サイトから「産直」関係のページを削除しましたが…

「産直」をやめるということでもありませんし、シーズン前に「コンプレ」になったというわけでもございません。ただ、ちょいとばかり、営業方針といいますか、アプローチの方法を変えてみようかと思案中なんです。

で、いったんスッキリさせちゃいました。もちろん、お問いあわせ、ご予約いただければレストラン様むけ「産直」のお取引は承ります。

ただ、個人経営でなにぶん小規模なものですから、キャパがきわめて小さく、ロスを出さないためにもできるだけはやく「コンプレ」になるよう営業努力いたしますので、どうかそのへんはご理解いただきたくお願いいたします。

トリッパのトマト煮込み、グラタン仕立て

おうちイタリアン(笑)です。先日、タブリエ・ド・サプールをやったときに下茹でしておいた"cuffia"(ハチノス)です。冷凍してあったプリンチペ・ボルゲーゼのペーストで煮こんで、パン粉とグラーナ・パダーノをふりかけて焼いただけ。イタパセくらい飾ればよかった。

イタリア語の"trippa"もフランス語の"tripes"と同様に牛(というか反芻動物)の胃の総称ですけど、イタリア語だとそれぞれの胃の名称、ようするにミノ、ハチノス、センマイ、ギアラにあたる語があんまりにも異称が多くって、それこそ素人には手におえません。だいたい、料理名といいますか、食べるときは「トリッパ」は「トリッパ」なんで、あんまり気にする必要もないんですよね。ただ、本気でリチェッタを読もうとすると、小学館の伊和辞典じゃまるっきりです。

料理のほうですが、正直に白状します。三口くらいでイヤになって、パンにバターとアンチョヴィをつけて夕食をすませました。家人はまぁまぁよろこんで食べてくれたんで、料理じたいがひどく失敗というわけじゃないと思うんですが…。

関係ないですけど、フランスやイタリアで3日連続で外食って辛いんですよ。10年前でそうだったんですから、いまだと2日ともたないかもしれません。いえ、体調とかそういうんじゃないんですよ、かならずしも。だから、おなじ外食でも日本料理とか中華あるいはヴェトナム料理だと平気だったりするんです。

よく「食文化」ということを申しあげますけど、これって単に「食習慣」とか「食にかんする風俗」みたいな意味じゃないんです。たとえばラブレーなんかお読みいただくとおわかりいただけるでしょうか、まるっきり考えかた、感性がちがうんですよ。それをどう捉えていくかっていうのが「異文化理解」ということになりますね。

厭世感

このところ「有機」「無農薬」のネタをしつこく書いてまいりましたが、もう、ぜーんぶ削除して取り下げちゃってもいいです。なかったことにしてほしいくらいです。

理由? 平成21年7月に実施された食品安全委員会による「食品安全モニター課題報告」を読んだんです。もう、あんまりの意識レヴェルの低さに愕然としちゃいました。

このモニターってやつ、たんなるアンケート調査じゃないんですよ。かなり対象を絞りこんでおりまして、一般消費者は34%だけ、あとは食品関係と医療や教育のプロなんです。

で、この結果。ヒドいもんです。くわしくはPDFファイルのほうをご覧いただきたいんですが、 「食品購入時に最近、意識したこと(あてはまるものすべて回答)」という項目の結果は、多い順に「鮮度」「価格」「産地(国産・海外産等)」「安全性」「おいしさ」「季節感・旬」「栄養」「生産者・食品メーカー」…、という感じなんですよ。

いいですか、そのへんのスーパーで買い物してるオバちゃんたちに回答してもらったんじゃないんです。回答者の6割以上が食にたいして何らかの責任のあるプロなんですよ。で、これなんです。

で、細部を読んでいくとさらに暗澹とした気分になります。このモニタリング調査のまとめをやった担当の方に悪意があったんじゃないかと思うくらい、愚かな回答者のひとびと(しかも半数以上はプロ)の姿がうかびあがってくるんです。いちいち批判する気も起きませんがな。

