった方がいらっしゃらないんで、ちょっと自信喪失気味なんですが、じつはこの5色のニンジンのなかで、いちばんのキモはオレンジだと思っています。ごくあたりまえの色ですよね。形状は日本のとはちょっとちがうけど。

これ、「ナンテーズ系」carotte nantaise (carotte de Nantes)のF1品種で、もちろんフランスで育種されたものです。そもそもナントというのはフランスの地名ですね。最新とはいわないまでも、比較的近年に開発されたもので、いってみれば「いまどきのフランスのニンジン」なんです。

これのご先祖様である固定種の「ナント」を毎年つくっていたんですが、なかなか満足できませんでした。香りが強すぎることもあるんですが、じぶんがかつてフランスで食べていたものとおなじにならないんで、風土の違いかなぁ、と思っていたんです。

が、コレはかなり近いと思います。っていうか、そのものです。フランスのニンジンです。正確に言うと、10年ちょっと前のフランスで一般的だったニンジンの味です。どのくらいフランスのニンジンらしいかというと、ラペ(râper = おろし器をつかって「おろす」こと、グリュイエールなんかもそうですが、千切り状にします)したのをマヨネーズであえると、すっかり気分はResto-U(フランスの学食)、もとい、ビストロです。だいたい、このニンジン、味噌汁に入れるとちっともおいしくありません(笑。どうも和風の調味が合わないみたいなんです。

そんなわけで、日本で一般的なニンジンとの味、香りのちがいをたのしんでいただきたいんですが、なかなかむずかしいようです。まぁ、日本じゃ香りというか「ニンジン臭さ」をとことん排除して、とにかく甘くなる品種がもてはやされているんですから、しょうがありませんね。

そんなわけで、このオレンジのニンジン、築地に出荷されることはないと思います。売れないでしょうから。だいたい、「ナント」系のニンジンはさいきんは珍しくなったみたいですが、日本でも栽培されなかったわけじゃないんですよね。だから「差別化」が難しいんです。っていうか、自家用だけでいいかな…? ほかのいろんな色のほうが楽しいし、紫なんかとっても甘いですからね。

やっぱりコイツを商品化するとなると二の足を踏んじゃうところがありまして

しつこくエピナールの話です。種をイタリアに発注しました。とりあえず春どり用に3品種。計15,2€。送料と輸入のための書類作成費用が65€。そういうものなんですよ。ボジョレ・ヌーヴォーの値段について、よく、ほとんどが空輸のコストだって言われますが、それとおんなじですね。

まぁ、それはさておき、品種としてはフランス系2種、イタリア系1種です。ほかの多くの野菜とおんなじで、品種選定はとても重要です。

「エピナ」にたいして料理人さんが期待するものは何か。そこのところがとても重要です。丸葉か剣葉か、縮れの程度なんかはたいした問題じゃないと思います。葉色、葉の厚み、味、そのあたりがポイントでしょうか。どれも品種によって差があるんです。だからどんな品種でもいいわけじゃありません。

そりゃ、見た目のレヴェルでいうと、黒いほどまでの濃い緑、肉厚でしっかりした葉、 かたい葉柄(軸=ふつうこの部分は食べないんですけどね)、そういったのがいいんだと思うんですよ。

じっさい、そういうふうな品種をえらんで自家用に冬場だけつくってきましたが、ちょっとだけ「おためし」で今週の産直のセットにお入れさせていただくことにしたんです。で、問題発覚、パッケージングできないんです。袋にはいらないんですよ。しょうがないから、根元からバラして袋づめしちゃいました。

そういえば、フランスのマルシェなんかじゃ、エピナールは株じゃなくてバラバラの葉を山積みして目方売りしていたなぁ、なんて思いだされます。アチラじゃほとんどの野菜は目方売りなんですよ。スーパーでも、電子式の秤があって、客が品物を載せて対応するボタンを押すとバーコードのシールがでてきてそれを品物に貼るのがフツーでした。

脱線しちゃいました。品種選定からパッケージングまで、もちろん栽培じたいは基本技術だけで勝負ですからかなりハイレヴェルな課題なわけです。やりがいはありますね。

ただねぇ、ブレット(ビエトラ)だってそんなに売れる商品じゃないのに、エピナールの需要なんていったいどのくらいあるんだろう…、そう考えると躊躇しちゃうんですよね…。ちょっと弱気です。

エピナの商品化を真面目に考えなくちゃいけないのかなぁ…

倉渕はホウレンソウの産地です。農水省の「指定産地」になっています。倉渕のホウレンソウは市場でもとても高い評価を得ているそうです。

ホウレンソウは、じつはとても高度な栽培技術を要する野菜のひとつです。肥培管理(といっても、基本的に追肥はしませんから、元肥一発勝負ですね)、水分、温度管理、もちろん品種選定もだいじなファクターです。そのほか、種まきの技術というのもあります。が、いちばん重要なのが「土つくり」なんです。

すっごく基本的というか、いってみれば「あたりまえ」のことですよね。でも、その基本に忠実でなければうまくいかない、シンプルなものってけっこう難しいんですよね。いってみれば、料理人さんが「焼きっぱなしの肉」でコースのメインをきちんと成立させるというようなものなんです。

