Archive for January 2010

馬を水辺に連れていく事はできるが、馬に水を飲ませる事はできない

"You can lead a horse to water, but you can’t make it drink."ですな。 ほんと、西洋野菜をプロの料理人さんに使っていただくってのはムズかしいことなんです。

理由はいろいろ考えられるんですけど、ここでは書きません。みなさん激怒なさるにきまってますから。

生産者サイドにある原因は書くべきでしょうね。ひとつめ、味と品質。ふたつめ、供給安定性。

2004年とちょっと古い統計データですけど、西洋料理店ってのは全国に28,877事業所あるんですよ。かりにそのすべての事業所で1日あたり10,000円分の西洋野菜をつかったとして、年間1,000億円いかないんですよ。個人店でそんなに野菜をつかうなんてことはまずあり得ませんから、ものすごーく多めに見積った数字です。マーケットじたいのポテンシャルがそもそも低いんです。しかも、じっさいのマーケット規模はおそらくその10分の1以下です。いや、100分の1かもしれません。

どういうことかと申しますと、怒らないでくださいね、たとえばニース風サラダでもリヨン風サラダでもいいんですけど、フレンチのお店で注文すると、かなりの確率でサニーレタスがつかわれていると思います。リヨン風ですと葉野菜はシコレ・フリゼがスタンダードですよね。で、シコレ・フリゼも"très fine maraîchère"と呼ばれる葉の極細タイプがフツーだと思うんですよね。ただ、これが絶対要件というわけでもないでしょうから、フランスでもバターヘッドかリーフレタスを使うことはあるはずですし、もちろん他の葉野菜をつかってもいいんでしょうけど。

いちおう、コレを書くためにGoogleとYahooの画像検索をかけてみたんですけど、日本では、まぁおおむねサニーみたいですね。たまーにシコレ・フリゼをつかっている画像があっても、ソースをみたらリヨン旅行の記事だったりします。で、ご注意いただきたいんですが、サニーレタスはUS系のリーフレタスをもとに日本で育種した、日本独自のものなんです(1)

そう、あのサニーです。生産者の立場で言うと、出荷すればするほど赤字になる恐怖の野菜です。それだけ安値になりやすいんですよ。じっさい、末端の小売価格もお安いですよね。かつてサニーを出荷してほんとうにヒドい目に何度もあったので、正直なところこの野菜が大嫌いです。

って言うかですね、リヨン風サラダの画像検索ですと、いわゆる「エンダイブ」さえ少数派だったりするんですよね。ちょっと混じってるくらいかなぁ。

で、ですね、リヨン風サラダはいま流行の人気料理だけど、これにつかわれる極細タイプのシコレ・フリゼの国内生産は極端に少ない。だからこれを生産すれば売れるだろう。なーんて考えても、かなり慎重にやらないと商売としては大損します。売れることは売れるでしょう。高値がつく場合もあるでしょう。でも、思ったほど売れないはずです。採算とれるだけの量が売れない理由は経験的に知っておりますが書きません。書くとみなさん激怒なさるにきまってますから。

そんなわけで、極細タイプのシコレ・フリゼは栽培難易度の高さと生産コストを考えたら、とてもじゃないけど割にあいません。

ちなみに、まきもの屋では今シーズン、このシコレ・フリゼは気がむいたときに産直限定でやります。水辺に水がないんじゃおはなしになりませんからねぇ。ところで、リヨン風サラダの人気ってまだしばらく続くんでしょうかね?

  • 注1) たしかに似たものはヨーロッパにあるんですけど、やっぱり違いますし、レタスというとバターヘッド(laitue pommée)が主流ですよね。ロメインとかオークリーフとかバタヴィア(batavia = 英語だとfrench summer crisp type)とか、いろいろありますけど。

WEBで哀悼の意を示すことが失礼にならなければいいんですが…

大木健二、(株)大祐取締役会長の訃報に、心から哀悼の意を表します。

氏は西洋野菜の日本への紹介と普及に多大な業績をあげられました。

(株)大祐様と直接の取引関係にありませんので、この文章がご迷惑にならないといいのですが…。ただ、氏の偉大な業績をたたえ、哀悼の意を表したく存じます。

将を射んと欲すればまず馬を射よ(フェンネル編)

フェンネル、フィノッキオ、フヌイユ、まぁ、おんなじモンですな。で、まきもの屋の商品としてはミニ・フェンネルを市場に出荷しておりますし、季節によってはフルサイズのほうもいまのところ産直限定でやらせていただいております。

この野菜、フルサイズのほうですと、根元のところ、「肥大茎部」って言うんですが、これが白くて「まる」っとしたのがいいんです。写真をさがしだすのが面倒なんで、イタリアの種苗会社のページのリンクを貼っておきます。

この白くて「まる」っとしたのって、じつはオートマチックにできちゃうんです。土寄せなんていりません。って言うか、土寄せしちゃうと、砂が入りこんじゃって商品価値が落ちちゃいますがな。「ほんとうは軟白してるんでしょ? でないと白くならないよね」、そんなふうに考えている時期が僕にもありました…。

そう、品種が適切だったら、けっこうな良品はできるんです。まぁ、育苗、施肥、水分、株間、温度管理etc. 栽培にあたってはそれなりの難しさもあるんですけど、それが仕事ですから、グチをこぼすようなもんじゃございません。

で、とりあえず商品として考えたときに、はっきり申しあげてライヴァルは「輸入品」です。白くて「まる」っとしていて大きいんです。これと同等以上のクオリティじゃないと勝負になりません。

このお野菜、デパ地下とか高級スーパーだと見かけることがあるかもしれません。じつのところ昔から細々とながら流通しておりまして、国産もございます。夏の長野産とか冬の岡山産が有名ですな。

で、流通しているし国産もあるんだけど、イマイチ無名感もあるんですよね。じつはコレ、はっきりした理由があります。

フェンネルって香りがつよいんです。和名ウイキョウ、漢方薬の原料にもなりますよね。で、その強い香りを嫌うひとがけっこういらっしゃるんです。好みは十人十色ですからねぇ。まきもの屋も香菜(シャンツァイ、コリアンダーの葉)がどうにも苦手でして、そういうモンですね。ただ、フェンネルをお好きじゃないという方は確率的にはグリンピースをお嫌いなひととおなじくらいいるような気がしています。あくまでも印象ですけど。

いい香りだと思うんですけど、それを連呼するだけじゃ販売につながりません。さてどうするか。

もちろんプロの料理人さんのハートをわしづかみにしちゃえばいいんですよ。「将を射んと欲すればまず馬を射よ」ってワケです。もちろん「将」は食べ手ですから。そういうことを言うと料理人さんは「馬」ってことになっちゃいますけど、まぁ、細かいところは気にしないでくださいな。

