Archive for December 2009

お客様に喜んでいただくために

またまた抽象的な内容でゴメンナサイ。ヒマってわけじゃないんだが、冬は作業できる時間も短かいし、ハウスにある野菜の生育もとってもゆっくりだから、考えることが抽象的になりがちなのである。思索といえば格好いいだろうけど、そんなに立派なものじゃないか。

さて、飲食店関係者のみなさんが、いちばん大切なことのひとつとお考えの「お客様に喜んでいただく」ということ。これ、食材を提供する側である生産者もまったくおなじ思いなのである。

ただ、野菜の場合、生産者→市場のセリ人→(仲卸さん→)八百屋さん→料理人さん→サーヴィスのひと→お客様という流れがあって、その結果としてお召しあがりいただくことができるわけだから、生産者と食べ手であるお客様とのあいだに幾人ものひとがかかわっている。

昨今はこうした流通プロセスのデメリットばかりが強調されがちである。極端な例だろうが、生産者→食べ手、にしちゃえばいいじゃない、という考えもある。農家レストランってやつですな。ジャンルによってはたしかに面白いと思う。ただ、野菜をつくるプロがかならずしも料理やサーヴィスもプロフェッショナルとはかぎらない。

じゃあ、プロの料理人、サーヴィス人を雇えばいいじゃないか、ということになる。それはたしかにひとつの解である。ただ、その「農家レストラン」で使いきれない野菜はどうなる? そもそもそんなにたくさん栽培しない? それとも、ほかの飲食店や一般消費者に売る? 前者だと本質的には「野菜を自家栽培しているレストラン」ということになる。後者だと、生産者が飲食店を経営することの意味は、アンテナショップ、パイロットショップといった性格を帯びやすいように思う。経営としてはどちらもアリだけど、もしもここで述べたように動機が生産者と食べ手の距離をちぢめることにあるとすると、自己矛盾がでてくる可能性もあるだろう。

いや、中間的な形態もあるな。パサールのポタジェなんかそう。もともとはアルページュで使うための菜園だけど、余剰をほかのレストランに卸しているということだから。パサールの場合は、一流の料理人が生産者を雇っているわけだから、生産者としてはじつはあんまり参考にならない事例なんだけど。

たしかに、農家レストランというのは興味深い。もっとも、成功するには、よっぽど経営センスがあるか、かなりのビッグネームか、どこかの企業とタイアップか、そういった要件は必要だろう。まきもの屋は「やってみたいか」と訊かれるならば「野菜をつくって売るだけでいいや」と答えるだろう。

なので、食べ手に喜んでいただくために、基本は一般的な流通経路、最短でも料理人さんとサーヴィスの人をとおして考えていくことになる。で、料理書や専門誌をせっせと読み、ネットのクチコミやBLOGを読んだりしているわけだが、どうも「プロ」の視点によってしまいがちなのがナヤミである。

すっごく単純なミスをしていたことに気づかされたのは、市場の担当氏のなにげないヒトコト。「○○が一般誌のレストラン紹介で料理写真につかわれてたよ」。これを聞いて、まったくうかつだったと猛省した。そう、グルメガイドとか一般誌というものをほとんど意識していなかったのである。

まったくねぇ、レストランさんのBLOGに目をとおしていて、ナントカという雑誌で紹介されました、なんて書いてあるのを気にもしていなかった。もっとも、産直のお取引先様以外は、どんなお店でまきもの屋の野菜をおつかいくださっているか、そんなに詳細にはキャッチアップできていないし、わかっている範囲だとBLOGなんてやってらっしゃらないお店もあるから、こうなると片端から雑誌等のメディアに目をとおさなくてはならない。僻地住まいの身としては酷である。

そもそもレストランのお客様のニーズというのは、あんまり具体的なものじゃない。つきつめて言えば「おいしいものを快適に食べたい」だけである。問題は、「おいしさと」いうのは文化的コードで規定される、しかし究極的には個人の主観にもとづいたものであること。そこに「消費行動」というのが加わるから厄介なことこのうえない。

真面目な料理人さんは「もっとおいしくなるはず」と日々研究を怠らないという。生産者もおなじである。でまぁ、当然のことながら、万人にとっておいしい、というのは不可能なわけで、誰においしいと感じてもらいたいか、そういうことが問題になってくる。「おいしさ」の基準が自分の味覚だけなんて論外。

