マルチカラー・キャロット

ニンジンの歴史を考えるとちょっとおかしなネーミングです。そもそも、ニンジンというのは色の発現がきわめて不安定なものだったそうで、本質的にはマルチカラーだったわけです。写真のはぜんぶ近代品種なので、色ごとにちがう品種をつかっています。

それはともかく、今年は種子を入手できなくてあきらめていた紫の別品種、期待していたんだけど、また種とりに失敗したかもしれないというはなし。ショックです。急いで代替をさがしているところなんですが…。

とはいえ、ニンジンというのは不当に安値をつけられている野菜のなかでも、コスト無視でとんでもない安値が恒常的につづいているもののひとつなんですよね。マルチカラーだろうが何だろうが、ニンジンはニンジンなんで、手間を考えたら生産意欲なんてとてもじゃないけどなくなっちゃいます。

いまのところきちんと評価してくださった方がいらっしゃらないんで、ちょっと自信喪失気味なんですが、じつはこの5色のニンジンのなかで、いちばんのキモはオレンジだと思っています。ごくあたりまえの色ですよね。形状は日本のとはちょっとちがうけど。

これ、「ナンテーズ系」carotte nantaise (carotte de Nantes)のF1品種で、もちろんフランスで育種されたものです。そもそもナントというのはフランスの地名ですね。最新とはいわないまでも、比較的近年に開発されたもので、いってみれば「いまどきのフランスのニンジン」なんです。

これのご先祖様である固定種の「ナント」を毎年つくっていたんですが、なかなか満足できませんでした。香りが強すぎることもあるんですが、じぶんがかつてフランスで食べていたものとおなじにならないんで、風土の違いかなぁ、と思っていたんです。

が、コレはかなり近いと思います。っていうか、そのものです。フランスのニンジンです。正確に言うと、10年ちょっと前のフランスで一般的だったニンジンの味です。どのくらいフランスのニンジンらしいかというと、ラペ(râper = おろし器をつかって「おろす」こと、グリュイエールなんかもそうですが、千切り状にします)したのをマヨネーズであえると、すっかり気分はResto-U(フランスの学食)、もとい、ビストロです。だいたい、このニンジン、味噌汁に入れるとちっともおいしくありません(笑。どうも和風の調味が合わないみたいなんです。

そんなわけで、日本で一般的なニンジンとの味、香りのちがいをたのしんでいただきたいんですが、なかなかむずかしいようです。まぁ、日本じゃ香りというか「ニンジン臭さ」をとことん排除して、とにかく甘くなる品種がもてはやされているんですから、しょうがありませんね。

そんなわけで、このオレンジのニンジン、築地に出荷されることはないと思います。売れないでしょうから。だいたい、「ナント」系のニンジンはさいきんは珍しくなったみたいですが、日本でも栽培されなかったわけじゃないんですよね。だから「差別化」が難しいんです。っていうか、自家用だけでいいかな…? ほかのいろんな色のほうが楽しいし、紫なんかとっても甘いですからね。


Posted by makimonoya on 24 November, 2009

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