野菜の種類なんて数が限られておりまして

洋の東西を問わず、野菜--厳密に表現すると「食用として栽培される草本類」--の種類なんてのは、じつはそんなに驚くほど多くはないんですよ。ナスはナス、トマトはトマトって具合に品目ベースで勘定すると。

農水省の指定野菜14品目、特定野菜34品目ってありますよね。これ、なかなかスグれもののリストで、ようするに日本の一般的な食生活に必要な野菜のほとんどが含まれています。

で、いわゆる西洋野菜なんですけど、上記のリストに品目レヴェルで含まれないものって、じつはそれほど多くはないんです。そりゃ、ポワローとかアーティチョークとか、いろいろありますけどね。でも、たとえばフィレンツェ茄子なんていってもナスはナスなわけです。そういう数えかたというか考えかたですね。

もちろん、トマトだってオックスハート、マルマンド、サン=マルツァーノ、コストルート・フィオレンティーノ、いろいろあります。数えきれないくらいです。こういうのは品種レヴェルですね。その場合はもう、それこそ無数にあります。ただですね、たんに品種が違えばそれだけ種類が多いような気がしちゃうかもしれませんけど、日本国内で生産されているレタスとかキャベツだって、ものすごい数の品種がつかわれているわけです。でもレタスはレタス、キャベツはキャベツでしょう?

で、じゃぁ「西洋野菜」の定義って何? ってことになっちゃうと思うんですけど、個人的には、オーセンティックな西洋料理を構成する野菜だと考えております。ポイントは「オーセンティック」です。あえて「トラディショナル」とも「レジォナル」とも申しません。オーセンティックはオーセンティックです。

オーセンティックという語をどう解釈するかで変ってきますが、たとえばポワローをつかうべきところに、高価だから、あるいは入荷が不安定だから、という理由で和ネギをつかうとしましょう。これはオーセンティックなフランス料理になりますか? そういうことなんです。

で、上に書いた定義をベースに考えますと、「珍しい西洋野菜」という表現がじつにナンセンスだと思いませんか? 「珍しい」と「西洋野菜」というふたつの語が矛盾しちゃってます。

難しいかな? ようするに、西洋野菜というのはイタリア料理、フランス料理、スペイン料理といった西洋料理の文脈ではごくあたりまえの、ふつうの野菜なんです。だから、「珍しい」という形容をつけること自体が、自身の不明、無知、無教養、無経験、無見識、不勉強、無定見、無自覚、非常識、まぁようするにバカちんってのをさらけだしているということになるんですよ(1)。すくなくともロジックとしては。

もちろん使い手のみなさんはこんなバカなことはおっしゃらないと思います。ダイヨウと安いものばかりつまむクセが染みついちゃってなければ。ねぇ、皮肉ってわかります?

問題は生産者側なんですよね。思いきって9000ガバスくらい賭けちゃいますけど、西洋野菜をやっている生産者の99.9%が「珍しい西洋野菜」って認識から抜けられていないはずです。そりゃそうですよね、生産者って大多数はまきもの屋みたいに田舎で地べたを這うようにして仕事してるんですから。西洋料理を知っているとか、西洋の食文化に造詣があるとか、外国語の知識があるとか、そういうのはレアケースでしょうね。

だからダメとか、そういうことを申しあげるつもりはございません。ただ、知ってってやっていることと、知らずにやっていることは、結果が似て非なるものになるんじゃないか、そういうことです。

料理人さんは「王様気質」の方も少なからずいらっしゃるようですから、そういう方は、たとえばまきもの屋みたいなタイプとはうまくいかないかもしれませんね。でも、「珍しい西洋野菜」レヴェルでお山の大将というかジャイアンみたいにはならないでくださいね。生産者ってけっこうデリケートでナイーヴな人も多いんですよ。いえ、まきもの屋がそう自称したいということじゃないんですけど。

しつこいようですが、今日のキーワードは「オーセンティック」です。ここ、大事なのでよーくアタマに入れておいてくださいね。試験にでるかもしれませんよ(笑。

  • 注1) ラブレー風の文体ですな。とくにパニュルジュ的です。教養ってのはこういうモンなんですけどねぇ。

Posted by makimonoya on 04 February, 2010

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