じつのところ、まきもの屋のミニ・ポワローにしろミニフェンネルにしろ、けっこうトリッキーなテクニックを使っています。特許をとりたいくらいです(笑。そういった付加的な技術要素があるのと、基本技術だけで勝負するのとは、根本的に違うんですよね。

そんなこともあって、まきもの屋ではホウレンソウは冬に純系の日本ホウレンソウと西洋種を少しばかり自家用に栽培しているだけなんです。

純系の日本ホウレンソウは商品としては絶望的なものなんです。なにしろ葉柄(軸)が折れやすいことこのうえない。袋づめにしろ、テープで結束するにしろ、ボロボロになっちゃいます。だから商品にはならんのです。

あるシェフからいただいたサジェスチョンもあって、西洋種(エピナール、フランス料理業界では「エピナ」)のほうはちょっと商品化を考えておりまして、いろいろと検討中です。

これの前のエントリで書きましたけど、あんまりにも「ホウレンソウ」の味をシュウ酸のえぐみ、みたいなところに収斂されちゃうと、ほんとのエピナールの味、ほんとの純系日本ホウレンソウの味ってのはこういうんだよ、と言いたくもなるんですよ。

で、エピナールのほうは商品化の計画がないわけじゃないんで、真面目に考えてみようかと。

ただ、フランスの学食でつけあわせにエピナールのピュレの山盛りをいやってほど食べた悪い記憶があるんで、ガストロノミックな食材として仕立てられるのか、それを自分自身できちんと評価できるのか、ちょっと自信がないんですよ。でもまぁ、やってみたいと思います。週明けには種子の発注をしておこうと思います。

産直販売を「セット」のみにさせていただいている件

産直では単品のオーダーはおうけしておりません。お客様の「使い勝手」が悪いことは重々承知しております。

まきもの屋は築地市場への出荷がメインです。築地市場を介して、いろいろな仲卸さん、八百屋さん、飲食店さんにお取引いただいております。もし、産直で単品のオーダーをうけてしまうと、そりゃひとつひとつのオーダーがどんなに小ロットであっても、出荷計画に多かれ少なかれ影響がでちゃうんです。なにしろ、ごくごく小規模でやっているもんで…。

築地への出荷に影響がでちゃうと、各お取引先様にご迷惑をおかけしちゃうことになります。そうでなくても、天候の影響やら、需要の読みちがい、栽培上のミスやらなんやらでご迷惑をおかけすることもあるんですから、マイナス要因はすこしでもなくさなくてはなりません。

築地に出荷しているまきもの屋の商品は、ほとんどのものが、袋、パックにこのサイトのURLを記したシールを貼っております。もし、まきもの屋が産直で単品オーダーをうけていると、さいしょ八百屋さんからお買いもとめになったお客さんが、「産直のほうが安いだろう」などと、産直で買おうとする。一般の小売でもあんまりおもしろいことじゃないはずですが、レストランむけの「おさめ」の八百屋さんですと「死活問題」です。っていうか、商慣習に反する行為なんですよ。

だから、産直をやらせていただくにあたって、「セット」だけにさせていただいているんです。それに、レストランさんからお問いあわせいただいたときでも、築地をご利用いただけるお店であれば、そちらのほうをご案内しているくらいです。そりゃ、必要なものを必要なときに必要なだけお買いもとめになられたほうがいいにきまってますから。

そもそも、産直の商品って、レストランさん限定の「定期便」だけにさせていただいていたんですよ。ただ、一般の方からあんまりにもたくさんお問いあわせいただいたんで、スポットでもセットをお売りできるようにいろいろ調整したんです。

で、正直なところ、これが限界なんです。突然、見ず知らずの方から「○○をちょっとだけ売れ」とおっしゃられても困るんですよ。ですから、東京の方でしたらやっぱり築地でご購入いただくのがいちばんですし、それ以外の地方の方でしたら、どの地域にも西洋野菜をやってる農家さんはいらっしゃるので、なるべく近くでお探しになることをおすすめしております。

こういう事情があるんで、産直のほうは「セット」のみということでどうかご勘弁ください。

イノシシのロースト、やわらかく茹でたミニ・ポワロー

おうちジビエ(ただしイノシシ)第4弾。ようやくセコンド・ピアットにたどりつきました。端肉ぢゃないよ。ただ、冷蔵庫のなかで、どの部位かわかんなくなっちゃったんですよね…。いえ、「ネック」なんですけど、そんなにイノシシを食べつけてるわけじゃないんで、8割くらいの確信とでも言いましょうか…。

つけあわせにミニ・ポワローをつかったから、ちょっと「フレンチ」風味ですが、ソースはイノシシのスーゴ。塩コショウ以外なーんにも足しておりません。それでソースになるんだから大したもんです。いえ、イノシシのはなしですよ。すっごく濃厚です。なにしろ、ソースにする段階でほとんど煮つめなくていいくらい濃いスーゴをとりましたから。

今回、猟師さんから頒けていただいたイノシシ肉のうち、バラと前脚は塩漬けにして、いまピチットシートで水分を抜いております。あとはフィレと不明の部位、ハツですね。ペーパーに包まって熟成中です。ハツは料理法を考えあぐねているんです。うーん、せめてレバーもあれば、じっくり火を通してペーストにするんですけど…。でも、そうするとパンを焼かなくちゃならないし…。

