馬を水辺に連れていく事はできるが、馬に水を飲ませる事はできない
"You can lead a horse to water, but you can’t make it drink."ですな。 ほんと、西洋野菜をプロの料理人さんに使っていただくってのはムズかしいことなんです。
理由はいろいろ考えられるんですけど、ここでは書きません。みなさん激怒なさるにきまってますから。
生産者サイドにある原因は書くべきでしょうね。ひとつめ、味と品質。ふたつめ、供給安定性。
2004年とちょっと古い統計データですけど、西洋料理店ってのは全国に28,877事業所あるんですよ。かりにそのすべての事業所で1日あたり10,000円分の西洋野菜をつかったとして、年間1,000億円いかないんですよ。個人店でそんなに野菜をつかうなんてことはまずあり得ませんから、ものすごーく多めに見積った数字です。マーケットじたいのポテンシャルがそもそも低いんです。しかも、じっさいのマーケット規模はおそらくその10分の1以下です。いや、100分の1かもしれません。
どういうことかと申しますと、怒らないでくださいね、たとえばニース風サラダでもリヨン風サラダでもいいんですけど、フレンチのお店で注文すると、かなりの確率でサニーレタスがつかわれていると思います。リヨン風ですと葉野菜はシコレ・フリゼがスタンダードですよね。で、シコレ・フリゼも"très fine maraîchère"と呼ばれる葉の極細タイプがフツーだと思うんですよね。ただ、これが絶対要件というわけでもないでしょうから、フランスでもバターヘッドかリーフレタスを使うことはあるはずですし、もちろん他の葉野菜をつかってもいいんでしょうけど。
いちおう、コレを書くためにGoogleとYahooの画像検索をかけてみたんですけど、日本では、まぁおおむねサニーみたいですね。たまーにシコレ・フリゼをつかっている画像があっても、ソースをみたらリヨン旅行の記事だったりします。で、ご注意いただきたいんですが、サニーレタスはUS系のリーフレタスをもとに日本で育種した、日本独自のものなんです(1)。
そう、あのサニーです。生産者の立場で言うと、出荷すればするほど赤字になる恐怖の野菜です。それだけ安値になりやすいんですよ。じっさい、末端の小売価格もお安いですよね。かつてサニーを出荷してほんとうにヒドい目に何度もあったので、正直なところこの野菜が大嫌いです。
って言うかですね、リヨン風サラダの画像検索ですと、いわゆる「エンダイブ」さえ少数派だったりするんですよね。ちょっと混じってるくらいかなぁ。
で、ですね、リヨン風サラダはいま流行の人気料理だけど、これにつかわれる極細タイプのシコレ・フリゼの国内生産は極端に少ない。だからこれを生産すれば売れるだろう。なーんて考えても、かなり慎重にやらないと商売としては大損します。売れることは売れるでしょう。高値がつく場合もあるでしょう。でも、思ったほど売れないはずです。採算とれるだけの量が売れない理由は経験的に知っておりますが書きません。書くとみなさん激怒なさるにきまってますから。
そんなわけで、極細タイプのシコレ・フリゼは栽培難易度の高さと生産コストを考えたら、とてもじゃないけど割にあいません。
ちなみに、まきもの屋では今シーズン、このシコレ・フリゼは気がむいたときに産直限定でやります。水辺に水がないんじゃおはなしになりませんからねぇ。ところで、リヨン風サラダの人気ってまだしばらく続くんでしょうかね?
- 注1) たしかに似たものはヨーロッパにあるんですけど、やっぱり違いますし、レタスというとバターヘッド(laitue pommée)が主流ですよね。ロメインとかオークリーフとかバタヴィア(batavia = 英語だとfrench summer crisp type)とか、いろいろありますけど。