さて、フルサイズのフェンネルですけど、肥大茎部の重さが500グラムくらいになります。早生品種だと2〜300グラムですね。「おひとりさま」にはいくらなんでも大きすぎますし、なにしろ香りが強いですから、少量でじゅうぶんだったりします。

さて、困った。こういう野菜ってのは量をつかってもらわないと、生産者としては商売あがったりなんですよね。

どうするかって、香りの強さと大きさを抑えちゃう、ミニ・フェンネルというのがひとつの解になります。

むかしから輸入されている商品でして、じつはめずらしいものでもなんでもありません。が、栽培方法なんてどこにも資料がございませんから、超絶技巧が必要です。いえ、ほんとうのところは、いちどわかっちゃったらそんなに難しいわけじゃなくて、数値の微調整が必要なだけなんですけど、ゼロから試行錯誤しなきゃなりません。コレ、仕上り寸法の理想値ってのが決まってるんですよ。それにうまく合せていくのが難しいんです。

ミニ・フェンネルはフルサイズのものとちがって、そんなに白くなりません。やや緑がのこりやすいですね。これは品種にあんまり関係ないです。そのかわり、香りと味がマイルドで、フルサイズのものは「バリ」っとして食感ですけど、それとくらべると「パリ」っとした感じでしょうか。食べやすいです。

ただ、ミニ・フェンネルには生産者からみて重大な欠点があるんです。大きかろうと小さかろうと1株は1株、つまり、高コスト体質な野菜なんですよ。なので、どうしてもガストロノミックな方向でしかアプローチできないんです。ほんと高コストで涙がでそうです。捨て値で売られようものなら、新幹線で築地まで行って担当のセリ人を小一時間問いつめたいくらいですがな。もちろん、担当のセリ人氏はとても有能な方なので、そういうことはあり得ないんですけど。

「貧乏人は香りのキツいフルサイズを喰ってろってか!?」とおっしゃられると返すコトバもございません。って言うか、そのとおりでさえありません。フルサイズのものだってそんなにお安くは生産できないんですけど。

「将を射んと欲すればまず馬を射よ」なんてエラそうなことを言っておきながらこの体たらくです。が、プロの料理人さん、それも自称、他称を問わずシェフでいらっしゃるのならば、下の写真をご覧になって創造力を刺激されないはずがございません。ミニ・フェンネル1本そのままでも、あるいはバラしてもOK。メイン用の28cmとか30cmのプレート皿でおじゃまにならないよう26cmでカットしてあります。肥大茎部の長さはフランス産の規格よりはおおむね長いものとなっております。

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どうです、「射」られちゃいましたか?

シーズン2010の産直分の栽培計画表を作成していないことについて

市場出荷分についてはあるんですよ。思うところあっていまは日本語を消しちゃってますけど、栽培品目のページに アップしてあります。

産直の「おまかせ西洋野菜セット」のほうは、まだなんです。って言うか、たぶんキチっとしたリストはつくらないと思います。

露地栽培から雨よけハウス中心に切りかえる関係もあるんですけど、ある程度は自由度をのこしておきたいのと、面積の計算があんまりにも複雑で、「やってみなきゃわかんない」というようなところもあります。技術的に可能か不可能かという問題じゃなくて、物理的に「場所が足りなくなるかもしれない」という事情なんです。

ほかにもちょっと悩ましいことがありまして、夏の果菜のうちで、コルニションとかアリコ・ブールなんかは毎日収穫しなきゃなりません。が、定期便はもともと火曜発送だけだったこともあって、現状では週のはじめにみなさん集中しちゃっているんです。このふたつは市場出荷しないって決めちゃったもんですから、週の後半の収穫分が現状だとまるまるロスになっちゃう可能性もあるんです。

今シーズンお取引先が増えるかどうか、結果としてどういう発送日の配分になるかはまだわからないんで、うかつに「○曜日でお願いします」なんて言えないんですよね。それに、みなさん、それぞれにご都合というのもありますから。

だから、いまの時点ではなんともあいまいな感じにしちゃっているんです。もちろん、リクエストいただいているんで、栽培はするんですけど、事前にリクエストいただいたお店の分だけにするか、そのへんがまだはっきりしていない感じですね。

とはいえ、昨シーズンとそんなに変わるところはないんで、産直「おまかせ西洋野菜セット」にどんな野菜がはいるのかお知りになりたい方は、「最新情報」のページのちょっと古いところをご覧いただけたらと思います。昨シーズンの途中まではほぼ毎週リストをアップしていましたんで。

そんなこんなで、市場に出荷する品目はべつにすると、「オーダーメイド」的な性格をもたせていきたいという考えがあります。ごく小規模なんでそのほうが何かといいと思うんですよね。あ、ムリなものはムリなんで、いつでも何でもOKというわけにはまいりません。そのあたりは応相談って感じでお願いしたいと思います。

ボルドーのジレンマ

ワインの話ではございません。防除のことです。

農薬にボルドー液というのがあります。殺菌剤です。厳密には生石灰と硫酸銅を調合したものですが、それ以外の無機銅剤も一般的に「ボルドー」と呼ばれています。

歴史は古くて、19世紀後半にボルドー大学の先生が開発したといわれています。そのへんのはなしはWikipediaでもご覧になってください。

殺菌剤としての原理は銅イオンの殺菌効果によるものでして、台所の三角コーナーとかで銅でできたのがありますよね、ぬめりにくいという、それとおんなじ原理です。

そんなに強力な殺菌効果は期待できないんですが、銅じたいは食品残留基準からも除外されている物質ですし、有機JASにしろUSのOrganicにしろヨーロッパのBIOにしろ、使用がみとめられているスグれものなんです。さらにスゴいことに、植物を「締める」といいますか、徒長を抑制していいかんじに仕上げられるという副次的な効果もあります。

さて、この素晴しいボルドーですが、大きな欠点があります。銅化合物だからとっても青いんです。さらに、製品として売られている無機銅剤は銅がイオン化するスピードを調整するために炭酸カルシウムを混ぜてつかいます。食品添加物としてもつかわれているものですが、これがはげしく白いんです。どちらも散布後に思いっきり「薬痕」がのこります。

おなじ殺菌剤でも、たとえばイプロジオンとかオキソリニック酸なんかは思いっきり化学合成農薬ですけど、ボルドーにくらべると薬痕はほとんどのこりません。

みなさん、どっちがいいですか? どっちもイヤなんておっしゃらないでくださいね。理由はつぎのとおり。

植物の病気というのは大ざっぱにいってカビとバクテリアによる腐敗です。人間でも動物でもそういう病気はありますよね。真菌性の皮膚病とか、大腸菌やブドウ球菌による病気とか。似たようなものなんですけど、そういうカビやバクテリアに冒された野菜ってのは、食べものとしては不適格ですよね。パン屋さんでカビの生えたパンをもし売っていたとしたら問題でしょう?肉屋さんで腐った牛肉を売っていたら大騒ぎになりますよね。野菜もおんなじですよね。

