文化に優劣はないんよね

いささか、いや、かなーり抽象的なハナシでごめんなさい。野菜のはなしも料理のはなしもでてきません。だから、もちろん読まずにスルーしちゃって結構です。読んでください、なんてお願いするつもりは毛頭ございません。

フランス料理、イタリア料理のことを「異国の食文化」だから「きちんと理解すべき」なんてよく申しあげております。でも、誤解していただきたくないんですが、なにもとりたててムズかしいものでもないし、ましてや高等なものじゃございません。たんに、現代の日本で生れ育った日本人にとって未知の、あるいは誤解しやすい要素がたくさんあるから、そういうのを理解するのは大切だ、と申しているだけなんです。

フランス料理がイチバン! とか、イタリア料理が最高! なんてのは個人の好き嫌いとしてはOKでしょうけど、そういうことを公に言うのはあんまりスマートじゃないというか、クレバーじゃない印象ですよね。じっさい、昨今はそういうご仁はさほど多くはないと思います。

でも、昔はけっこうあったんですよ。俳句を欧米の詩とくらべて低級だときめつけたり、漢字カナまじりの表記は文明的じゃないからローマ字表記にすべきだ、なんて論調がかなり力をもっていた時代があったと聞いております。

いまでも、多少はそういう意識ってのこってるんでしょうね。「オシャレなフレンチ」とか、腹立たしい表現ですが「オシャレな西洋野菜」とか。こういうときの「オシャレ」って、洗練されていて素敵な、上等のものってニュアンスでしょうか。でも、「オシャレな鮨」とか「オシャレな茶懐石」とはあまり言いませんよね。鮨も茶懐石も洗練されていて素敵な、上等の食文化ですけど。

いまヨーロッパでは、日本文化ってのは「オシャレ」なものらしいです。もっとも、上のパラグラフでつかったような意味とはちょっと違って、たんに「カッコイイ」とか「自分たちと違っていることが素敵」といったニュアンスだと思います。いや、フランスなんかですと、マンガの影響もあって、メンタリティのうえで「自分たちと違っている」という意識はあんまりないかもしれません。かなり生活のなかにアジアティックなものがはいりこんでいるらしいんで。ただ、やっぱりエキゾティックなものではあると思います。

えー、このエキゾティズム=異国趣味なる概念ですけど、近世以降のフランスでの中国文化や日本文化の受容とかブームといった比較文化史的な問題では大切なキーワードになります。たとえば、19世紀末から20世紀はじめにかけての美術界におけるジャポニスムなんてのがそうです。いえ、ジャポニスムがたんなる異国趣味だったというのではありません。異国趣味というのはこれを理解するうえで大切なキーワードだと申しているのです。

ハナシが脱線しちゃいましたが、ヨーロッパ文化は上等な立派なもので、自分たちの日本文化は低級な、恥ずかしいものだ、なんて考えは、はっきり申しあげてかなりおバカチンです。文化の価値に軽重はありません。価値は等価なんです。レヴィ・ストロースが何十年も前に喝破してくれています。ただ、違いは厳然としてある。だから、いいとか悪いとかまったく別問題として、違うもの、知らないものはわからない。そのまま放置するのか、知り、理解しようとするのか、そういうことなんです。

差し障りがあるかもしれませんけど、ハッキリ書いちゃいますね。料理でいいますと、「皿のうえにちりばめられたエスプリ」なんて表現をみると、なんとも背中がかゆくなっちゃうんですよね。まぁ、それはいいんですけど、この語を好んでお使いになられる方々は、いま申しあげているような 文化の等価性みたいなことってあんまりご理解なさっていないんじゃないかな、って気がしております。

ついでに「エスプリ」という日本語の定義を家人が「新解さん」で調べたところ「(機知に富んだ)精神(の働き)」だそうです。うーん、どうなんでしょ? もしこの語をお使いになるのがお好きでしたら、いちどLe Petit Robert 1での定義くらいは目をとおしておくことをおすすめしたいですね。たぶんこういう意味でお使いになりたいんでしょ?

Aptitude, disposition particulière de l'intelligence / Qualité, valeur intellectuelle / Vivacité piquante de l'esprit; ingéniosité dans la façon de concevoir et d'exposer qqch.

さいごのが、いわゆる「エスプリに富んだ会話」みたいな意味ですかね。

でもね、この単語、そもそもが「父と子と精霊」の「精霊」の意味であり、『法の精神』の「精神」の意味なんですよね。英語の"spirit"ドイツ語の"Geist"にあたりますね。「ポルターガイスト」の「ガイスト」です。

そんなこともふまえて復習しますと、「皿のうえにちりばめられたエスプリ」ってのはイヤですねぇ。イメージしてみてくださいよ。精霊って擬人化されたり、天使と同一視されることがあるんですけど、胴のない芽キャベツくらいの大きさのQPちゃんの頭に羽のはえたのが料理に散らしてある(1)…。そんな料理食べたくないですよ。

ちょっとわかりにくかったですかねぇ。そのうち書きなおすか、稿をあらためますんで、ご勘弁くださいな。

  • 注1) QPちゃんって、ホントは首の下というか肩甲骨のあたりというか、ちいさな羽があるんですよね
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