野菜の旬
レタスやキャベツというのは、市場レヴェルでは旬のない野菜になってしまっている。そういうものを栽培していて、こんなことを言うのもなんだが、野菜の使い手のひとたちには旬をたいせつにしてほしいと思うのである。
ほとんどすべての野菜には、いちばん栽培しやすく、おいしくできる時期というものがある。それが「旬」である。注意すべきポイントは、地域差があるということ。暖地と高冷地では、野菜によっては2ヶ月以上、「旬」がちがうのである。つまり、野菜の旬というのは地域に根ざしたものとして捉えるといい。
だから、こんな表をみると、あきれてモノが言えなくなってしまうのである。なんでも、飲食店が、この「旬の野菜」の表から5種類以上の野菜をつかったメニューをつねに用意していて、そのほかの条件(もちろんおカネも)をクリアすると、「うまい野菜あります」という認定がうけられるんだという。レタスやキャベツのことはおいておくとしても、アーティチョークの旬は5月と6月だという。まきもの屋が農業をいとなんでいる倉渕では、7月にとれる野菜なんだが、この表によると「旬」ではないということになってしまう。こまかく見ていくとおかしなところはたくさんあるが、いちいちあげつらうことはやめておこう。
たくさんある野菜の旬をわかりやすく表にするなら、まず地域を特定すべきである。倉渕の野菜の旬をまとめた表、というぐあいに。野菜の旬は、野菜の種類×産地の数、だけあるといっていいのだ。だから、市場流通を前提にしたばあいは、時期ごとに、この産地のものが「旬」というのが、より正確な表現となる。また、気候は毎年ちがうわけだから、ひとつの地域でも「旬」は年によってちがってきたりもするのだ。
そうはいっても、「季節感をたいせつにしています」なんていっている店が、冬に、ヤリイカ、露地のホウレンソウ、あきらかにハウス栽培のズッキーニとトマトをおなじ皿にのせていたりすると、笑止千万、野菜がかわいそうになってくる。しかも、ホウレンソウについては「有機栽培」で、甘みの強いものといっているのだ。たぶん野菜の味のバランスはあまりよくない。ズッキーニがたんなる引きたて役になっていることは容易に想像がつく。もちろん、まきもの屋がじっさいに食べたわけではない。雑誌で紹介されていた、ある有名店の一流といわれるシェフの作品である。
野菜の「旬」は産地の数だけあるのだから、ほんとうの意味でこれを理解するのはけっこうむずかしい。でも、真冬にキュウリやナスを食べたがることもまた、滑稽なのである。冬のキュウリ、ナスはたいていの産地では無加温ではムリである。重油などをつかって暖房してやらないといけない。そういうのは「旬」をはずした野菜だといっていい。生産者は、需要があるからつくるのである。
和食の世界で、季節が前だおしになっていることは一般にもよく知られている。で、これにこたえようと、生産者も出荷を前だおしにする。技術を駆使して、なんとか早く出荷できるようにするのだ。複数の産地が競争するから、だんだん前だおしがひどくなる。極端な例だと、12月はじめにタラの芽が市場に出まわったりする。あんまりにも季節が前だおしになりすぎて、けっきょく安値での取引らしい。たしかに、季節感のある野菜は、出はじめ、いわゆる「はしり」の時期のものは引きあいもつよい。でも、このタラの芽のケースなんか笑うに笑えない、性質のわるい冗談みたいである。