カビにしろバクテリアにしろ、発症していなければまず肉眼ではわかりません。が、菌ってヤツは葉などにとりついて収穫後もせっせと増殖するんですよ。有名なのがレタスの腐敗病。収穫のときはなんともない、健康なレタスだったのに、翌日市場に届いて箱をあけたらドロドロに溶けちゃっていたりするヤツです。一見健康にみえても、目にみえないシュードモナスという細菌が葉の表面やらいたるところでせっせと増殖しつづけていて、ある一定の菌密度を越えると一気に発病しちゃうんです。これを防ぐには、とにかくレタスの葉表面の菌密度を下げるしかありません。肉眼じゃわからないから、殺菌剤で予防するしかないんですよ。

それでも殺菌剤はイヤですか? 防除しないってことは、いま書いたように、それなりのリスクをお客さんに要求する行為なんですけど。

なんか、ワインのSO2(二酸化硫黄=水と結びついて亜硫酸塩)問題と似ているような気がします。これをつかわないと酸化はするは雑菌は増殖するはと大変なことになるリスクがあるのに、これを嫌って「無添加」のほうがいいとおっしゃる方々がいらっしゃるわけですよね。これを使わずに品質、味を保証できるんであればそれにこしたことはないんでしょうけど、現実にはなかなかそうはなっていないらしいですよね。つまり、使わないことによるリスクをお客さんに、言葉は悪いですけど、押しつけちゃっているようなもんじゃないでしょうか? お客さんがそれでいいとおっしゃるならまったく問題ないんですけどね。

防除が好きな生産者ってのはそうはいないと思います。面倒だし大変だし経費はかかるし…。やりたくないんですよ。カビてようが腐ってようが虫がいようがかまわないとおっしゃってくださって、ちゃんとコストに見合った値段で買ってくださるなら、防除なんて しませんよ。誰がしますか、そんなもの。

でも現実には防除しないと売るものが減っちゃうわけですから、しょうがなくやるんです。農薬嫌いの方が多いんで、なるべくマイルドな、ボルドーみたいな「有機JASでもOK」みたいなもののほうがいいと思うんですけど、上に書いたように薬痕の問題があるんですよね。たんなる鉱物の微粉末だから水で洗えばバッチリ落ちちゃうんですけど。

そう、水で落ちるということは、雨が降ればいいわけで、露地栽培ならそんなに問題にはなりません。が、雨よけハウスだともちろん雨は降らないわけですから、1ヶ月たってもしっかり薬痕がのこっていたりします。

もっともマイルドですぐれた農薬のひとつが、見た目にはもっとも「農薬らしい」インパクトがある。ジレンマですよねぇ。

ついでにちょっとスゴいことお教えしちゃいましょう。きちんと殺菌剤で防除していないキャベツ畑、掃除していない風呂場みたいな臭いがただようんですよ。風呂用洗剤の原液をぶちまけてデッキブラシでこすりたくなるような…。おわかりになりますかね? キャベツは株元というか外葉と球のあいだに水がたまるので、球尻がヌメっていたりします。かつて有機、無農薬系の業者さんにキャベツを納めていたからよーく知ってます。まぁ、このヌメりは基本的には悪さをしないし、乾けばわからなくなっちゃう程度のものなんで、気にすることはないと思いますけど、殺菌剤をつかっていないキャベツの外側数枚の葉はよーく洗ったほうがいいでしょうね。そのまま食べちゃうのは風呂場を舐めてそうじするようなものでしょうから。

もういちど言う、カリフラワー・ロマネスコはブロッコリとカリフラワの交配種ではない、と!

いえ、ようするにそういうことなんです。まえに何度も書いたんですけど、アクセスもろくにないサイトなんで影響力なんか皆無ですし、いまだにそういう電波をひろっちゃっている方もいらっしゃるようですんで。

ただ、不安になっちゃうんですよ。いま日本で流通しているカリフラワー・ロマネスコの品種は国内で育種されたものが多いようなんで、ほんとにブロッコリを交配しちゃってるのかもしれません。ふつうは育種のプロセスというのは企業秘密になっているんですよね。だからほんとうのところはわかりません。生産者サイドとしてはもとになった系統もふくめて育種過程がわかったほうが栽培しやすいんですけどね。かつてのレタスなんかそのへんはかなりオープンだったんですけど、いまどきはPVP(品種登録制度)登録品種でも「自社所有の系統」なんて書かれちゃって、何がなんだかさっぱりわからなくなっちゃってます。

でも、あえて申しあげますけど、本来のカリフラワー・ロマネスコつまり"cavolfiore romanesco"はブロッコリとカリフラワの交配種ではありません。れっきとしたカリフラワーなんです。それを時代、地域によってはカリフラワーといったりブロッコリと呼んだり、いろいろだったのが中途半端な知識しかない連中が勝手に誤解して珍説を展開しているんだと思います。

ブリーダーさん、種苗の営業さん、生産者さん、八百屋さん、使い手さん、西洋野菜をあつかわれるんであれば、相応の外国語力、知識は必要ですよね。

生産者さん、輸入種子の袋に貼りつけてある怪しげな翻訳文体のいいかげんな説明文で納得しないでくださいね。お客さんに説明する ためには、きちんとウラをとってくださいな。それが面倒であれば「一般野菜」だけでいいじゃないですか。

そうそう、いろいろ写真で拝見するかぎり、いまどきのカリフラワー・ロマネスコ、色がまちがっていますね。これはカメラの問題か育種の問題だと思いますけど。

まぁ、カリフラワー・ロマネスコは栽培していないまきもの屋が申しあげることでもないんですが。

でも、嘘はいけません。たとえそのつもりがなくとも、事実とちがうことを言っちゃいけません。「知らなかった」は言い訳にもならないんですよ。知らないものに手をだすべきじゃないんです。

下仁田葱は西洋料理の素材として適切か?

雑誌やWEBでよく見かけるんですよね。こんだけポワロー(リーキ)の国内生産も増えたというのに、下仁田葱をつかったお料理がいっこうに減らないみたいですね。

いえ、下仁田葱がいけないというんじゃございません。ロジックとして、ポワローの「ダイヨウ」なのか、ポワローとはまったく別の「エキゾティック」な素材の位置づけなのか、そのへんがよくわからないんです。

ダイヨウだとすると、いま出回っているポワローの品質、味の問題なんでしょうか? 下仁田葱のほうがよっぽどおいしい、ということなんでしょうか?

どなたか教えてくださいな。気になってしょうがありません。

ネットで情報発信するのはマイナスにしかならない?