自己満足に陥ってはいけない。ブレット(ビエトラ)なんか、主観的にはかなりイイ線いってると思うのだが、いまひとつ売れゆきがのびなかったことを考えるとまだまだ改善の余地がある。なにしろ、こちらの希望価格なんてまるっきり無視の安値がずっと続いたわけで、短気をおこして「もう栽培しない」と言いたくなるような結果だったのである。一部でご評価いただけているだけに、悩ましいところである。もとが地味な野菜なだけに、いろいろムズかしい。

使っていただかないことには、食べてもらえない。それでは永遠にお客様に喜んでいただくことはできない。店をオープンしたのはいいけど、まるっきりお客様が来てくれない状態か。いや、ちょっと違うな。安値でも売ってもらってはいるんだから、そこからなかなかリピートしてもらえない状態か。つまり、お客様に喜んでいただけていないということになる…。

「和魂洋菜」ふたたび

以前におなじテーマで書いたんだが、ちょっと切りくちを変えてふたたび。

複数の料理雑誌をみていて、あいかわらずフランスの料理業界は「日本」に注目して貪欲にとり入れていると感心することしきり。日本人としては、自国の食文化を評価されることはまことに嬉しい。

「和」の要素をフランス料理にとり込むというのは、日本で仕事をなさっているフランス人料理人諸氏もやっておられるようだ。

で、日本の料理人さんを主たる読者としている雑誌でせっせとそういう作品が紹介されているわけである。このところ傾向としてかなりはっきりでてくるようになったと思う。

そのことの是非についてはここでは言わない。ただ、ここまでトレンドがはっきりみえてきたということは、逆に言うと「陳腐化」はまもなく、ということである。で、きっと揺り返しがくる。おきまりの「古典への回帰」かもしれないし、また別のベクトルかもしれない。

まきもの屋はサプライヤーの側だから「陳腐化」なんて言葉をつかうが、「普及」「一般化」と言ったほうがいいのだろう。これは、いっぽうでは「たくさん売れる」ことを意味する。たくさん売れるのはまことに結構なことなのだが、その「売り手」も増えちゃうから、埋没しやすい、ヨソとの差別化を図りにくいということでもある。

野菜についていえば、従来のジャパニーズ・フレンチは「ダイヨウ」があたりまえだったわけで、日本の一般野菜はおなじ品目、たとえばニンジンはニンジンでも、フランスのとはかなり違うのに、日本の五寸ニンジンが当然のような顔をして皿に載っていたわけである。レタスにしたって、バターヘッドじゃなくて日本独特のサニーでしょ?

そもそもが違うものなのに、そこのところを無視して「日本の野菜は味が薄い」なんておきまりの言葉で風土の違いのせいにしたりするのもねぇ。品種と栽培方法でかなりのところまでは迫れるはずなんだけど。

どんなもんでしょう?

言いわけ

前回のエントリがほとんどフランス語になっちゃったことの言いわけ。なにもいまさら 「フランス語ができるんだゾ!」と語学力を誇示したいわけでも、フランスかぶれ全開になっているわけでもない。WEBという公の場だとどうしても読んでほしくないひとの目に触れる可能性があるから。

その「読んでほしくない」ひとというのは、はっきり言ってしまうと、ほかならぬまきもの屋の同業者つまり生産者と、他県の職員さんなどの農業関係者。そりゃ「ショーバイ敵」ですからねぇ。ネットなんかで簡単にコチラの動向をお知らせするわけにもいかんのです。

緩やかに、しかし確実に日本の野菜の生産は壊滅に向かっていて、一般野菜の市況をみているとそれがよくわかる。じっさい、危機感をもって対策を講じている生産者はたくさんおられる。で、そのなかには西洋野菜にシフトする向きもけっこうある。

西洋野菜の生産が種類も量も増えれば、料理人さんにとって、食べ手の皆様にとってもいいことなんだけど、さんざっぱらこのBLOGで書いてきたように、「珍しい野菜」「面白い野菜」「変った野菜」という程度の認識で生産に手をつけちゃう傾向がある。これが困るのである。しかもマーケティングが不十分だったりすると、とんでもないほど大量に生産してマーケットにあふれかえっちゃって価格が暴落。

「この野菜は高値で売れる!」と飛びついてワーっとつくっちゃって、でも安値だと、数年して「儲からないからやーめた」と。こういうことっていろんな品目ですでに繰りかえされてきたことなんだよねぇ。

さいきんで言うとカリフラワー・ロマネスコなんかいい例。もうすぐファーヴェでもおんなじことが起こるはず。複数の筋からの情報だから確度はそれなりにあるだろう。

だいたい、日本の種苗会社の大手1社か、中堅2〜3社から入手できるようになった品目というのは、そこから数年はヤバいと思っている。ついでだから種苗会社の方にも苦言を申しあげると、系統もよくわからないままに外国の品種を持ってきて「選抜」しただけでマーケットに投入しないでいただきたい。それに、種苗会社さんが儲かるほどタネを売っちゃったら、西洋野菜の需要なんて現状ではごくわずかなんだから、相場が荒れちゃってどうにもならなくなる。