ともあれ、いちおう、ちゃんとした(?)部位でセコンドまでやりましたんで、これにて「おうちジビエ(ただしイノシシ)」シリーズもいちおう完結でしょうか。まだまだイノシシ週間はつづくんですけど。

そうそう、ミニ・ポワローは10分くらい茹でてます。ぜんぜん筋っぽくなくておいしいです。まさしく自画自賛ですが(笑。そんなに茹でたら味が抜けちゃうって? そんな心配ご無用です。寒くなるとポワロー(ポッロ)のシーズンでしょ? ミニ・ポワローだって若どりとはいえ例外じゃないんです。味はのっていますよ。

ミニ・ポワローはまきもの屋の商品としてはほぼ周年、安定供給を目ざしております。コンセプトはその名のとおり、ミニサイズのポワローなんです。考え方としては「若どり」には重きを置いておりません。だって、種まきからヘタすりゃ半年以上かけて「若どり」はないでしょう? そんなわけで、栽培方法も特殊ですし…。

輸入はもちろん、国産の「ポワロジューヌ」もたくさんあるようですので、まきもの屋のミニ・ポワローは「後発商品」なんですが、それでも、いちどお使いくださった料理人さんからは指名でオーダーいただけているようで、まことにありがたいことです。

チコリア・カタローニャ、アンチョヴィのサルサで

本日のアンティパスト・ディナー(笑)です。いえね、むかーし、どこかの旅行会社のツアーで、行程表に「アンティパストの夕食」ってあったんですよ。新聞の折込チラシだったっけか。壮絶ですよね。延々とアンティパスト、いつまでたってもプリモにたどりつけないんだったら。おなじようなのに、「フィレンツェ名物リボッリータの夕食」ってのもありました。セコンドは別料金なんですかねぇ。いえ、ツアーを利用したことはありませんが、もちろんちゃんとそのへんはフォローなさってるんでしょうから、なーんにも問題ないはずですよね。

さて、写真でおわかりいただけるでしょうか? アレです。ローマの冬の風物詩。いま出荷しているのもほぼ、事実上アレといっていいくらいにはなっているんですが、思うところあって、あえてチコリア・カタローニャの名でやらせていただいております。だってアレというにはいささか貧相なんですよ。今年はどうもうまくいっておりません。他産地ですばらしい品質のものを毎年つくっておられるので、いくらなんでも現状じゃアレを名乗るのは恥かしいというのもあります。

昨年は訳あって「中止」、要は失敗しちゃって、1株もとれなかったんで、2年ぶりということになります。やっぱりおいしいです。いいですよね、コレ。

というわけで、これからプリモにとりかかりますが、前日とおんなじなので。日常の食事ってのはそんなもんです。

パッパルデッレ・アル・チンギアーレ

おうちジビエ(ただしイノシシ)第3弾! スーゴをとった骨についていた肉をあつめてトマト(スーパーマルツァーノ)と赤ワインやらをくわえ、強引にラグーに仕立てたんで、イノシシのラグーといえばパッパルデッレでしょう、ということで、ものすごーくひさしぶりに手打パスタです。

ちゃんとしたのを打つにはファリーナ00なんでしょうか。そんなのもちろんございませんので、カメリヤ強力粉。それでも、手廻し式のパスタマシンをつかって、そこそこの出来にはなるもんです。粉300gに玉子3ヶ、ちょっと粉は追加。茹で時間は3分くらい。ちょっと自画自賛です。

ラグーのほうは、いってみれば「出汁ガラ」なんで、ニンニク、カイエンヌ、バターなどを多めにくわえて味を補っています。「おうちイタリアン」なんで、まぁ、こんなんでもけっこう満足です。

イノシシのラグーとパッパルデッレの組みあわせってかなりポピュラーなんだと思うんですが、Ricette Regionaliには出ていないんですよね。トスカーナのところに"pappardelle alla lepre"はあるんです。こっちもやってみたいなぁ。

12月のピセッリ

あるところからいただいたお問いあわせ。

「ピセッリって今どういう状況ですか?」

「ウチは春まきの作型になるので、いまはまだ種まきもしておりませんが…」

「じゃあ、12月はムリですよね…」

「12月だったら九州などの暖かいところの農家さんにあたっていただいたほうが…」

せっかくいただいた「引き合い」なんで、お応えできないのがまことに心苦しいんです。っていうか、貴重なビジネスチャンスを逃しちゃったというべきか…。圃場視察にお越しになられるご意向もあるようだし、いいおつきあいを願えればいいんですが…。

そもそも、市場の担当Y氏を介してのはなしだったんですよね。しばらく前に、氏からお店の名前は聞きませんでしたが、そういうところからのコンタクトがあるだろうからよろしくね、という電話があったんですよ。で、まきもの屋はそれを覚えていたんで、わりとスムーズに話ができたんです。ところが、別件でY氏に電話をしたついでに、「○○○○○○さんから電話があったよ」と伝えると、???な反応。すっかり忘れてるんだもん…。