WEBというのは天下の往来みたいなところがありますから、何でもかんでも書けるわけじゃないんですよね。おのずと限界はあります。その一方で、まきもの屋のサイトなんか、日々のアクセスもたいした数じゃありませんし、情報発信しても効果なんてタカが知れていたりもします。

で、このBLOGなんてムダに難解だったりするんで、たまにコメントいただいても、あんまりご理解いただけていないんだなぁ、って感じることもあります。いえ、わかってほしけりゃ、わかってもらうよう努めるのがスジってもんです。このBLOGについてはそれをあえて怠っているだけなんです。

某高名生産者氏のBLOGを拝見していると、経営戦略とか生産状況といいますか、いろんなことが手にとるようにわかっちゃいます。いま、氏は畑仕事なさってらっしゃらないんですよね、そういうことがアッケラカンと書いてあったりするんです。手広く経営なさっておられる社長さんはみんなそうだと思いますが、何からなにまで自分でできるわけじゃない、農業生産法人の経営者、社長さんであればかなりの部分をスタッフにゆだねていかなきゃならない。あたりまえのことなんですけど、お客さんはそのことをどれくらい受けいれてくださるんでしょう? なにしろ氏のキャラクタといいますか、氏のお名前で売ってきたわけですからねぇ。

スタッフの入れかわりがはげしいこととか、現在いらっしゃるスタッフの技能レヴェルとか、そういうところだってわかっちゃうんですよね。

途方もない金額の原資をあっというまに使い果しちゃったことで有名な業者さんもサイトでけっこうな情報発信をなさっているんですが、結局のところ市場外流通業者さん兼、飲食店経営プラス貸し農園だけで、肝心の生産が頓挫しちゃったまんまだとか、思いっきり素人集団なこととか、そういうのがわかっちゃうんですよね。

こちらさんもスタッフの入れかわりがはげしいようで、まぁ、そのへんは従業員の待遇といいますか、ありていに言って給与面の問題とか、会社の将来性とか、そういうことにも関係してるんでしょうけど、おふたりの社長さん、おそらく目を三角にしてスタッフを怒鳴りつけちゃってるんでしょうね。気のよわい子だと人格を否定されたと受けとりかねないような…。

いえ、そういうことの批判をしたいわけじゃないんです。読み手がそう思っちゃうっていうことは、WEBで情報発信をすることがマイナスにしか働いていないんじゃないかということなんです。以って他山の石とすべきなんでしょうね。

そんなことを考えると、雑誌みたいなある意味レガシーなメディアというのを見直す必要はありますよね。だいたい、ほんとうに有用な情報はロハじゃこまるんですよ、手に入れる側としても。情報の信頼性がWEBじゃどうしても担保されていなかったりしますから。

ただ、雑誌なんかの場合ですと、ライターさん、編集さんの資質、編集方針その他もろもろで、どの程度正確に伝えていただけるか、そういう不安はのこっちゃいますよね。じぶんで原稿を書けばいいだけのことなんですけど、そうなると商用のメディアに載せてもらえるにはそれなりの知名度がないといけなかったりします。だいたい、西洋野菜にかんする情報なんて、どの程度メディアにのせる意義があるのか、そのへんはこちらの判断じゃないですから。で、WEBをつかうしかない、と。ニワトリが先かタマゴが先か、そういう感じですよね。

受注生産のご案内

サイトの目立たないところをこちゃこちゃいじっておりまして、そんななかに予約栽培・オーダーメイドのページがあります。

築地に出荷している野菜でも基本的に小ロットでの生産となっておりますため、時として「足りない」とおっしゃられるんですが、植えてある以上の量を出荷することはできませんので、そうならないためにも、ぜひとも事前に数量、時期をふくめてご予約いただくことをおすすめします。

また、ミニ・サヴォイのエントリでも書きましたが、いくつかの品目については、原則として受注生産の形態をとらせていただこうと考えております。

これは、築地経由の流通ルートであっても、産直であっても同様です。築地経由の場合は、仲卸さん→卸の担当→まきもの屋、という正規の経路でのみおうけします。産直のほうは「セット」だけですので、「定期便」のお取引先様からは「リクエスト」のかたちでおうけいたします。スポットのお客様については、申しわけありませんが、対応できないと思いますのでご容赦ください。

オーダーから納品までの期間ですが、品目、時季によって異なります。最短でベビーリーフ、ラディ・ミュルティコロールとミニチャードの7、8週間、サヴォイ(フルサイズ)は5ヶ月、ミニ・サヴォイは4ヶ月以上かかります。シコレ・フリゼ、スカローラも4ヶ月以上見込んでください。

マルチカラー・キャロットについて

(写真は2009年11月のものです) かなり安易な発想の商品なんで、じっさいにモノができてくるまでは伏せておくつもりだったんですが、昨シーズンに試作は済んでいますし、事前公表しちゃいます。

「マルチカラー・キャロット」はシリーズ名になります。「ド」がないって? うん、そうなんです。あってもなくてもいいんですよ、たんに語呂というか響きの問題ですね。それはさておき、個別のラインナップはぜんぶで6色。

  • キャロット・ノワール Carotte noire (黒)
  • キャロット・ブランシュ Carotte blanche (白)
  • キャロット・ジョーヌ Carotte jaune (黄)
  • キャロット・ヴィオレット Carotte violette (紫)
  • キャロット・コライユ Carotte en couleur de corail (珊瑚色)
  • キャロット・ナンテーズ Carotte nantaise (オレンジ)

ポイントは、ナンテーズ以外はぜんぶおなじ系統の品種で揃えていることです。無理矢理「金時」とか「金美」をつっこんで色数をふやすことはしません。ただ色数があればいいってもんじゃないんですよ。ナンテーズは以前にこのBLOGで書きましたが、フランスで一般的な系統で、比較的近年に育種されたものを用いています。いずれも「生食」適性の高い品種を選んでおります。

産直の「セット」だけではなく、築地市場への出荷を予定しております。なので、長期出荷、「ほぼ周年」を目論んでおります。パイプハウスの準備がととのい次第、播種をはじめるので、スタートは6月末か7月になる見込みです。ご期待ください。

ミニ・サヴォイについて考えてみる

写真は1ヶ月ほどまえに収穫して保存しておいたミニ・サヴォイ。保存方法がよければかなり日持ちします。あ、これウチの冬の貴重な食糧なんで、売れなんておっしゃらないでくださいね。ちょっとしかないんで。

サヴォイ・キャベツ、だいぶ日本でもポピュラーになってまいりまして、とってもお求めやすい価格になっているんじゃないかと思います。なにしろ、まきもの屋では販売価格がコスト割れになる可能性がかなり高まってきたんで、市場出荷からは撤退することにしたくらいなんです。

フルサイズのサヴォイってのは、とにかく場所を喰います。おなじ面積だとふつうのキャベツの半分くらいしか植えられません。しかも生育期間が長い。どんなに早くても1.5倍から2倍はかかります。本質的にキャベツだから虫を呼ぶんで、防除は欠かせません。肥料もたくさん必要です。そんなこんなで、ふつうのキャベツの3倍くらいのコストですから、そりゃもうタイヘンです。

