西洋料理は異国の食文化なんだから、そんなに安くはできないはず
フランス料理でもイタリア料理でも、やっぱり素材は大切ですよね。お店のコンセプト、方向性によっては、日本であたりまえというか一般的な食材じゃどうしても限界があるでしょう。
で、マジメにやればやるほど、ごくごく庶民的なはずの料理がとんでもなく高コストになってしまう。フランス料理でいうとカスレなんかいい例かもしれません。ほんらいは余りものの煮込みですが、カスレを目的にきちんと材料を揃えるとけっこうな原価になっちゃうはずです。ふつうは羊、鴨とか鵞鳥、ソシス(ふつうは豚肉ですな)なんかですけど、そのうちのどれかひとつとインゲンマメの「カスレ風煮込み」にならざるを得ない。鴨のコンフィが入っていると尚好ましい料理ですが、鴨のコンフィじたい、それなりのお値段でのご提供でしょうから、カスレに使っちゃうと、とんでもないことになりかねません。
そのくらいのことは、素人でも容易に想像できるものです。で、「なんちゃって」でOKだと思うお客様もいらっしゃるでしょうけど、「高価でもちゃんとしたものを食べたい」という需要はけっこうあると思うんですよね。
野菜もそうなんです。ごくごく庶民的なもののはずが、日本で栽培すると、コストの関係でどうしても高価なものになりがち。いま、ポワローなんかけっこう出回っていると思いますが、そこそこのお値段ですよね。じっさいのところ、フランス並の値段だったら国内じゃ誰も生産しません。日本じゃコスト的にあわなくなっちゃうんです。
ポワローのフランス並みのお値段というのは、とことん機械化して大量生産しないととてもじゃないけど実現できません。でも、日本でおんなじことをできる圃場(畑)はそんなにありません(畑一枚の面積がかなり大きくないと機械化のメリットがありません)し、そういう技術的問題をクリアしたとして、たとえばレタスとかキャベツみたいに大量にマーケットに出回っても、売りさばける商品じゃありません。っていうか、レタス、キャベツだって現状でコスト割れ、多くの生産者が赤字経営に陥っている現実があります。
ざんねんなことに、野菜の値段というのは、品質の善し悪しではなく、需給バランスで決まっているところが大きいんです。だから、「多少高価でもいいものを買う」なんておっしゃられても、正直なところ失笑しちゃいます。そりゃ、同じ品目であれば、高品質のほうが高価です。でも、西洋野菜みたいなマイナーなものは、品質を云々する以前に、需要がどれだけあるかがファクターとして大きかったりするわけです。
その一方で生産コスト、出荷コストというのはきっちりとあるわけです。生産コストは、一般的に言って、大量に生産すれば安く、少量であればあるほど高くなります。飲食店でいうと、大手のFCと個人店の関係みたいな感じでしょうか。
品質とコストの相関はもちろんあるんですが、なにしろ自然相手というか天候に左右されるところがあるので、かならずしも高コスト=高品質というわけにもいきません。
使い手、食べ手の方々はあんまり意識なさっていないかもしれませんが、一般野菜の場合、ぜんたいとして品質がいいとき(=豊作)は安値、品質が悪いとき(=不作)は高値になることがあります。生産者としては「調子のいいときならこんな出来の悪いのは出荷できないのになぁ」と思いながらも、不作のときになんとか出荷できればそれなりの利益を得られなくもない、そういうことはままあります。
ただ、これはあくまでも一般野菜のハナシでして、まきもの屋の商品みたいなマイナー野菜はそうはいきません。不作でロクにとれないと、使い手の方も売り手の方も「ないの? しょうがないなぁ、じゃぁほかの品物にしよう」というわけで、高値になるどころかそもそも買ってもらえなくなっちゃいます。で、そのまま忘れ去られちゃう…(泣。
って言うか、現実的に「高値」になることってまずないんですよ。どんなに高くても上限はこちらの希望価格まで。それより安いことはしょっちゅうですけど。で、販売価格が生産と出荷のコストを下まわっちゃうと、出荷中止とか生産中止にせざるを得ないこともあるわけです。
コストの話をするとキリがなくなっちゃうんですが、まぁ、コチラの都合みたいなところもありますんで、それを大上段にふりかぶってもしょうがないですね。そうは言っても、 とあるBLOGで、プロの方なんだか素人さんだかわかりませんが、ウチの商品をご紹介くださっているのはいいんですけど、「高いんであんまりおすすめできない」なんて書かれちゃうと、そりゃカチンときます。
さいしょに書いたように、西洋料理にマジメにとり組んだら、そりゃ原価はあがりますよね。野菜だってそうなんですよ。おなじ価格なのに生産者にとっては安値、売り手や使い手にとっては高値って状況は日常のものになっちゃってますけど、現状だと、はっきり申しあげて「高い」と文句言うほうがおかしいんです。そのくらい異常な安値がつづいているんですよ。で、野菜全体でいうと、おそらくさらに安値になっていくでしょう。西洋野菜でも、いくつかの品目で値崩れするであろうことがはっきりわかっているものもあります。
不景気がとどまるところを知らないような状況で、まもなく日本の野菜生産は壊滅が目に見えてあきらかになってくるんじゃないかと思っています。長期的にみれば、安値のあとにくるのは供給不足なんですが、どうせ商社がC国とかV国あたりから安く輸入しちゃうでしょうから、そのまま国産野菜は淘汰されちゃうんでしょうね。
まきもの屋は、そんな先行き不透明ななかで、資金調達をしてパイプハウスを6棟、計500坪も建てようってんですから、もうアホかバカかと、イカレちゃってんじゃないかと本人も思っているくらいなんですが、品質向上と安定供給のためにはどうしても必要なんで仕方ありません。パイプハウスってのはあんなに簡単なつくりなのに、すっごく高価なんですよ。維持費もかかります。(なのに、融資をうけるときの「担保」にはならない…)。で、そういうのがぜんぶコストとしてはね返ってくるわけです。正直、つらいです。