それはさておき、本題に入りますと、ピセッリはようするにグリンピースなんで、理屈からいえば、暖地なら11月どりから可能なはずなんですよね。じっさい、12月には九州あたりのグリンピースがけっこう出回っているわけです。ただ、日本で一般的なグリンピースとは品種が違うから、なーんにも考えずにやってうまくいくとはかぎりませんが。

で、ちょっと考えてしまったんですよね。ピセッリ、フランス語だと"petit pois"(プチ・ポワ)ですけど、アスパラガスなんかとおなじで、5月くらいの野菜というイメージがあると思います。じっさい、そのころがフランスあたりじゃ「旬」なんです。

ところが、思いかえすとフランスの学食じゃ年中つけあわせにでてきました。まぁ、冷凍モノだったようですが。スーパーに行くと、プチ・ポワとミニニンジンの瓶詰めが山ほど売っています。そう、季節感をだいじにするような野菜じゃなくて、手段や形態はどうあれ、年中あるのがあたりまえの日常的な食べものなんですよね。

家人いわく、バルザックの『ラ・ポー・ド・シャグラン』で、10月終りの宴会にプチ・ポワがでてくるじゃない、と。たしかに19世紀であっても不可能じゃないんですよね。これを典拠に、19世紀にすでにこういった野菜が周年とはいわないまでも長期栽培されていたとも言えなくはないでしょう。ところが、です。その宴会の場面を含んだ一部分が5月に雑誌掲載されてるんですよね。つまり3月〜4月にかけての執筆というわけです。執筆時期に「旬」の野菜じゃないですか。さて、この問題、どう解釈すべきなんでしょうか。

脱線してしまいました。ピセッリ、プチ・ポワつまりヨーロッパ品種のグリンピースは瓶詰め、缶詰、冷凍で年中利用できます。でも、ガストロノミックな世界だとそういうわけにもいかないでしょう。ましてや、味のまったくちがう国産じゃ、「ダイヨウ」にさえならないんでしょうね。

12月にピセッリを出荷できたらいいんでしょうけど…。この野菜、生育適温の幅がせまくて、地域によって時期がかぎられちゃうんですよね。だから、倉渕では無理なんです。ピセッリについては、M社長肝煎りのプロジェクトPがありますんで、そちらにご期待ください。ものすごくガストロノミックな仕立てになる予定ですので。って言うか、さらしちゃいましょうか。コチラをご覧くださいな。M社長との共同開発なんで、それ以外の流通ルートだとどうなるかはわかりませんが、たぶん築地経由であれば多少なりともご入手いただけることになるでしょうから、どうぞお楽しみに。

野菜の栽培というのは、思った以上に時間のかかるものでして…

タネを蒔いて3日や1週間でできる野菜なんてスプラウトとかマイクロリーフくらいしかありません。ベビーリーフだって季節によっては40日以上かかります。ミニ・ポワローなんか最短でも4ヶ月、時期によっては種まきから6ヶ月以上。

まきもの屋で栽培している野菜の多くは、春から秋までのハイシーズンで3ヶ月以上かかるものがほとんどです。つまりどういうことかというと、たとえば、11月後半から出荷する予定でハウスに植えてあるミニフェンネルは8月に種をまいたものなんです。8月までの販売実績から「このくらいのニーズだろう」という予測をして種まきをしています。だから、突然ニーズが顕在化してもお応えできないんです。だって余分に種をまいていないから。

余分に種まきをすればいいじゃないか、とおっしゃる向きもあるでしょう。でもそういうわけにもいかないんです。

供給過剰だと安値になってすぐに赤字です。赤字になるくらいなら出荷しないほうがいいので、畑で捨てることになります。もったいないなんて言わないでください。「余っているんなら赤字にならない程度に安く売れ」というのもナシです。そういうのを「足元を見て買いたたく」と言うんです。まったくもって下劣なことだと思います。だいたい、希望価格で売れて採算ギリギリなんです。それでも「高い」と言われるんです。

ハナシが逸れてしまいましたが、せっかくつくった野菜を捨てるのがイヤなのは当然です。ほんとうに悔しい。なにより辛いことなんです。だから、ちょうどいい量をつくるのがいいわけです。というか、足りないくらいでいいとさえ思っています。

作付量の判断はニーズの予測と歩留まりで決まるんですが、出荷しているときのお客様からのリアクション、フィードバックをもとに考えています。市場出荷分については、相場も重要なファクターです。というか、なかなかフィードバックいただけないんで、相場で判断するしかないんです。

で、「売れないから作付量を減らそう」などと判断して種まきをする。困ったことに、数ヶ月して、つまり出荷できる量が減ってしまってから、ニーズがでてきたりする。そりゃ、予測を間違えたまきもの屋じしんの責任ですが、時と場合によっては、「そもそもあんたのところの分はつくってないよ」と言いたくもなります。言えませんけどね。

産直のほうも似たような事情があります。長期出荷モノについては、いちおうゼロにはならないようにしていますが、やっぱり人気があるかないかで、作付の増減をしております。リアクションがない=人気がない、ということですから、人気がないと判断したら、すくなくとも増産はしません。やめちゃおうか、っていう判断もあり得ます。だから、セットにたくさんお入れさせていただいているときにこそ、リアクション、フィードバックいただけるとありがたいんです。