で、去年の秋冬にミニサイズの試作をやってみたわけなんです。産直の定期便にお入れさせていただいたんですが、じつのところ反響はイマイチでしたorz... 使いにくい素材なんですかねぇ。

サヴォイは別名「シュー・ヴェール」"chou vert"、イタリア語だと「カーヴォロ・ヴェルツァ」"cavolo verza"。どちらも「緑キャベツ」の意ですね。たんに「ヴェルツァ」と呼ぶこともあります。

そう、緑が濃くなきゃ意味がない! って感じの名前なんですよね。が、そこは結球野菜ですから、球の内部まで濃い緑ってわけにはいきませんよね。そういうモンだって割りきっちゃえばいいんですが、ミニサイズで仕立てると緑の葉の比率はとうぜん高くなるわけで、しかも葉の形状をいかしてお皿にのせてもらえるんじゃないか、なんて考えたんですけど…。

ミニ・サヴォイは、国内で生産があるかどうかは存じあげませんが、フランス産の輸入はあるんですよね。たしか「ミニ・シュー・ヴェール・フリゼ」の商品名だったと思います。

なので、かなり意をつよくして試作したんですけど、コスト計算して、やっぱり萎えちゃいました。もともとミニ野菜ってのはコスト面では割高なものになりやすいんですけど。売り手、使い手のみなさんはどういうわけかミニだとお安いってお思いになられるようで、そのへんがムズかしいところですね。 どんなに小さくたって一株は一株。大きかろうと小さかろうと栽培と出荷にかかる手間はおなじなんですよ。

てなわけで、ミニ・サヴォイについて今シーズンは「予約栽培」のみとさせていただこうと思っております。ご使用になられる時季が5月から10月の場合は4ヶ月以上前に、11〜4月については7月末までにご予約ください。

じぶんへのご褒美(笑

本格芋焼酎 吉兆宝山(1)。お気に入りです。よく、まきもの屋が日頃フランス料理を食べながらワイン飲んでるみたいなイメージをお持ちの方もいらっしゃるようですが、そういうのは、はっきり申しあげて偏見です(笑。オッサンなんですし、根っからの日本人なんですから、こういうのが好きなんですよ。ただ、日本酒はどうも相性がよくなくて、ダメなんですけどね。

  • 注1) サイトはFlashで全画面表示になるのでご注意

ヨーロッパの地方野菜について考えてみる

フランスでもイタリアでもいろいろあるんですよ。まきもの屋の商品だとチーメ・ディ・ラーパなんか地域性がかなり高い部類ですね。これは南イタリアとくにプーリア州の野菜。あ、いまは出荷はございません。念のため。

基本的には、あんまりにも地域性の高い野菜にたいしては慎重なスタンスをとっています。チーメ・ディ・ラーパなんか例外的な部類ですね。プンタレッレは事実上やめちゃいました。これは国内他産地への遠慮みたいなものもあるんですが、なによりローマ野菜ってのが消極的になった理由なんです。

むかしはローマ料理って流行りましたよね。サルティンボッカ、カルボナーラ…。で、あんまりにも流行って陳腐化しちゃったのか、いまどきはあんまり耳にしません。いまから20年くらいまえは、仔牛肉なんてまず一般じゃ手にはいらなかったんで、家庭でつくるときは豚肉でダイヨウしたり… サルティンボッカだけでも「イタメシ」を食べにいく価値があったんですよね。

それはさておき、ローマの野菜はやっぱりローマ料理の文脈でお使いいただきたい、そういう商品提案がうまくできないかぎりは、いささか消極的にならざるを得ないということなんです。まきもの屋としては、プンタレッレを、口が裂けても「バーニャ・カウダにどうぞ!」なんて言えません。バーニャ・カウダは北イタリアのものですから。

おんなじような理由で、アグレッティもやっておりません。これもローマ野菜ですね。

フランスにも品目レヴェルで「地方野菜」と呼べるものはいくつかありまして、サリコルヌとかアイユ・デ・ズルスなんかは有名なほうでしょうね。一般的な野菜でも地方品種はいろいろあって、トウガラシの一種、ピマン・デスペレットなんか地方品種ですけど「特産品」になってますね。

イタリアは地域主義がはっきりしたところですから、D.O.PとかI.G.P.モノの野菜はたいていは地方品種です。

地方品種のやっかいなところは、種子があんまり流通していないことなんです。日本でも、京野菜、加賀野菜、江戸・東京野菜などいろいろありますけど、もともとはその地域で守りつがれてきた品種なわけで、流通つまり種苗会社が売りだすようになると、一気に陳腐化しちゃってブームが終わっちゃったりします。

おいおい、シュガーローフなんか北イタリアの地方野菜じゃないか、って? おっしゃるとおりなんですが、これはフランスでも食べるんですよ。

そう、イタリア、フランスに共通する素材に重きをおいているんです。ミニ・ポワローなんかかなりフランスっぽい素材ですが、これはイタリア産もありますし、チポロットにしたって、イタリア系の品種をつかっていますが、フランスでも広く栽培されている品種なんですよ(フランスじゃチポロットとは言いませんけど)。

まきもの屋は「西洋野菜」=「珍しい」というようなものの見方をとことん嫌います。そりゃ、珍しいという価値観をメインにすれば、おもしろいものはいっぱいあります。でも、あくまでもベーシックなものをまずは大切にしたいと考えています。

ニンジンにしろタマネギにしろ日本と西ヨーロッパじゃかなり違うんです。そこのところをすっとばして地方野菜に手をだしちゃったら、何がなんだかワケがわからなくなっちゃう、やっぱり「珍しい野菜」で終っちゃうような気がするんです。しばらくは「現代フランス野菜の味と香り」"goût, saveur et parfum de légumes français contemporains"のテーマを中心にやっていきたいと思っています。もちろんイタリアのことは忘れてはおりませんで、じっさいにはイタリア、フランスに共通するものということになるでしょう。

地方野菜に力を入れるのはそのあと、しばらく時間がかかると思います。そりゃヨーロッパの地方野菜ってのはおもしろいですし、魅力的です。ただ、野菜のトポロジーってけっこうムズかしいんですよ。

もちろん商売ですから、潜在的にせよ何にせよ需要があるとわかればハナシは別なんですけどね。当面のあいだは、とりたててこちらからヨーロッパの地方野菜のご提案をする可能性はあんまりない、ということで。現実的にはガストロノミーの世界は野菜についてもかなりグローバル化してきているんで、そちらの需要をにらみながら、「現代フランス野菜の味と香り」"goût, saveur et parfum de légumes français contemporains"のテーマというかメッセージをそれとなく織り込んだ商品展開ができたらと考えています。