まきもの屋のコンセプトは「イタリア、フランスであたりまえの西洋野菜を現地と同等以上の品質で」「庶民的な野菜とガストロノミックなものをバランスよくご提案」であり、目標は「珍しい野菜から、本格フランス料理、イタリア料理のためのワンランク上の野菜へ」。そして中期的なテーマとして「現代フランス野菜の味と香り」というのを掲げている。言葉だけだと凄いでしょ? ただ、「現代フランス野菜の味と香り」なんてブチ上げても反響ゼロだもん。そりゃ口先だけじゃしょうがない。そんなこんなで、なかなかに前途はキビシイのである。

他を圧倒する品質、おいしさ、歩留まりと使い勝手のよさ、安定性、そういったことがしっかり確立していないとどうしても暴落の渦に巻きこまれて経営が立ちゆかなくなる恐れがある。それだけは避けたい。だから、情報の提供先を選ばなければならない。が、WEBという公の場では誰に対しても「アンタは読むな」とは言えない。WEB以外に情報発信の手段を持たない零細ゆえの悩みである。

SAISON 2010

ゴメンナサイ。まきもの屋の野菜をお使用くださっている料理人さんにどうしてもお伝えしなきゃいけない内容なんですが、いまのところ日本語で書きたくないんでご容赦ください。2010年の栽培計画についてなんですが、イタリア料理、スペイン料理、日本料理等の方はメールでお問いあわせいただければ幸いです。流通関係の方は、1月以降に築地の担当氏と詳細な打ちあわせをしますので、そちらにお尋ねください。「おまかせ西洋野菜セット(定期便)」のお取引先様には、近日中にメールでご連絡させていただきます。

En tant que maraîcher, nous avons produit des légumes en plein air mais à partir de l'année 2010 la production sera sous abris froids (c'est-à-dire dans des serres en plastique sans chauffage, qui permettent d'éviter la pluie et la forte gelée et de stabliser la production).

Aussi les exploitations (2ha) seront réduites en 1800m2 de serres et 12a de champs en plein air.

Cependant la quantité de légumes disponibles à Tsukiji ne sera pas réduite parce que la production sous abri permet la plantation plus dense et le cycle plus court.

Pour la saison 2010, nous vous proposons:

  • Mini fenouil (maintenant DISPONIBLE)
  • Mini poireau (à partir du mois de mars
  • Cipollotti (oignons en botte) -- rouges / blancs (à partir du mois de février)
  • Betteraves multicolores (mini et moyenne) -- rouges / blancs / janues / Chioggia / Crapaudine (Mini:à partir de mi-janvier)
  • Blette (à partir du mois de mai)
  • Blettes multicolores (à partir du mois de mai)

Ces produits seront disponibles au marché Tsukiji TOUTES L'ANNEE. Mais nous respecterons les saisons propres pour les légumes ci-dessous.

  • Basilic grec (mai-août)
  • Tomate "Super Marzano" (juillet-octobre)
  • Aubergine "Rotonda bianca sfumata di rosa" (juillet-octobre)
  • Petit pois nouveau (peut se manger cru) (mai-juin)
  • Cime di rapa (Broccoletti) (octobre-février)

Nous recherchons aussi la possibité de production de carottes multicolores (noires, jaune, blanches, violettes, nantaises et en couleur de corail) qui pourraient être disponibles toute l'année...

ATTENTIONS: Haricot beurre, roquette sauvage (rucola selvatica) et chicorée Pan de sucre ne seront disponibles que dans le cadre de PANIER DE LEGUMES DE SAISON (vente en direct, exculsivement en abonnement).

Si vous cherchez d'autres légumes que nous proposons ici, vous pouvez nous contacter par e-mail (en français, italien, anglais et en japonais bien sûr!).

