お客様に喜んでいただくために
またまた抽象的な内容でゴメンナサイ。ヒマってわけじゃないんだが、冬は作業できる時間も短かいし、ハウスにある野菜の生育もとってもゆっくりだから、考えることが抽象的になりがちなのである。思索といえば格好いいだろうけど、そんなに立派なものじゃないか。
さて、飲食店関係者のみなさんが、いちばん大切なことのひとつとお考えの「お客様に喜んでいただく」ということ。これ、食材を提供する側である生産者もまったくおなじ思いなのである。
ただ、野菜の場合、生産者→市場のセリ人→(仲卸さん→)八百屋さん→料理人さん→サーヴィスのひと→お客様という流れがあって、その結果としてお召しあがりいただくことができるわけだから、生産者と食べ手であるお客様とのあいだに幾人ものひとがかかわっている。
昨今はこうした流通プロセスのデメリットばかりが強調されがちである。極端な例だろうが、生産者→食べ手、にしちゃえばいいじゃない、という考えもある。農家レストランってやつですな。ジャンルによってはたしかに面白いと思う。ただ、野菜をつくるプロがかならずしも料理やサーヴィスもプロフェッショナルとはかぎらない。
じゃあ、プロの料理人、サーヴィス人を雇えばいいじゃないか、ということになる。それはたしかにひとつの解である。ただ、その「農家レストラン」で使いきれない野菜はどうなる? そもそもそんなにたくさん栽培しない? それとも、ほかの飲食店や一般消費者に売る? 前者だと本質的には「野菜を自家栽培しているレストラン」ということになる。後者だと、生産者が飲食店を経営することの意味は、アンテナショップ、パイロットショップといった性格を帯びやすいように思う。経営としてはどちらもアリだけど、もしもここで述べたように動機が生産者と食べ手の距離をちぢめることにあるとすると、自己矛盾がでてくる可能性もあるだろう。
いや、中間的な形態もあるな。パサールのポタジェなんかそう。もともとはアルページュで使うための菜園だけど、余剰をほかのレストランに卸しているということだから。パサールの場合は、一流の料理人が生産者を雇っているわけだから、生産者としてはじつはあんまり参考にならない事例なんだけど。
たしかに、農家レストランというのは興味深い。もっとも、成功するには、よっぽど経営センスがあるか、かなりのビッグネームか、どこかの企業とタイアップか、そういった要件は必要だろう。まきもの屋は「やってみたいか」と訊かれるならば「野菜をつくって売るだけでいいや」と答えるだろう。
なので、食べ手に喜んでいただくために、基本は一般的な流通経路、最短でも料理人さんとサーヴィスの人をとおして考えていくことになる。で、料理書や専門誌をせっせと読み、ネットのクチコミやBLOGを読んだりしているわけだが、どうも「プロ」の視点によってしまいがちなのがナヤミである。
すっごく単純なミスをしていたことに気づかされたのは、市場の担当氏のなにげないヒトコト。「○○が一般誌のレストラン紹介で料理写真につかわれてたよ」。これを聞いて、まったくうかつだったと猛省した。そう、グルメガイドとか一般誌というものをほとんど意識していなかったのである。
まったくねぇ、レストランさんのBLOGに目をとおしていて、ナントカという雑誌で紹介されました、なんて書いてあるのを気にもしていなかった。もっとも、産直のお取引先様以外は、どんなお店でまきもの屋の野菜をおつかいくださっているか、そんなに詳細にはキャッチアップできていないし、わかっている範囲だとBLOGなんてやってらっしゃらないお店もあるから、こうなると片端から雑誌等のメディアに目をとおさなくてはならない。僻地住まいの身としては酷である。
そもそもレストランのお客様のニーズというのは、あんまり具体的なものじゃない。つきつめて言えば「おいしいものを快適に食べたい」だけである。問題は、「おいしさと」いうのは文化的コードで規定される、しかし究極的には個人の主観にもとづいたものであること。そこに「消費行動」というのが加わるから厄介なことこのうえない。
真面目な料理人さんは「もっとおいしくなるはず」と日々研究を怠らないという。生産者もおなじである。でまぁ、当然のことながら、万人にとっておいしい、というのは不可能なわけで、誰においしいと感じてもらいたいか、そういうことが問題になってくる。「おいしさ」の基準が自分の味覚だけなんて論外。
自己満足に陥ってはいけない。ブレット(ビエトラ)なんか、主観的にはかなりイイ線いってると思うのだが、いまひとつ売れゆきがのびなかったことを考えるとまだまだ改善の余地がある。なにしろ、こちらの希望価格なんてまるっきり無視の安値がずっと続いたわけで、短気をおこして「もう栽培しない」と言いたくなるような結果だったのである。一部でご評価いただけているだけに、悩ましいところである。もとが地味な野菜なだけに、いろいろムズかしい。
使っていただかないことには、食べてもらえない。それでは永遠にお客様に喜んでいただくことはできない。店をオープンしたのはいいけど、まるっきりお客様が来てくれない状態か。いや、ちょっと違うな。安値でも売ってもらってはいるんだから、そこからなかなかリピートしてもらえない状態か。つまり、お客様に喜んでいただけていないということになる…。