おそらく、料理人さんと生産者とでは、モノを考えるときのスパンがかなりちがうんだと思います。個人店ですと、11月に翌年3月のメニューを考える方はそう多くはいらっしゃらないんじゃないでしょうか? 生産者のほうは、11月、12月、1月についてはもう確定しちゃっています。2月についてはまだ間にあうものもないわけじゃない、という程度です。つまり、11月の時点では3月、4月、5月に出荷する野菜のことを考えて作業をしているわけです。

「○○をもっと欲しい」といわれてすぐに増産にかかったとしても、結果がでるのはどんなに早くても3ヶ月後、ヘタをすると半年後だったりします。すぐに「はいどうぞ」というわけにもいかないんです。

みなさんご多忙なことは重々承知しておりますし、野菜なんて数ある食材の一部でしかないんですけど、それでも、産直のお取引先様に限らず、市場、八百屋さん経由でまきもの屋の野菜をお使いくださっている方からは、こまめなリアクション、フィードバックをいただけると、ご不便ご迷惑をおかけすることも少なくなると思いますので、よろしくお願いします。

イノシシのポルペッティーネ

おうちジビエ(ただしイノシシ)第2弾! ランチだからってわけでもありませんが、ピアット・ウニコ(笑)です。たまにはスーゴをとってみようとイノシシの骨を頒けてもらったんですが、けっこう肉としてイケそうなところがついているんで、家庭用のかんたんなミートチョッパーでミンチにして、ポルペッティーネに(ようするにミートボールですな)。6mm目合だからけっこう粗挽きです。ほんとはサルシッチャにしたかったんですよ。でもケーシングが手許にないから…。

肉に水分がやや多かったので、つなぎに玉子とパン粉をつかって、イタパセのみじん切りをたっぷり。昨晩の残りのアンデスレッドのローストといっしょにオーブンへ。焼いているあいだにトマトソース(スーパーマルツァーノの冷凍ペースト)とリゾットを用意。仕上りのタイミングもほぼピッタリ。仕上げにグラーナ・パダーノをおろしかけて完成。

リゾットにもグラーナ・パダーノをつかったから冗長かと思ったけれど、まぁOKでしょう。主役のポルペッティーネですが、イノシシでつくったのははじめてですが、おいしいです。血合が少々入ったのでやや臭みもありますが、それもまたいいもんです。

イノシシのスペアリブとアンデスレッドのロースト、チコリア・カタローニャのソテーとシュガーローフ

おうちジビエです。「ジビエ」"gibier"ってフランス語でいうと、ついついベカスとかペルドロー、ピジョン・ラミエあるいはコルヴェールといった鳥か、リエーヴル(野ウサギ)なんかイメージしちゃうんですが、イノシシも立派に「ジビエ」なんですよね。まぁ、イノシシだとイタリア語の"selvaggina"(セルヴァッジーナ)のほうがなんとなく個人的にはしっくりきたりしますが。でも日本だと「セルヴァッジーナ」ってイタリア料理店さんでもあんまり言わないみたいで「ジビエ」のほうが主流のようですね。とはいえ、畑を荒す憎きイノシシ、こうして食べちゃえば多少は溜飲が下がるでしょうか(いえいえ、それとこれとは別問題なんですけど。やっぱり生命をいただくわけですから、つまらぬ感情論はよくないですね)。

さて、「最新情報」のエントリの写真のイノシシをすこし頒けてもらいました。で、さっそくですがスペアリブをローストで。塩コショウ、オリーヴオイル以外、なーんにもつかっていません。いえ、イノシシの解体を見学していたせいで畑仕事が押しちゃってハーブをとりにいけなかっただけなんですが、上手に処理してあって臭みがないみたいだから、あえてそのまま、骨つき肉の旨味を味わう趣向だなんて強がってみます。

チコリア・カタローニャは「わき芽」、シュガーローフは外葉です。どちらも出荷のとき「調製」といって、余分なところをのぞくんですが、それです。まさしく「まかない」ですな。いえ、農家の日常の食材なんてそんなものなんですよ。で、チコリア・カタローニャは下茹でせずにオリーヴオイル、ニンニク、カイエンヌ(タカノツメじゃないですよ)、アンチョヴィで炒めてシュガーローフを大きくちぎった上に。

チコリア・カタローニャが甘いんですよ。生のままのシュガーローフがちょっと苦く感じるくらい。まぁ、シュガーローフも加熱しちゃうと苦みはなくなりますんで。単独だと生でも「苦甘い」んですけどね。

ともかくも主役はイノシシ。すっごくおいしいです。解体直後なんで「熟成」なんてしてるわけないんですが、旨いんです。豚のおいしさって脂に負うところがおおきいと思うんですが、イノシシは脂はあっさり。肉の旨味なんですよね。素人料理なんでかなり雑にオーヴンで「焼きすぎ」というくらいに火を入れちゃったんですが、それでも柔らかいし臭みもない。やっぱりハーブはなくてもOKですね。

頒けてもらったイノシシはまだあるので、バラはパンチェッタに、骨でスーゴをとって…、脚はどうしようか…。しばらくはいろいろ楽しめそうです。てなわけで、「おうちジビエ(ただしイノシシ)」の連載でもしてみますかね?…