「おソース」のうた

お気にいりのポーリーヌ・クローズ。で、これはどういうわけか我が家では「おソース」のうたということになっていて…。なんでかは ナ・イ・ショ (笑。いい歌でしょ? 歌詞もいいし。そうそう、歌詞はコチラ

ミニ・フヌイユ mini fenouil / ミニ・フェンネル mini fennel

冬だ、寒い、寒いとさんざっぱら書いてきて、なんにも出荷してないと思われちゃっているかもしれないので、ちょっとご宣伝。築地に出荷中の野菜のページをご覧いただけばおわかりのとおり、種類こそ少ないけどちゃんと出荷しております。

で、種類が少ないから必然的に、ただいまのオススメはミニ・フェンネル。フランス産のものが「ミニ・フヌイユ」の名で流通しているから、そっちにあわせたほうがよかったかもしれないと今頃になって商品名についてはちょっと後悔している。もっとも、市場というか流通では「ミニフェン」と呼ばれているから、どっちでもいいのである。

いわゆるフローレンス・フェンネルを細長く仕立てて、やや若どりしたものである。そのままお皿に載せていただけるのがポイント。味については、フルサイズのフェンネルはかなり強い香りと風味だが、ミニのほうはマイルドなのが特徴。

日本ではフェンネルの香りはあんまり強いとよろしくないというのか、マイルドなほうが好まれるようである。たしかに、アニス系の香りってのはむずかしいのかもしれない。

個人的には思いっきり香りのつよいのをバリバリ齧るのが好きなんだけど、世間的には少数派かもしれない。

というわけで、あえてマイルドで甘く優しい香りのミニ・フェンネルである。もちろんハウス栽培なんだが、温度管理がうまくいったのか、冬作としては思いのほか柔く仕上がっているので、食べやすいと思う。まったく加熱しないで生のままでもOKだろう。火入れをする場合は、色を損わないようにごく軽くエチュヴェするなりグリエすればいいだろう。あるいはいま流行の「低温減圧調理」なんかすごくいいはず(機械をもっていないからあくまでも「予測」だけど)。さもなければフュメといっしょに真空にかけて50℃で湯煎とか…。

とにかく魚介類と相性がいい野菜だから、魚介のサラダ仕立てとか、あるいは魚料理のつけあわせとか、いろいろにご使用いただけると思う。よく熟成させた牛肉とも合うので、そちらもぜひお試しいただきたい。

ちなみに、ふつうのフローレンス・フェンネルは株元が「まる」っとしているのが正しい形状。「肥大茎部」という。フランス語だと"bulbe"、イタリア語は"grumolo"。ミニのほうはワザと細長くなるようにつくってある。ようは「仕立て」の問題なんだけど、こういうのも技術のうちである。

種はもちろんフェンネル・シードなわけで、種まきにしろ出荷作業にしろ、ほのかないい香りにつつまれて、ちょっとシアワセな野菜である。上手に調理していただいた新鮮なミニ・フェンネルはきっと、召しあがるひとをちょっとシアワセにしてくれるんじゃないかと期待している。

これまでごくごく少量の出荷で、皆様にはご迷惑をおかけしてしまったので、この冬は「足りなくない」けど多すぎない量を作付けしてある。バンケット対応可能な程度ですな。 築地の「こだわりコーナー」経由でのオーダーをお待ちしております。周年栽培を目標にしているので、ぜひ末永くご利用ください。

ヴァーナリゼーション

写真は11月はじめに無加温ハウスに種まきしたビーツ(キオッジャ)。無加温だからとうぜん暖房はなし。ビニールハウスといえど夜は冷える(氷点下になる)ので、ゆっくりゆっくり成長している。ハイシーズンなら1ヶ月かからないでこれくらいの大きさになるんだから、倍以上の時間がかかっていることになる。

晩秋にビーツの種まきをするなんて、「常識的」には考えられないことである。いや、世間一般の「常識」からすれば、なんでそんなことを言うのかわかならいだろうけど。まぁ、農業というか蔬菜園芸の「常識」である。

植物とくに野菜のような草本のなかには、低温にさらされると「花芽分化」といって、あとで暖かくなったときに花を咲かせるための準備をはじめるものがある(というか、けっこう種類が多い)。これを「ヴァーナリゼーション」という。英語でもフランス語でも"vernalisation"と書くが、フランス語だと「ヴェルナリザシォン」となる。

もとになった"vernal"という形容詞は「春の」という意味である。"Equinoxe vernale"は「春分」のこと。そう、野菜というか植物は寒い冬になると自身は「春」を準備して待ちこがれているわけ。なんだかちょっと文学的ですな。

チーメ・ディ・ラーパのように花芽を食べる野菜だと、これが起きてくれないと困るわけだが、いっぽうで、キャベツとかブレット(ビエトラ)とか、ポワローのような葉茎菜、あるいはビーツやダイコンのような根菜にしても、花芽そのものができちゃうと、つまり「抽苔」しちゃうと商品にならなくなってしまう。

たとえヴァーナリゼーションが起きていたとしても、それは植物の細胞レヴェルのことだから、花芽そのものができなければいいわけで、あの手この手で回避して、ほんとうならできるわけのない時季の野菜をご提供するべく生産者は努めているわけである。あの手この手といっても、温度管理と品種の使いわけがほとんど。あ、肥培管理も重要か。

