「おもしろ野菜」の耐えられない軽さ

ようこそ、「まきもの屋の生活と意見」へ。
この新聞記事はサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。 うん、「また」なんだ。済まない。

野菜なんて所詮は流行りモノです。流行に振りまわされているんですよ。流行ってのはとうぜん「流行り廃り」ということなんです。で、このところ「廃れる」のがちょっと早いんじゃないか、そんな気がするんですよ。市場投入からブームが起きるまでの助走期間ってのはけっこうあるものなんですけど、ブーム自体はヘタをすると1、2シーズンで過ぎちゃう…みたいな。需給バランスの問題もあるんでしょうけど、陳腐化するのがあまりにも早いんじゃないかと…。

上でリンクを張った記事にもあるように

テレビなどメディアに出たら、その野菜はもう遅い。 良い情報を早く入手して、形や色、味の面白いものを仕掛けていきたい

たしかにそのとおりなんです、流行現象としては。で、つねになにか次の「新しい」「珍しい」ものを探すんですよね。でも、近い将来の「行き詰まり」がすでに見えちゃってるんですよ。そのことに生産者じしんが気づいているかどうかは別として。

だいたい、野菜の種類なんてのは数がかぎられているんです。まるっきり新しいものなんてそうそうはでてきません(そういうものに力を入れておられる種苗メーカーや試験場のブリーダーさんもいらっしゃいますけど)。ということは、「珍しい野菜」ってのはある集団においてそれまで「未知」あるいは知名度がきわめて低かった、ヨソの野菜、ということになります。世界は広うございますから、ワールドワイドでさがせば、ひとりの生産者が一生かかっても扱いきれない くらいの種類があるかもしれませんし、ないかもしれません。すくなくともイタリア、フランスの野菜については、すぐにネタが尽きちゃうことだけはたしかです。

困っちゃいますよね。でもね、「珍しい」ことに価値をおくからそうなるんです。自分じゃ見たことも食べたこともない野菜に安易に手をだすからそうなるんです。

どんな野菜でも、伝統的なものであればあるほど、その地域の風土、文化を背負っています。軽々に「珍しい」とか「おもしろい」なんて価値観でとらえちゃ失礼なくらい、重みをもったものなんです。そのことを忘れちゃいけません。

なのに、現実には「珍しい」ということだけを消費、いや浪費しちゃってるんですよ。「使い捨て」ているといってもいいかもしれません。ワーっととびついて、飽きたらポイ。ねぇ、いまフランスでは日本野菜がブームですよね。水菜とかカブとか。1年か2年したらブームが過ぎて、誰もかえりみてくれない、なんて状況になるかもしれませんけど、そういうのを想像してどう思いますか? 日本人として嬉しいですか? 平気ですか? それとおんなじことなんですよ。

まえにも書きましたけど、日本で西洋野菜をつくるとき、しばしば本国のものと「決定的な差」があることに気づかされます。その差をうめるというのは、一朝一夕にできることじゃありません。そんなにカンタンなものじゃないんですよ。

いえね、誤解してほしくないんですけど、上でリンクを張った記事に紹介されている生産者さんを批判しているわけじゃないんですよ。記事の生産者氏は外国語もおできになられるようだし、きっと、その他大勢の「おもしろ野菜」屋さんとは一線を画しておられると思います。むしろ、こういう記事を読んで「おもしろ野菜」に手をだそうと安易に思うようなひとびとに警鐘を鳴らしたいんですよ。

そりゃ、ウチの商品だって「おもしろ野菜」的なものはあります。チャードなんかいい例でしょう。きれいですからね。そもそもフランス、イタリアのものじゃないんですよね。US野菜といったほうが正しいと思います。ただ、フランスにも導入されていまして、ガストロノミックなレストランなどで使われているんですよね。それに、何にも考えずに栽培しているわけじゃないんです。ウチのチャードは他産地のものとくらべて色が鮮やかだというご評価をいただくことがあります。そりゃそうです、そういう種子をわざわざ入手しているんですから。

ところで、このエントリのタイトル、クンデラの『存在の耐えられない軽さ』のもじりです。ちなみに前のエントリはプルーストの『失われた時を求めて』のなかの章題のもじり。まぁ、どうでもいいことですけど。

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