悲しみに酔っちゃってます

語学ネタで失礼します。皆様生暖かくスルーしてくださいな。

百姓としては稀代の語学力(?)がウリのまきもの屋ですが、やっぱり山の中にこもって畑仕事ばっかりやっておりますと、どうしてもフランス語がサビついているなって感じることもあります。イタリア語にしても、読むのはいいんですが、もう何年もまともに喋っていないんですよね。フランス語のほうはどういうわけか年に数回は喋る機会があるんですけど。

いえね、むかしから、ポップスの歌詞というのは苦手でして、これはフランス語の場合ですと、会話で「標準」とされる発音とちょっとちがうなんてこともありますけど、日本語のポップスとか歌謡曲でさえ聞きとれないことも多いんで、仕方ないんでしょうか…

さいきん気にいっているポーリーヌ・クローズの"Quand je suis ivre"の歌詞でききとれないところがあって、不快でしょうがないんです。それも出だしのところ1ヶ所、どうしようもありません。

Quand je suis ivre, ivre de tristesse
Quand je suis ivre, ivre de détresse
Je voudrais tant dégriser
Et retrouver les couleurs
Qui se sont éffacées,

ここまではすんなり頭にはいったんですが、このあとの1センテンスがどうしてもダメなんです。で、答えを見ちゃいました。

Ne sont plus que des ombres

はぁ、こんな簡単なのが聞きとれないなんて…。後半というか、残りもほぼ問題なしだっただけにショックです。まさしく"je suis ivre de tristesse"です。 悲しくて頭グラグラです。

それはともかく、とってもいい歌なんで貼っときますね。

今年のクリスマスは中止となりました(笑

街場の個人店さんでもそろそろクリスマス・メニューのご案内の時期でしょうか。

なんてことを書いておりますが、まきもの屋の西洋野菜は、今年はクリスマス需要を見込んだ作付にはなっておりません。通常どおりなんです。ですから、クリスマスだから普段とちがう西洋野菜を使ってみようか、とお考えになられるシェフがいらっしゃっても、ご期待に沿うことができません。たぶん、この時期にはスポットの産直商品「おまかせ西洋野菜セット」もお休みさせていただいているんじゃないかと思います。

だって、寒いんですよ、ものすごく。12月中旬以降といえば、ヘタすると地面が凍っています。凍土ですよ。だから、この時期は、産直も「定期便」のお取引先様にご迷惑をおかけしないようにするのが精いっぱい。新規のお取引もおうけできないかもしれません。築地への出荷も12月は種類、量ともに少なくなります。しょうがないんです。寒いんですから。

そうはいっても、まるっきりなんにもなくなっちゃうわけではありません。寒さにつよい野菜もありますし、猫の額ほどですがハウスに植えてある野菜もあります。ですから、普段からまきもの屋の西洋野菜をお使いくださっているレストラン様におかれましては、いつもどおりお使いいただけると思います。

葉つきのミニ・ビーツ(キオッジャ)なんか、赤、白、緑だからまんまクリスマスカラーですね。今年は冬どり分をハウスに種まきはしてあります。チポロットも赤と白がございますんで、やっぱり葉を勘定にいれたら赤、白、緑。笑っちゃいますね…。ゴージャスという点ではミニ・ポワローなんか1本まるごとお皿にのせていただくとインパクトはありますよね。ヘタをすると「ただのネギ」に見えちゃうリスクもありますが。まぁ、いずれも基本的には通常商品なんですよね。通常商品を通常とおんなじ作付量でやっております。

そうそう、ブレット(ビエトラ)、チャード、チーメ・ディ・ラーパ、シュガーローフ、カタローニャは11月いっぱい、どんなに気候がよくても、せいぜい12月1週でぜんぶ終了になりますんで、ご注意ください。

ミニ・ビーツのオーヴン焼きと牛腿肉のタリアータ、ルーコラ・セルヴァチカ添え

おうちイタリアン(笑)でございます。デトロイトがほとんど黒く写っています。茹でるとお湯に色素が流れだすから、もうちょっと明るい赤になるんですが、ご覧のようにキオッジャとゴールデンも一緒ですから、茹でるとしたら別々にしないとなりません。オーヴンで焼くのであれば、互いの色素で染まる心配はないんで、手軽なんですよ。

料理としては、ご覧のとおりなんで、とくに申しあげることもないと思います。味つけは塩コショウ、バルサミコをかるーく回しかけただけです。ちょっと肉に火を入れすぎちゃったかな、これはミニ・ビーツの加熱時間をまちがえたせい。やっぱり、皮がするっと剥けるくらいまでは火を通さないと、この野菜の持ち味は活かせませんよね。

どーしてもキオッジャの年輪模様を鮮かにいかしたい向きは、圧力鍋で蒸すのがいいでしょう。とはいっても、圧力鍋をつかうお店ってそうそうはないかも知れませんね。まぁ、ごく短時間でしっかり火を通すのがポイントなんで、スチコンでもいいかも知れませんが、スチコンのことはよく存じあげないので、わかりません。