写真のビーツ(キオッジャ)も見た目にはわからないけど、内部的には確実にヴァーナリゼーションを起こしている。で、これをキャンセルする方法もないわけじゃないんで、ちょっと試しているところである。いや、なに、ただ温度管理に注意を払うだけである。四六時中つきっきりというわけじゃないから、かなり難しいことなんだけど。

そうは言っても、「自然界」ではあり得ないことをするわけで、そういう意味では野菜というのはなんとも人為的なものなのである。いや、そもそも野菜の草を食用に適するように長い歴史のなかで品種改良してきた結果としていまの種類豊富な野菜があるわけで、なにがなんでも「自然」を信奉するんだったら、そのへんの雑草を食べたほうがよっぽど理屈にあっているのである。プルピエ(スベリヒユ)やエルバ・ステッラあるいはルーコラ・セルヴァチカなんか品種改良はそんなにされていないから、雑草みたいなものである。いっぽうで、牧草(緑肥としても用いられる)なんかは見た目には「草」だけどかなり品種改良がすすんでいるものも多い。

野菜の「旬」というのは教科書的に一律というわけじゃなくて、地域、気候でかなりズレが生じるものである。「身土不二」というコトバがあるけど、その土地の風土と食文化というのは本来は密接にむすびついたものなのである。このあたりはなかなかご理解いただけないようで、ましてや外食産業の「季節感」は暦を1ヶ月くらい前倒ししちゃってたりするからタイヘンである。

こちらもショーバイだから、できるかぎりニーズにお応えするよう努めるわけで、まきもの屋の商品ラインナップには「ほぼ周年」というのがけっこうあるわけ。もう季節なんか関係なく「安定供給」するのが責務みたいになっちゃって、「旬」を感じてもらうことなんかなかなかできなくなっている気がする。

もっとも、あの手この手で出荷期間を長くしているわけだから、そのなかで「いちばんおいしい時季」というのはやっぱりあって、それを「旬」というべきなんだろう。それはきっちりとアピールさせていただこうと思う。

ついでだから書いちゃうと、2010年の春以降になるが、料理人さんの「圃場視察」を随時おうけできるようにしたいと考えている。やっぱり生産現場の気候と風土、そこでどんなふうにして栽培しているのか、そういうことを見ていただく機会はあったほうがいいだろうと思う。とくにサーヴィスの方が同行なさる場合は歓迎したい。お客様に素材もふくめた料理の説明をなさるのはサーヴィスの方なんだから、九官鳥みたくシェフの言葉を録音再生すりゃいいってもんじゃないと思うから。

築地経由でまきもの屋の野菜をお知りいただいた場合は、八百屋さん(仲卸さん)→卸のルートでコンタクトをおとりいただくことになります。産直のお取引先様はもちろん直接で結構です。あと、流通業者さんは必ず築地の卸を通してください。いずれにしても1週間以上は余裕をもってアポをおとり願うことになると思います。それから、生産者、他県の職員さんはご遠慮ねがいます。どうかご了承ください。

こんなふうに、寒くなると「春」のことを考えているわけだから、まきもの屋も「ヴァーナリゼーション」しているのかもしれない。

スティックブロッコリはブロッコレッティか?

(写真は10月後半のものです) チーメ・ディ・ラーパもご好評のうちに今季終了となり、ありがとうございました。来期は出荷期間を延ばすべくいろいろ検討中なのであるが、やっぱり最大のライヴァルはスティックブロッコリなのである。

いまさら解説申しあげるまでもないと思うんだが、スティックブロッコリはいわゆるブロッコリと「介藍」(カイラン)を交配してつくられた、ちょっと昔からあるけどいちおう「新野菜」。類似品に、ブロッコリと「菜心」(サイシン)を交配したものもある。後者は食べたことがないのでわからないが、前者はよくよく味わってみるとたしかに中国野菜の風味がする。

さて、チーメ・ディ・ラーパの別名がブロッコレット(broccoletto 複数形がブロッコレッティ broccoletti)なわけだが、スティックブロッコリのことも「ブロッコレッティ」と呼ぼうと思えば不可能ではない。だって、そう謳っている有名料理人さんの作品写真を雑誌でみたから。(まきもの屋はインヴォルティーニというかロートロというか、ようは「長いものには巻かれる性格なんで…、とはいえ、件の雑誌のリチェッタには「菜の花」とあって、でも写真はどう見てもスティックブロッコリ。このテのことはよくあるんだが、どうにかならんのだろうか?)

