べつに西洋野菜を普及させたいわけじゃない
20年くらいまえとくらべると、イタリア料理店、フランス料理店の数は飛躍的に増えた。イタリア、フランスで修行をしてきた料理人さんもたくさんいる。トレヴィスがサラダにはいっていることなんかもはやめずらしくもない。ずいぶんと状況がかわったな、と思うのである。でも、あまり日本で知られることのなかった西洋野菜を「新野菜」として普及させようと、レシピつきでキャンペーンしようなんてまず思わない。極端な言いかたをすると、人間、すでに知っているものしかこれから知ることはないのである。先日書いたトピナンブールの食べかたなんか、ほとんどのひとには意味不明だと思う。そんなことは百も承知なのである。もっとも、いまのところ苦情もないので、書きなおすつもりもない。
あたらしく導入された野菜が普及、定着するかどうかは「和風」というか日本風の調理になじむかどうかできまる。オクラ、モロヘイヤあたりが好例である。個人的な体験にすぎないが、まきもの屋が子供のころ、カリフラワーはゆでて酢味噌をつけてたべるものだった。鍋料理にいまや欠かせないハクサイは日清戦争後に導入された中国野菜である。日本での歴史はそんなに古くないのに、すっかり日本の伝統野菜の風格である。逆に、日本に導入されて1世紀もたつアーティチョークがいまだに「めずらしい野菜」にとどまっているのは、日本風の料理になりにくいせいだろう。
ひるがえって、チコリエなんかどうしたってお手軽に日本風の料理になじむとは思えないし、個人的にはそんなことは望まないのである。イタリア野菜はやっぱりイタリア料理でつかってほしいのである。そんなことをいっても、市場に出荷したあと、まきもの屋の野菜がどういう料理になるかなんて、知るよしもないし、もちろん干渉する権利もない。好きにつかってもらえばいい。和食でもフランス料理でもいいのである。品質、味をただしく評価できるひとにつかってほしいと願うだけである。
なにも「知らない」ということを否定しているわけではない。知識を得るのはだいじなことである。ただ、まきもの屋としてはせっせとキャンペーンをするほどのモチヴェーションはないというだけのことである。とりあえず、一般むけの、かんたんな参考書を紹介しておく。
- 芦澤正和, 内田正宏監修『花図鑑 野菜』草土出版、1996.
- Victor Renaud, Tous les légumes, Ulmer, s.d.