リュット・レゾネは栽培方法じゃなくて防除の考え方のはずなんだが

たたみかけるようにアップしますが、これはしばらく前に書いたんだけど、お蔵入りにしていたエントリ。

ワインにかんしてはまるっきりの素人、ましてや「自然派ワイン」についてはまったくの無知なんで、どなたかに教えを乞いたいところであるが、いちいちお取引先様に質問するほどの興味でもないから、BLOGで済ませることにする。どなたか教えてくださいな。

いわゆる「自然派ワイン」では、ブドウの「栽培方法」として「リュット・レゾネ」「ビオロジック」「ビオディナミ」の3つのカテゴリーがあるらしい。

「ビオロジック」biologique と「ビオディナミ」biodynamie (=biodynamique)はまぁ、わかるのである。トータルで栽培方法を規定しているから。が、「リュット・レゾネ」って防除にかんする用語でしかないはずなんだけど。

INRA(国立農学研究所)のサイトから定義を引用させていただくと。

Lutte où les moyens (essentiellement chimiques) de destruction des ravageurs ne sont employés qu'à bon escient, en cas de risque de dépassement du seuil de nuisibilité.
S'oppose à la lutte d'assurance, où les interventions sont déclenchées en fonction d'un calendrier ; préfigure la lutte intégrée.

かいつまんで訳すと「殺虫殺菌手段(化学的なもの)は、有害性の閾値(=作物生産にあたって危機的な病害虫密度のこと)を越えるおそれがある場合にも「適度」にしか用いない防除のこと。防除暦にしたがってなされる保険的防除の反対。総合的防除に先立つ概念」のことである。

日本でいうなら、「減農薬」よりは「低農薬」にちかいだろうか。そういうのをウリにしてる野菜宅配業者さんもいますな。

だから、「リュット・レゾネ」という語は肥料についてはまったくなにも語っていない。肥料までふくめるなら、「アグリキュリュチュール・レゾネ」agriculture raisonée ということになる。

よくわからないのは、なんでことさら「防除」つまり農薬のことばかりクローズアップされちゃうのか、ということである。で、どうして「総合的病害虫防除」(IPM = Integrated pest management、フランス語だとlutte intégrée)じゃないんだろうか?

で「リュット・レゾネ」もふくめて、「自然派ワイン」をお好きな方々は、どうして好まれておられるのだろうか。農薬をつかっていないとおいしいのだろうか?

農薬の使用がワインの味、品質にあたえる影響がどれだけあり得るか、個人的にはいささか疑問に思っている。味に影響するほどの農薬の種類、使用量というものがあるとすれば、それはもはや、「食品」としては不適切なものになる。日本の「食品残留基準」は石橋を叩いて叩いて叩くのに夢中になっちゃった感があるほど厳しいものだが、かりにその10倍、いや100倍甘い基準であっても、味、品質に影響なんてあるんだろうか? もしあるとすれば、そりゃ化学合成農薬の散布液そのものを口にしているのとおなじくらいの濃度じゃないんだろうか? つまり、「リュット・レゾネ」だからおいしい、ということはロジックとしてはあり得ないと思うんだけど。

いえね、フランスの農業現場にくわしいわけじゃないんで断言はできないが、どこぞの国みたいになんでもかんでも高濃度の農薬を散布しちゃうってことはないと思うんだが。

いや、「リュット・レゾネ」を否定したいわけじゃないんである。むしろ、「アグリキュリュチュール・レゾネ」が主流になっていったほうがいいだろうと考えているくらいだ。ただ、防除にかんする語がどうして「栽培方法」のカテゴリとして使われているのか、単純に理解できないと言っているだけなのである。だから教えてくださいな。

ビオについては、まぁ、野菜生産者の実感としても、わからなくはないのである。肥料は味を左右するから。

あのロマコンだってブドウの栽培じたいは事実上、有機栽培というかビオといっていいようなものだと記憶しているんだが。でもロマコンは「自然派ワイン」とは呼びませんよね。

ビオディナミは、フランスの ABマーク(ビオ)の規定では、これも含まれちゃっているというか、ビオディナミックはビオの亜種というか下位区分みたいなもののはずなんだが…。

そうそう、ビオディナミをお好きな方、この本はお読みになられただろうか?

  • ハーバード・H・ケプフ『有機農業の栽培技術とその基礎』河野武平、河野一人訳、菜根出版、1999。

タイトルは「有機農業」だが、全面的にビオディナミックについての本。個人的には、読んでいて頭がグラグラした記憶がある。だって、「ハツカダイコンの作付け日の重量への影響」という表に、「花、葉、果実、根」って項目がたっているんだから。ハツカダイコンの「果実」って? そもそも花を咲かせちゃったら野菜としては利用できないでしょうに? で、これが「月のリズム」の重要性を説明するのにつかわれているのだが、どういうロジックなんだかさっぱり理解できない。そりゃ、むかしは太陰暦をつかっていたわけで、月のリズムと植物の生育に相関関係があるってはなしはけっこうよく聞くから、そのこと自体は否定しないけど。まぁ、こういうのを「似非科学」って言うのかね?

ビオディナミックについてわかりやすくまとめてあるものとしては

  • カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ『有機農業の基本技術』中村英司訳、八坂書房、1997年。

のなかに、「生命力動農法(バイオダイナミクス農法)」と題したセクションがある。こちらのほうがおすすめだろうか。そんなに頭がグラグラしないですむはず。ほかにもビオディナミックにかんする文献はたくさんあるんで、ここにあげたのを「必読」というつもりもないし、「ビオディナミ」のワインを売る立場にある方々は、こういったものはもちろん読んでおられるんでしょうから、どうでもいいか。

ついでに言うと、アンチ・ビオディナミックなひとのなかには、「ビオディナミック=牛の角(の粉)を畑に撒いたり、月の満ち欠けをどうこういうワケワカラン農法」というような理解をなさっておられるケースもあるようだが、牛角粉なんてのは家畜の血粉や骨粉なんかとおんなじように、ものすごーく昔から使われてきた伝統的な肥料なわけ。それ自体はべつにヘンテコなもんじゃない。たんに昔のやりかたというだけのことである。

雨よけ栽培に移行する理由

このところちょこちょことパイプハウスを建てるはなしを書いておりますが、かんたんに申しあげますと、2010年の市場出荷分についてはほぼすべて雨よけハウス栽培(無加温)に移行する予定です

なんでわざわざ資金調達(ようするに借金、それも居抜きなら飲食店一軒開業できるくらいの!)をしてそんなことまでするかと申しますと、雨がイヤなんですよ。いえ、まきもの屋本人じゃなくて野菜が雨を嫌うんです。

そりゃそうです。ヨーロッパというのはそもそも雨のすくないところで、しかもハイシーズンである春から夏にかけては乾季なんです。雨季、乾季はちょうど日本と逆だと思っていいんですけど、夏なんかリップクリームが手放せないくらいなんですよ。