たしかにビーツ(キオッジャ)はクセがビーツのなかではすくないほうなんで、生食可ではありますが、生のまま薄ーくスライスしたのばっかりじゃねぇ。やわらかく火を通したほうがおいしいんで、ぜひおためしください。

シュガーローフ・チコリ

今シーズンもごくごく少量の栽培だから、とくにキャンペーンというか販促活動もしないつもりなんですが、黙って放置しておくのもナンだから、ちょっと書いてみることにしましょうか。

まきもの屋の商品名は英語の"Sugar Loaf Chicory"からとっていますが、もっぱらフランスと北イタリアの野菜なんです。フランス語だと"chicorée pain de sucre"、イタリア語では"cicoria pan di zucchero"です。いずれも「砂糖パン」という意味ですね。たぶん見た目からついた名称だと思います。

見た目はロメイン・レタスとかタケノコハクサイにちょっと似た、細長い円筒形で、いわゆる「半結球」タイプということになります。

基本的にはサラダ用の素材なんですが、緑のところはかなり苦いと思ってください。白いところ、とくに芯にちかい部分は寒さにあたるとけっこう甘みがのってきます。「苦甘い」味です。サラダ以外にも、ファルシにしたり、いろんな使いかたができます。

ほとんど同系統で、"cicoria bianca di Milano"という品種もあります。栽培してみた感じではこちらのほうがちょっと肉厚で、ずんぐりした仕上りになりましたが、いまひとつ違いがはっきりしないのと、フランスでは"chicorée pain de sucre"のほうが一般的ということもあって、ミラノ品種は今シーズンは栽培しておりません。

イタリアでいう「チコリエ」のひとつなので、ラディッキオとかカステルフランコ、キオッジャ(いわゆるトレヴィス)とかヴェローナの仲間というか兄弟です。こういうのって、圧倒的に赤いのが多いですよね。そんななかでシュガーローフだけは薄い緑なんです。

で、見た目と味のギャップとでも言いましょうか、一見したところ地味なんですが、そこそこのインパクトのあるお味だと思います。昨シーズン、築地に出荷するにあたってサンプルを担当氏にお送りしたところ、外側の緑のところをちょっとかじって「苦い!」と拒否反応。ダメかなと思いましたが、実際に出荷してみると、ご好評いただきまして、築地でお買いもとめくださったという料理人さんからメールをいただいたりもしました。こういうのってすごく嬉しいんですよね。励みになります。

そもそもの商品開発上(?)の意図は、料理人さんはサラダの主素材にサニーとトレヴィスをお使いになることが多い。で、この時期つまり11月くらいになるとサニーってものすごく赤がつよく発色するようになるんですよね。もちろん良くできたもののはなしですけど。かつてさんざっぱらこのBLOGで書いたように、サニーレタスなんてものはフランス、イタリアには商品カテゴリとしては存在しない、日本独特のものなんです。それがちょっと気になるのと、サニー、トレヴィスを中心に構成されたサラダってのはともすると「どす黒い」というか、赤系が強すぎる配色バランスになっちゃいがちなんですよね。そこで、あえて、そんなに緑の濃くないシュガーローフをお使いいただくと、けっこう面白いんじゃないか、そういう発想ですね。

それに、味じたいも、USや国産のトレヴィスとくらべたら、やっぱりインパクトはあると思うんですよ。さっきも申しあげた、見た目と味のギャップってやつです。こういうのって一皿を構成するうえでけっこう重要な要素になると思っています。

もちろん、見た目と味のギャップといっても、いい意味でのことです。それに、苦味が気になるようでしたら、ちぎって(カットして)から水にさらせばかなり苦味をコントロールできます。

とっても面白い素材だと思いますし、ある仲卸さんからもそうおっしゃっていただいたんですが、いかんせん日本では知られていない。たぶんブレット(ビエトラ)なみに無名の野菜でしょう。

けっこうなヴォリュームがありますので、仕立てにもよるでしょうが、なかなか使いでがあると思います。逆にいうと、いちどにたくさんご使用いただくのは難しい野菜なので、生産者としてはなかなか商売にならないところもあります。そんなわけで、ごくごく少量生産なんです。露地だと倉渕では11月の1ヶ月だけしかおいしくできません。だから期間限定です。今シーズンの販売結果次第では、細々と長期(といっても冬のあいだだけ)の栽培に挑戦してみようかな、そんなことも考えています。

そうそう、チコリエ全般に共通する特徴ですが、シュガーローフもチーズとくにゴルゴンゾーラやロックフォールとものすごく相性がいいです。ただ甘いだけの野菜に飽きた大人のための素材ですな(いえ、もちろんけっこう甘いんですが、それだけじゃないってことで)。

フラテルニテ

綴りは"fraternité"。昨今巷でよく耳にする「友愛」はこれの訳語ですね。語源から考えるとラテン語の"frater"(兄弟)からきているわけだから、「兄弟愛」というくらいが適当かな? より厳密にいうなら"fraternité"という名詞そのものは「愛」という概念を含んでいないともいえるから、英語でいう"friendship"みたいに考えたほうがいいかもしれない。もっとも、フリーメイスン的に言えば、「愛」の概念はとうぜんながら入ってくるわけだから、このあたりは目くじらをたてるほどのこともないかもしれない。

さて、フランス革命の標語として有名な"liberté, égalité, fraternité"だけど、むかしはこれを「自由、平等、博愛」と訳していたと思う。「博愛」が「友愛」になったのはまことに結構なことなんだが、上に述べたように、"fraternité"はそもそも「兄弟」をもとにした語だから「兄弟愛」あるいはせめて「同胞愛」くらいが適当なようにも思うんですよね。

って言うか、おなじフランス革命で有名な「ラ・マルセイエーズ」の歌詞をかの「友愛」氏はご存知なのだろうかしら? けっこう血なまぐさい内容なんだよね。それとも、ネットでよく言われる「友愛される」という表現って、そこまで踏まえてるのかな?