もともとスティックブロッコリは日本の種苗会社が開発したもので、イタリアにまでマーケットがひろがっているかどうかは知らない。

辞書がいつも正しいとはかぎらないんだが、いちおう辞書の定義をひいておくと

broccoletto: infiorescenza della rapa, colta prima che sboccino i fiori; cima di rapa
broccolo: varietà di cavolo dall'infiorescenza carnosa, di colore verde, simile a quella del cavolfiore, ma più tenera e meno compatta

ついでにブロッコロ(ブロッコリ)の定義もひいておいたが、注意したいのは、リチェッテ・レジォナーリなんかでブロッコロがでてくると、Cavolfiore Romanescoを差していることが多い。そう、いま巷にあふれているといってもいいくらいポピュラーになったカリフラワー・ロマネスコ(「ロマネスク」とか「みなれっと」なんて商品名だったりもするようだが)。

どうでもいいことだが、この「ロマネスコ」を「カリフラワーとブロッコリの交配したもの」なんて毒電波を垂れながしている輩がいて、それがいわゆる「野菜のプロ」だったりするから困ったものである。カリフラワーとブロッコリについては下で書くが、かんたんにいって「カリフラワー・ロマネスコ」はそういうカリフラワーの伝統品種がイタリアにある、それだけで充分でしょ? あの形状は交配によるものじゃなくて、突然変異による形質を固定したもの。わかるかな?

脱線ついてでに、フランス語で"brocoli"(フランス語だとcは1つね)というと、いまは日本語のブロッコリとおなじものを指すが、かつてはカリフラワのなかでも晩生、冬どりのもののことだった。もちろん白である。

つまり、いまわれわれが「ブロッコリ」として理解しているものは、イタリア料理、フランス料理のある程度歴史的な文脈においては、ちょっと不自然というか、わかりにくい存在なのである。すくなくとも伝統的なフランス料理でこの野菜がつかわれることはなかったはず。おなじ言葉でカリフラワーのことを表していた可能性がたかい。

イタリアでも似たようなものである。でも、いわゆるブロッコリはたしかにイタリア起源である。このあたり、ブロッコリの伝統的な品種"Calabrese"の名称がヒントになる。「カラブレーゼ」つまり「カラブリアの」ものなのである。もともとは地方野菜だったはず。

じゃあなんでこんなに一般的というかポピュラーになったのか、カラブリア料理なんて知名度低いじゃん、ということになるが、これじつは、「イタリア料理=スパゲティとピザ」という日本人の認識が形成されたのとおなじ根をもっている。そうUSなのである。

20世紀前半まで、相当数のイタリア人が移民としてアメリカ大陸に渡った。そのほとんどは、イタリア南部のひとたちである。ピランデッロのいくつかの短編を題材にしたタヴィアーニ兄弟の映画『カオス』にもそういうエピソードはでてくるし、あるいはコッポラのあの有名な映画を思いだしてもいいだろう。彼ら移民がUSにもたらしたイタリア南部の郷土料理はとうぜんのことながらアメリカの食文化の一部になるとともに、「イタリア料理」というもののイメージが南部のそれに偏る結果となったわけである。

そんなこんなでアメリカが受容したイタリアの食文化のひとつにいわゆるブロッコリがあるというわけ。で、それがすっかり一般化して、日本やフランスにも広まったのである。このBLOGをお読みくださっている好事家諸賢はご存じのとおり、宅配ピザなんてものはイタリアのピッツァとは似て非なるもの、でもいまやフランスでもあたりまえにある、そういうUS由来の食文化なのである。

ついでに言うと、USではチーメ・ディ・ラーパのことは"broccoli raab"というのが一般的なようである。いわゆるスティックブロッコリはどうかというと、種苗会社によるだろうが、"mini broccoli"としているところもある。

さて、たまには「結論」を書いておきたい。チーメ・ディ・ラーパはブロッコレッティである。スティックブロッコリもブロッコレッティと呼んでさしつかえないかもしれない。が、ブロッコレッティはスティックブロッコリのことではない。できそこないの論理学の命題みたいだが、ご理解いただけるだろうか…。

まきもの屋の野菜については「規格外を安く入手できる可能性」はまったくございません

日経レストラン ONLINEというサイトに、野菜を巡るホントウの話という連載コラムがある。生産者の立場としては「突っ込みどころ満載」なんだが、すっかりオジサンになったせいか、さいきんちょっとはオトナの自覚もでてきたまきもの屋としてはいちいち目くじらをたてるつもりもない。