対して、倉渕は非常に雨が多い。おそらくは日本でも有数の雨の里でしょう。なにしろ、露地栽培だと水やりの必要がまったくないくらいです。長野のレタス農家さんなんかが「恵みの雨」なんて表現をつかうと、妙に腹がたって「一滴も降らんでいいっ!」と叫びたくなりさえします。

そんなところで、雨を嫌うヨーロッパ野菜を栽培しているんですから、そりゃもうタイヘンなんです。雨が多いと野菜は病気にかかりやすくなります。野菜の病気ってわかりやすくいっちゃうと腐敗、カビなんですよ。で、レタスとかキャベツみたいな一般野菜だと使える農薬もいろいろありますから、露地だろうがなんだろうが気合と経費さえかければ対応できちゃうんです。ところが、西洋野菜の多くはマイナー品目ですから、農薬業界からはまったく相手にしてもらえませんので、使っていい農薬なんてほとんどないんです。

結果はおわかりでしょう。歩留まりが悪くなるんです。で、出荷量も不安定になる。

悪いのは雨ですから、畑に屋根をかけちゃえばいいわけです。それがパイプハウスというわけです。いや、なんとかドームみたいなので透明な屋根の施設がありゃいいんでしょうけど、そんなの現実的じゃないですから、地面にパイプを挿して3間(5.4m)間口、長さ36mとか64mのハウスをいくつも建てるわけです。

雨よけハウスといえど、いちおうは「温室」なわけですから、ふつうでしたら真夏はそりゃもうタイヘンなことになります。ただ、換気さえきちんとできていれば、夏場にエアコンのいらない土地ですから、ちょうどフランスあたりの気候と似た感じになるわけです(そういえば、10年くらいまえアヴィニォンの宿の部屋にエアコンがあって妙に感心したのを思いだしました)。

しかも、「温室」だからこそ、冬場でもいくつかの品目は安定して栽培できるというオマケもついています。そりゃ生産者としては「旬」をだいじにしてほしいという思いはありますが、ミニ・ポワローにしろミニフェンネルにしろ、特殊な仕立てですからどの季節の野菜と位置づけるか、栽培している本人だってわからなくなったりするくらいですし、市場に出荷していると、とにかく「周年供給しろ!」ってうるさく言われるもんですから、まぁ、ちょうどいいんですよね。

そんなこんなでいいことづくめなんですが、理念的にはちょっと問題がありまして、現実的には誰も問題視していないことなんですけど、ハウス栽培ってのは、生態系からすると「半閉鎖系」ってヤツでして、ようするにその発展形の「完全閉鎖系」がいわゆる植物工場なんですよ。つまり、自然というものをベースに考えると、じつに不自然なことをやるわけです。

で、上でもちょっと触れましたけど、ハウス栽培ってのは農薬を使う必要が減る可能性がかなり高い形態でして、じっさい、側面に防虫ネットを張っちゃえば、殺虫剤の必要はかなり減るんですよね。こういうのを「物理的防除」って言うんですが、ようするに、減農薬とか無農薬とか有機栽培といったものに有利な形態なわけです。じっさい、そういう取り組みは多いですよね。こういうのをお好きな方々っていわゆる「自然派」なわけでしょうけど、このへんの現実をどうお考えなんでしょうね?

以前に、倉渕じゃないですが群馬で真冬にミョウガを栽培なさっている方のお話をうかがう機会がありまして、「商売なんだから投資すべきところにはきちっと投資したほうがいいよ」ってアドヴァイスいただいたんですが、おっしゃるとおりなんですよね。商売なんですから。で、ついでに思いだしたんですが、その真冬のミョウガ、当然ながらハウスで暖房しながら、しかもハイドロポニックだっけか、とにかくすごい方式らしいんですけど、なんとミョウガの草丈が2mを越えるっていうんです。通常の露地だとせいぜいが80cmとか1mくらいでしょうか。想像するだに、H.G.ウェルズの世界ですな。すごいです。

その方も防除はほとんどしないとおっしゃっていました。つまり農薬はほとんど使っていないということなんですけど、農薬嫌いで「自然派」なみなさん、こういうのをどうお感じになられるんでしょう? 率直なご意見をおうかがいしたいと切に思っております。いえ、べつに叩きのめすなんてことはしませんので、どうぞお気軽にコメントなさってください。ホント、そんな怖がらなくてもいいですよ。とって喰いやしませんから。

西洋料理は異国の食文化なんだから、そんなに安くはできないはず

フランス料理でもイタリア料理でも、やっぱり素材は大切ですよね。お店のコンセプト、方向性によっては、日本であたりまえというか一般的な食材じゃどうしても限界があるでしょう。

で、マジメにやればやるほど、ごくごく庶民的なはずの料理がとんでもなく高コストになってしまう。フランス料理でいうとカスレなんかいい例かもしれません。ほんらいは余りものの煮込みですが、カスレを目的にきちんと材料を揃えるとけっこうな原価になっちゃうはずです。ふつうは羊、鴨とか鵞鳥、ソシス(ふつうは豚肉ですな)なんかですけど、そのうちのどれかひとつとインゲンマメの「カスレ風煮込み」にならざるを得ない。鴨のコンフィが入っていると尚好ましい料理ですが、鴨のコンフィじたい、それなりのお値段でのご提供でしょうから、カスレに使っちゃうと、とんでもないことになりかねません。

そのくらいのことは、素人でも容易に想像できるものです。で、「なんちゃって」でOKだと思うお客様もいらっしゃるでしょうけど、「高価でもちゃんとしたものを食べたい」という需要はけっこうあると思うんですよね。

野菜もそうなんです。ごくごく庶民的なもののはずが、日本で栽培すると、コストの関係でどうしても高価なものになりがち。いま、ポワローなんかけっこう出回っていると思いますが、そこそこのお値段ですよね。じっさいのところ、フランス並の値段だったら国内じゃ誰も生産しません。日本じゃコスト的にあわなくなっちゃうんです。

ポワローのフランス並みのお値段というのは、とことん機械化して大量生産しないととてもじゃないけど実現できません。でも、日本でおんなじことをできる圃場(畑)はそんなにありません(畑一枚の面積がかなり大きくないと機械化のメリットがありません)し、そういう技術的問題をクリアしたとして、たとえばレタスとかキャベツみたいに大量にマーケットに出回っても、売りさばける商品じゃありません。っていうか、レタス、キャベツだって現状でコスト割れ、多くの生産者が赤字経営に陥っている現実があります。

ざんねんなことに、野菜の値段というのは、品質の善し悪しではなく、需給バランスで決まっているところが大きいんです。だから、「多少高価でもいいものを買う」なんておっしゃられても、正直なところ失笑しちゃいます。そりゃ、同じ品目であれば、高品質のほうが高価です。でも、西洋野菜みたいなマイナーなものは、品質を云々する以前に、需要がどれだけあるかがファクターとして大きかったりするわけです。

