Fromageとformaggio

とてもおいしいチーズを手にいれたので、その話を書こうと思ったが、まきもの屋はあんまりチーズにはくわしくないので、チーズがらみのはなしとはいえ、またまた語学ネタになる。何卒ご容赦ねがいたい。

フランス語でチーズのことを"fromage"、イタリア語では"formaggio"という。語源はラテン語の"formaticum"(形にしたもの)である。形のない液体である乳を固形つまり形のあるものにしたのがチーズだから、語のなりたちというか理屈はわかりやすい。イタリア語のほうは語源にかなりちかいのだが、フランス語のほうはちょっとちがう。よくみると、"o"と"r"が逆になっている。なんの根拠もないのだが、どうもこれは書きまちがいというかスペルミスが定着してしまったのではないかと勝手に考えている(1)。じっさい、12世紀くらいまではフランス語でも"formage"と綴られていたらしい。

ほかにも、"oignon"(タマネギ) なんかアヤしい。英語の"onion"を想起するまでもなく、フランス語の発音「オニョン」からも、"i"の字が余計なんではないかと思う。手元のPetit Robertという辞書をみると、むかしは"hunion"とか"ognon"という綴りだったことがわかる。だいたい、"oignon"をフランス語の綴りと発音の規則どおりに読むなら、「(ォ)ワニョン」のようになるはずだが、そうは発音しないのだから、"i"の字は必要ないか、位置がおかしいわけである。英語でも"centre"と"center"のようにふたつの綴りがある語はけっこうある。

もうひとつ、"poêle"(フライパン)という語だが、これも昔は"paile"あるいは"poile"と綴られていたらしい。筆記体で雑に書いたのを想像すると、"i"のところが"ê"に見えなくもないかもしれないという気になる。で、まちがったほうが定着したのだろう。だいたい、この語は「ポワル」と発音するのだから、むかしの綴りのほうが理にかなっているのである。

かんけいないが、日本でいう「ベビーリーフ(ミックス)」のことをイタリア語で"misticanza"、フランス語では"mesclun"という。語源はラテン語の"misculare"(混ぜる)である。フランス語の"e"とイタリア語の"i"の関係は、発音に忠実に綴りをあわせた結果だろうから、解説はまたの機会にする。それよりも、"mesclun"を日本では「ムスクラン」というひとが案外多いようなのだが、「メスクラン」がただしいはずである。いや、"mesclun"はそもそも「ミックス」の意だから、ごく若どりのいわゆる「ベビーリーフ」を指す語とするのはいささかムリがある。事実上、あんまりちがいはないんだけど。

  • 注1) 言語学的には、音韻論やらできちんとした説明がつくはずである。ほんとうはスペルミスなんかじゃない可能性もけっこうあるのだが、まきもの屋は言語学者じゃないので、「勝手にそう思っている」のである。だから、大学生がこの文を読んでレポートなんぞに引用したら、単位はもらえないと覚悟したほうがいい。
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