ないんだけど、小さな店の契約栽培という、ようするに「産直のススメ」みたいな内容の記事があって、これについて、産直をいちおうやっている立場上、ちょっとだけコメントさせていただく。

この記事では「契約栽培のメリット」として6つのポイントをあげている。5つはまぁ、「うんうん、そんな感じでしょうな」という程度なんだが、「市場では規格外とされる野菜を安価で出荷してもらうよう交渉することも可能だ」というところだけは、皆さんご注意いただきたいと思う。

すくなくともまきもの屋は、お取引にあたって、そういうニュアンスを感じられた時点で、お取引をお断わりする方向で考える。これはけっこう大事なポイントである。

じっさい、技術、経営において一定レヴェル以上というとおかしいが、そういうことに意識の高い生産者は似たような傾向があると思う。規格外であろうがなかろうが、B品だろうが何だろうが、出荷にかかる手間はおなじなのである。そして、低品質のものを出荷すれば当然ながら全体の流通量が増えて、規格品、良品もふくめた全体の価格が下落するということもよくわかっているのである。

ちなみに、野菜の「規格」というのは多くのばあい、取引先の要望を反映させつつ農協(地域の「単協」だったり都道府県の「全農」だか「経済連」だったりするが)で決められている。まぁ、どこの産地でも品目がおなじなら似たりよったりということにはなっている。で、まきもの屋の商品のばあいは、たしかに市場の担当氏やM社長と相談はするが、規格を決めるのはまきもの屋じしんである。なにしろ、市場の担当Y氏から「やりやすいようにしていいよ」と いわれることも屡々なのである。

そう、まさしく「俺様ルール」である。まきもの屋の野菜はクオリティの高さがウリだから、それを追究すればキリがないわけで、これはこれでけっこう悩ましいところもあるんだが、オーダーが集中したりすると、規格なんてあってないようなもの状態になるのもまた事実である。

逆にいうと、あんまり売れないときはかなり厳密に「俺様規格」を適用するわけだが、その「規格外」を安くしろというのは、じつは「買いたたき」にほかならないのである。ちょっとわかりにくいだろうか? 売れないときは、とにかく高品質のものを、あの手この手でいろいろご提案しながら売れる方策を探すわけ。そういうタイミングで「規格外を安く売れ」というのは、足許をみているにほかならない。で、そうじゃないタイミングであれば、上に書いたように「規格なんてあってないようなもの」状態なわけだから、安く売れる規格外品なんかそもそも存在しないということである。

ついでに言うと、「余った野菜を安く」というのも、まきもの屋についてはあり得ないことなのでご留意いただきたい。そもそも余らないようにやっているのである。野菜なんておしなべて供給過剰なんだから、生産サイドはむしろ「足りないくらい」を心がけるのがいい。だから、既存のお客様を意識して作付けしているわけで、突然「アレが欲しい、コレをよこせ」って言われても「そもそもアンタの分はないよ」と言いたくなるわけである。

そりゃ原価を抑えたい気持ちはわかる。でも、「安かろう悪かろう」というのもまた事実。買いたたかれりゃ手をぬきたくなるのは人情ってもんでしょう? あるいは、まきもの屋のように、そもそも取引したくないって思うのも自然なことじゃないでしょうかね?

「まかない」は余りものや期限切れの食材をつかうことが多いですよね? で、お客様から、「そういう食材でいいから、安く食べさせろ」って言われたらどう思いますか? っていうか、飲食店経営者としてどういう判断をしますか? 「規格外の野菜を安く売れ」というのはそういうことなんですよ。

というわけで、アドヴァイスというほどのもんじゃないが、生産者と直接取引するばあいは相場とおなじかそれ以上の価格を提示しましょう。安易に「いくらですか?」と聞くもんじゃありません。「この品物ならこれだけ払いますからぜひ取引しましょう」というくらいの気持ちで臨んでくださいな。相場より安く手にいれたいんなら、マメに市場に足をはこんで、安いのをつまんでればいいでしょ? いわゆる「なやみモノ」ってやつですな。あるいは、恒常的に安値のつづいている一般野菜でダイヨウしてりゃいいでしょ? で、そういうふうに考えた時点で「フリダシに戻る」と。

リヨン・タイプのブレット

ガール・ド・リヨンはよく利用したが、リヨン・ペラシュで降りたことは一度もないまきもの屋である(って、こんな冗談だれも笑ってくれないんだろうな…)。

さて、ブレット(ビエトラ)だが、リヨン・タイプというのがある。キャロット・ナンテーズがナントという地名からきているが全国区であるのと同様に、リヨンと名づけられているが、いちおう全国区のはずである。そうはいっても、こういう名称というのはもともとは郷土野菜であったことのしるしである。そう考えると、昨今はリヨン郷土料理とかブションなる業態も日本で人気があるようだから、需要もあるんだろうか?