日本では「愛国」=「右翼」みたいな図式があるけど、フランスなんかじゃ、18、19世紀の文脈では「愛国」=「左翼」となるんでね。ヨーロッパの王家ってのはその国土着の存在とはかならずしも言いきれない側面があって、王党派がかならずしも愛国者であるわけじゃないっている歴史もあるわけ。

20世紀になって、社会主義、共産主義が政治的うねりとして台頭してきて、こういった考えかたは「インターナショナル」なものを前提としているから、その対比として共和主義みたいなのが「右翼」イメージをもつようになったわけ。「ドゴール主義」なんかわかりやすい例だと思います。

なにもフランスの政治史について語りたいわけじゃなくて、いま話題の「友愛」という語が、そもそも持っている意味とか、そういうのをないがしろに、いいかげんに使われているんじゃないか、そう指摘したいだけなんです。

なんにせよ、「友愛」という語は、フランス語だと、そもそもは「同胞愛」くらいの意味でしかないわけだから、「博愛」みたいなコスモポリタニズムの文脈では用いてほしくないですよね。文化を異にする者は「他者」であるはずなのに、かの氏は「日本は日本人だけのものではない」とおっしゃったとか。安易で薄っぺらいコスポモリタニズムは危険きわまりないんですけど。

もうね、サイードくらいは読んでいてほしいですよね。そういうことをおっしゃるなら。いまや「インターナショナル」な、「コスモポリタン」な世界観、価値観、思想なんてどうにもならないくらい、世界は細分化されていることが明らかになっちゃっているわけでしょ。

って言うか、とにかくあの「フーちゃん(1)」たちの暴走を止めてほしいものです。あの連中には「ネイション・ステーツ」の概念すらないんでしょうから。他者である外国人はあくまでも他者であって、自国民じゃないんです。そりゃ帰化すればおなじ国民です。国家の根幹にかかわる制度なんですから、それをゆるがすようなことはしちゃいけません。それとも、あの連中は「国家」というものの脱構築を目論んでいるんでしょうかね?

ちょっといやな類推みたいなのがあって、かの「友愛」氏は「4年をあたえてくれ」みたいなことをおっしゃっていたと記憶しています。1933年でしたっけ、ヨーロッパである政党が政権を獲得するときに、その党首が「我に5年を与えよ」といっていたのと重なるんですよね。その党首は内政とくに経済運営に長けていたわけですが、「友愛」氏とその党の場合はどうなんでしょうか?

まぁ、「友愛」氏はただのマペットで、実権はべつの強面氏がお持ちなんて噂もありますから、いささか複雑な事情もあるのでしょう。でも、そんなことで日本という国を、われわれの生活をこわされちゃかないません。

いつも言うように、異文化理解というのは、自分が他者であることの確認と、異文化の尊重があってはじめてできるものなんです。文化を異にするというのはそういうことなんですよ。

こんなことを書いていたら、まきもの屋も「友愛」されちゃうんでしょうか? まぁ、いまの日本にはすでに「言論の自由」なんてないようなものですから。なにしろ、ちょっと皮肉っぽい表現をしたら「中傷だ」と非難されちゃうくらいです。まったく世知辛いご時世です。

というわけで、さいごにゲンズブールの「ラ・マルセイエーズ」を貼っときます。

  • 注1) もとはフランス語。気になったら綴りと意味は自分で調べてくださいな。

『冬物語』

そういう商品名のビールもあったような…。ついでにググったらマンガのタイトルでもあるらしい。が、みなさんご承知のとおり、元はシェイクスピアのThe Winter's Taleですな。いえね、急に冷えこんだから、そんなことを思ったわけです。なにしろ軒下の温度計では、今朝の最低気温が-3℃なもんで。

真冬はもっと寒いんですよね。毎年-12℃までは最低気温が下がります。でも、まぁ、今年はおかしな気候で、11月のはじめに唐突にこんな冷えかたをして、明後日からまた小春がつづくっていうんですから。ホント、天気はこちらの希望なんてまったく聞き入れてくれないんですよね。ついでに言うと、こんな冬がきついところの生産者に、「もがき(1)」モノばっかり「アレが欲しい、コレをよこせ」っておっしゃるお客様も、こちらの事情なんてまったく聞き入れてくださらないんですよね…。この程度の冷えこみが1回や2回程度であればビクともしませんが、出荷できるものは出荷する、できないものはムリというのは事実なんで。まぁ、真冬はパイプハウスでなんとかしのぐつもりではいますが。

  • 注1) 市場用語で、品薄状態のこと