お皿のうえの○○種の季節の有機野菜、何種類まで可能?
しつこく「有機」ネタです。タイトルの「○○種」のところには数字を入れます。さいきんよく見かけますよね。野菜の種類の多いことを誇るような料理名って。もう、10やそこらじゃご満足いただけないみたいです。なにしろ、あの関西の有名店なんか、3ケタですから。もっともこの有名店の場合は「有機」とは謳っていなかったと記憶していますが。
数えかたというのもあるでしょうけど、20を越えるとかなり多いですよね。1軒の農家じゃ揃えるのが困難かもしれません。いや、ひとつの産地で揃えるのだって「有機」という縛りをかけちゃったら、難しいかもしれません。
いや、日本全国のものを仕入れるからノープロブレム、ってことなんでしょうな。現実的にはそうだと思います。ただね、やっぱりいくつか気になるんですよ。
このBLOGでも何度も申しあげてきましたけど、飲食店さんは「有機」という表示をどのくらいきちんと理解して、「正しく」お使いなんでしょう。「一部有機野菜使用」であればそう表示すべきでして、「○○種の季節の有機野菜」なんて料理名は不当表示にあたる可能性があります。
だいたい、有機JASの認証と格付(ようするにJASマークのシールなどが貼られるところまでの事務作業)があってはじめて「有機」といっていいことになっているんです。本質的ないい悪いは別にして、そういうルールになっているんです。認証を取得していない「事実上」有機栽培、無農薬栽培をしている生産者のものは、やっぱり「有機」「無農薬」と表示して売ってはいけない、そういうことに決まっているわけなんです。
今回のネタにしている「○○種の季節の有機野菜」ですと、飲食店さんがルールをきちっと守って、有機JASの野菜だけ使っているとしましょう。いささか揃えるのがタイヘンじゃないかと…。そりゃ、一般野菜50品目くらいは常時安定的に有機JASモノが流通しているはずです。でもこれは一般野菜のはなしなんですよね。そこで無問題となるんでしょうかね。ゴボウとかレンコンとか、いまどきのフレンチじゃあたりまえみたいだから、べつにいいんでしょうね。だとすると仕入れはそんなに大変じゃないかも。
あとですね、いちばん大きな疑問なんですけど、日本の有機農業ってのは「身土不二」「適期適作」の概念をかなり重要視します。有機農業というのは「農」そのものの「あり方」の問題であって、たんに味がどうとか安全性がどうとか、そういう表層的なことじゃないんですよね。
だから、個人的な意見ですけど、消費者エゴむきだしの、きわめて皮相的な「有機野菜」の扱いにはものすごく違和感があるんです。
もうひとつ不思議なんですけど、そんなに食材の種類が多いと、料理そのもの、とくに味と香りについて、どういうロジックで組みたてることになるんでしょう? 食べる順番とか指定するんですかね? まさかメリメロでいいなんてこたぁないですよね? 種類が多いってことは、ただでさえひとつひとつの野菜はごく少量にならざるを得ないんですから、それを「まじぇまじぇ」しちゃったら何を食べてるんだかわけがわからなくなっちゃうでしょうからね。
これについては、前々から疑問だったんですよ。「付け合わせ」を構成している要素が多すぎるんじゃないか、って思うことがしばしばなんです。肉料理でも魚料理でもいいですけど、フランス料理でしたら、中心となる食材とソースの組みあわせがあって、それを補完する意味でガルニチュールを考えてきますよね。このとき、主役の食材、ソースとの相性ってのはもちろん重要ですけど、合えばいいってもんじゃない。理想を言うなら、このガルニチュールだからこそ料理が完成する、とまで言えるくらい料理としてのロジックというのがあってほしいものですよね。で、これが言えるのは、やっぱり要素を絞りこんだ場合じゃないかと。
まぁ、野菜生産者が言うべきことじゃないんですよね。いろんな野菜をたくさん使ってもらわないと「ショーバイあがったり」なんですから。ただ、ウチの商いにかんしていうなら、大量生産、大量消費がなじむジャンルでもないんですよね。
えー、ちなみに、まきもの屋の産直「おまかせ西洋野菜セット(定期便)」ですと、いちどに揃う品目はハイシーズンに最大で15種類くらいでしょうか? もちろん有機JASじゃございません。ビーツなんか色ごとに数えませんから、そういうのを勘定に入れたら20くらいにはなると思いますけど。個人の能力の問題でしょうけど、これ以上はムリですね。何をやっているんだか自分でもわからなくなっちゃいます。「有機」じゃなくてこうなんですから。きちんとJASの認証をとって、それに付随する膨大な事務作業をやって…となると半分以下になるでしょうね。これはあくまでも「まきもの屋の場合」なんで、ヨソ様はちがうと思いますけど。
あー、そうそう、20や30くらいの品目数ならまぁお気持ちはわからなくもないんですが、さすがに3ケタの品目を一皿に盛りこむとなると、生産者としてはご遠慮申しあげたいですな。それぞれの野菜に適した火入れと味つけをしているとおっしゃられても、じっさいに食べ手が知覚できなかったら意味ないんです。ここまでいっちゃうと、はっきりいって野菜を粗末にしているのと変りありませんがな。「飽食の時代」なんでしょうね。