リヨン・タイプのブレットの特徴は

feuille moyenne, ondulée, vert-blond; carde très large, pouvant atteindre 10cm, épaisse, plate, plutôt courte, d'un blanc très franc et de saveur légèrement acidulée; port assez ouvert(1)

こんなものにご興味をお持ちの方がいるとすれば、現物をよくご存じだろうし、いちいちご説明するまでもないだろうから訳さない。イタリアの種苗会社だが、写真のあるページのリンクだけ張っておく。

種子の入手もふくめて栽培可能なので、もしご興味がおありでしたらご一報ください。

とはいえ、こういうのって、あくまでもスタンダードなブレット(ビエトラ)がポピュラーで、「ウチのはちょっと違いますよ、なんたってリヨン品種なんですから」とお客様にご説明できるような状況じゃないと難しいか…。なにしろフツーのというか、より一般的な"blette verte à carde blanche (bieta verde a costa larga argentata)"で、「ウチのはヨーロッパ・タイプですから」とご説明するのがせいぜいじゃ…。フランス料理、イタリア料理じゃ、ごくごく基本的でしかも応用範囲のひろい、おいしい野菜なんだけどなぁ…。

ちなみに、今季は露地栽培のみのため終了、来シーズンは5月ごろからスタートの予定です。

  • 注1) Cl.Chaux et al., PRODUCTIONS LEGUMIERES、 Technique et Documentation - Lavoisier, 1994, t.2, p.259.

チポロット、カイエンヌ、塩漬にしたイノシシのバラ肉のスパゲッティ

ひさしぶりのお料理BLOG、しかもパスタディナー! 「突っこみどころ満載」というヤツでしょうな。タイトルの通りなんで、あまり申しあげることもない。「塩漬にしたイノシシのバラ肉」というもってまわった表現なのは「パンチェッタ」を名乗るほどよくできたものじゃない、ただの塩漬けだから。

いちおう、チポロットが主役である。こういう調理だと「やっぱり香りのモノだねぇ」と思う。いや、単独だと甘みもけっこうなものだし、「タダのタマネギじゃない」とつくった本人は思っている。

じっさいのところどうなんだろう? いわゆる「オニオンヌーボー」を食べたことはないんだが、どの程度ちがうんだろうか? そりゃ、まきもの屋のチポロットはイタリア品種だけど、そもそもチポロットってこういうものでしょ? チポロット・ノチェリーノDOPは規定がきびしいんだけど、そうじゃないチポロットは見た目は九条ネギみたいなのもけっこうあって、US系の品種をつかっていることも多いようだ。

まきもの屋のチポロットはイタリア、フランスで葉つき小タマネギ用にもちいられている品種である。イタリアとフランスの両方というのが決め手である。なにしろ産直のお取引先様も築地経由でご利用くださっているレストラン、ホテル様も圧倒的にフランス料理が多いんだから。

そう、名前は「チポロット」とイタリアものになっているけど、じっさいはフランス料理でのご使用も念頭においた品種選定、仕立てにしているわけ。

で、イタリア料理におくわしい方であればきっと「?」とお思いになられる「チポロット・ロッソ」。イタリアじゃぁ、フィレンツェにしろトロペーアにしろ若どり、小玉仕立ての葉つきのものはあたりまえにあるけど、あんまり「チポロット」とは言わない。タマネギはタマネギだから。あえて言うときはフィレンツェとかトロペーアと言う。

そんなことは百も承知での「チポロット・ロッソ」という商品名である。ふつう赤タマネギって、トロペーア、フィレンツェみたいな特徴のはっきりしたものは別として、だいたいは生食がメインでしょ? そこにあえて、加熱も生食も、といういわゆるチポロットの使いかたを赤の品種でという、まことにもってオリジナルなご提案なのである。

調理法を念頭に置いているから、どうしても品種は制限されるところがあって、赤のつよいものが採用できなかったのは残念なところ。いい品種がみつかればそれに乗りかえるけど。

そんなチポロット・ロッソ、1月後半か2月からの再開にむけてハウスで着々と生育しております。もう宣言しちゃいましょう! そこからは「周年」でやります! ご期待ください。あ、ビアンコというかふつうのチポロットですが、オニオンヌーボーとの関係もありますんで、冬期はあんまりやらない予定ですが、「オニオンヌーボーじゃなくてチポロットがいい」という声があればこちらもきっちりやらせていただきますんで、フィードバックよろしくお願いしますね。