その一方で生産コスト、出荷コストというのはきっちりとあるわけです。生産コストは、一般的に言って、大量に生産すれば安く、少量であればあるほど高くなります。飲食店でいうと、大手のFCと個人店の関係みたいな感じでしょうか。

品質とコストの相関はもちろんあるんですが、なにしろ自然相手というか天候に左右されるところがあるので、かならずしも高コスト=高品質というわけにもいきません。

使い手、食べ手の方々はあんまり意識なさっていないかもしれませんが、一般野菜の場合、ぜんたいとして品質がいいとき(=豊作)は安値、品質が悪いとき(=不作)は高値になることがあります。生産者としては「調子のいいときならこんな出来の悪いのは出荷できないのになぁ」と思いながらも、不作のときになんとか出荷できればそれなりの利益を得られなくもない、そういうことはままあります。

ただ、これはあくまでも一般野菜のハナシでして、まきもの屋の商品みたいなマイナー野菜はそうはいきません。不作でロクにとれないと、使い手の方も売り手の方も「ないの? しょうがないなぁ、じゃぁほかの品物にしよう」というわけで、高値になるどころかそもそも買ってもらえなくなっちゃいます。で、そのまま忘れ去られちゃう…(泣。

って言うか、現実的に「高値」になることってまずないんですよ。どんなに高くても上限はこちらの希望価格まで。それより安いことはしょっちゅうですけど。で、販売価格が生産と出荷のコストを下まわっちゃうと、出荷中止とか生産中止にせざるを得ないこともあるわけです。

コストの話をするとキリがなくなっちゃうんですが、まぁ、コチラの都合みたいなところもありますんで、それを大上段にふりかぶってもしょうがないですね。そうは言っても、 とあるBLOGで、プロの方なんだか素人さんだかわかりませんが、ウチの商品をご紹介くださっているのはいいんですけど、「高いんであんまりおすすめできない」なんて書かれちゃうと、そりゃカチンときます。

さいしょに書いたように、西洋料理にマジメにとり組んだら、そりゃ原価はあがりますよね。野菜だってそうなんですよ。おなじ価格なのに生産者にとっては安値、売り手や使い手にとっては高値って状況は日常のものになっちゃってますけど、現状だと、はっきり申しあげて「高い」と文句言うほうがおかしいんです。そのくらい異常な安値がつづいているんですよ。で、野菜全体でいうと、おそらくさらに安値になっていくでしょう。西洋野菜でも、いくつかの品目で値崩れするであろうことがはっきりわかっているものもあります。

不景気がとどまるところを知らないような状況で、まもなく日本の野菜生産は壊滅が目に見えてあきらかになってくるんじゃないかと思っています。長期的にみれば、安値のあとにくるのは供給不足なんですが、どうせ商社がC国とかV国あたりから安く輸入しちゃうでしょうから、そのまま国産野菜は淘汰されちゃうんでしょうね。

まきもの屋は、そんな先行き不透明ななかで、資金調達をしてパイプハウスを6棟、計500坪も建てようってんですから、もうアホかバカかと、イカレちゃってんじゃないかと本人も思っているくらいなんですが、品質向上と安定供給のためにはどうしても必要なんで仕方ありません。パイプハウスってのはあんなに簡単なつくりなのに、すっごく高価なんですよ。維持費もかかります。(なのに、融資をうけるときの「担保」にはならない…)。で、そういうのがぜんぶコストとしてはね返ってくるわけです。正直、つらいです。

すさまじきもの

料理人諸氏の不興をかうこと覚悟で書かせていただきますが、

フランス料理の看板を掲げておられるなら、

下仁田葱ではなく"poireau"を、白菜ではなく"chou vert"を、 サニーレタスじゃなく"laitue pommée (=salade)"を、ゴボウじゃなく"salsifi"を、五寸ニンジンじゃなく"carotte nantaise"を、千両系ナスじゃなく"aubergine"(せめて米ナス)を、日本のF1ホウレンソウじゃなく"épinard"や"blette"を、わさび菜じゃなく"chicorée frisée"を、ミニキュウリじゃなく"cornichon"を、金町系カブじゃなく"navet"を、万ネギじゃなく"ciboulette"を、お使いくださいな。

あと、シュンギク、コマツナ、水菜、チンゲン、ターサイ、シイタケなんかとくに興醒めですね。

ポワローのかわりに長ネギをブーケガルニやミルポワに使うなんて、ラーメンのダシじゃないんですから。

イマドキは輸入、国産をあわせれば、手にはいらない西洋野菜はないというくらい、いろんなものが出回っています。タマネギなども白、黄、赤の使いわけが可能です。

フランス料理の素材には、フランスにあるものをお使いくださいな。

「西洋野菜、とくに輸入は高いから…」とおっしゃるのもわからなくはありませんが、そこで原価をおさえることにこだわってしまうと、一般野菜でダイヨウ→「なんちゃってフレンチ」から抜けることはできないんじゃないでしょうか?

もちろん、一般野菜でダイヨウしていても、お客様の支持を得ていらっしゃるなら、いいんですよ。商売なんですから、それが「正義」なわけです。

ただ、何の疑問もなくダイヨウに慣れちゃっているのと、理由があってしょうがなくダイヨウしているのでは意味がちがうんですよね。前者については、まきもの屋の「お客様」にはなり得ませんので、「面白い野菜」「珍しい野菜」「変った野菜」が欲しいとおっしゃっても、「アンタの分はつくっていませんよ」とお答えすることになると思います。まぁ、値段でついて来られないというのが実際のところでしょうが。

いえね、そういう料理人さんと、かつてちょっとだけお付きあいがあった時期がありまして、懲り懲りなんですよ。西洋野菜を使いこなせないどころか、メチャクチャにしちゃう。たんに感性が乏しい、勉強不足なだけなのかもしれないんですが、それで自信たっぷりに間違いだらけのフランス語でメニューを書き、さも「本物」のフランス料理であるかのような態度をとられちゃねぇ。

まぁ、プレ・ロティに添えた根菜のローストが、どうみても筑前煮の材料で構成されちゃっている、そういう生産者兼フレンチ・レストラン経営者さんもいらっしゃいますから。

あるBLOGでウチのお取引先様のお店をとりあげたエントリがありまして、「野菜がおいしい」とのご評価。ほんとうに嬉しいですよね。何が嬉しいって、「珍しい」とか「西洋野菜」とかいっさい書いていないわけです。で、たんに「野菜がおいしい」と。フランス料理、イタリア料理で西洋野菜を使っていただくことの意味ってそこにこそあるんだと思うわけです。

フランス料理ならフランスの食材、イタリア料理ならイタリアの食材がいちばん親和性が高いわけです。野菜についていえば、日本の一般野菜よりは、フランス、イタリア品種の西洋野菜のほうが料理はおいしくなるはずですよね。