もう、あんたらナニも喰わなきゃいいじゃんって気分ですね。

ひとつよくわからなかったんですが、「問7 食品中に残留する農薬の基準について、正しいと思うものを全て選んでください。」という設問にたいして、「一部の農薬については、残留基準(一律基準を含む)が設定されていない」という選択肢がありまして、これは「誤り」ということで扱われているようなんですけど、いわゆるポジティブリスト「対象外物質」として掲げられている66の物質はどうなるんでしょうか? 「このリストにあるのは農薬じゃない」なんておっしゃらないでくださいね。重曹なんか思いっきり農薬登録あるじゃないですか。

さらに厳密に言うと、「農薬」のなかには「天敵昆虫」ってのもございまして、ようするにハチとかそういうのをハウスに放したりして使うんですけど、これなんか「残留」というのがあり得ないものですから、上のモニタリング調査の文言は不正確ってことになっちゃいますよね。

この項目を担当なさった方は「農薬取締法」とその関連ドキュメントをどのくらいお読みになったんでしょうね? まぁ、どーでもいいです。

そんなわけで、なんだか疲れちゃいました。みなさんお好きになさってください。当面のあいだは何も申しあげませんので。でも、中途半端な知識とか理解しかないのに「有機」だの「無農薬」だのというコトバを、まきもの屋に向っておっしゃらないでください。心からおねがいします。きっと、ものすごく不機嫌になって「あんたに使ってもらうために野菜を作っているんじゃないよ」と言っちゃいそうな気がしますんで。

お皿のうえの○○種の季節の有機野菜、何種類まで可能?

しつこく「有機」ネタです。タイトルの「○○種」のところには数字を入れます。さいきんよく見かけますよね。野菜の種類の多いことを誇るような料理名って。もう、10やそこらじゃご満足いただけないみたいです。なにしろ、あの関西の有名店なんか、3ケタですから。もっともこの有名店の場合は「有機」とは謳っていなかったと記憶していますが。

数えかたというのもあるでしょうけど、20を越えるとかなり多いですよね。1軒の農家じゃ揃えるのが困難かもしれません。いや、ひとつの産地で揃えるのだって「有機」という縛りをかけちゃったら、難しいかもしれません。

いや、日本全国のものを仕入れるからノープロブレム、ってことなんでしょうな。現実的にはそうだと思います。ただね、やっぱりいくつか気になるんですよ。

このBLOGでも何度も申しあげてきましたけど、飲食店さんは「有機」という表示をどのくらいきちんと理解して、「正しく」お使いなんでしょう。「一部有機野菜使用」であればそう表示すべきでして、「○○種の季節の有機野菜」なんて料理名は不当表示にあたる可能性があります。

だいたい、有機JASの認証と格付(ようするにJASマークのシールなどが貼られるところまでの事務作業)があってはじめて「有機」といっていいことになっているんです。本質的ないい悪いは別にして、そういうルールになっているんです。認証を取得していない「事実上」有機栽培、無農薬栽培をしている生産者のものは、やっぱり「有機」「無農薬」と表示して売ってはいけない、そういうことに決まっているわけなんです。

今回のネタにしている「○○種の季節の有機野菜」ですと、飲食店さんがルールをきちっと守って、有機JASの野菜だけ使っているとしましょう。いささか揃えるのがタイヘンじゃないかと…。そりゃ、一般野菜50品目くらいは常時安定的に有機JASモノが流通しているはずです。でもこれは一般野菜のはなしなんですよね。そこで無問題となるんでしょうかね。ゴボウとかレンコンとか、いまどきのフレンチじゃあたりまえみたいだから、べつにいいんでしょうね。だとすると仕入れはそんなに大変じゃないかも。

あとですね、いちばん大きな疑問なんですけど、日本の有機農業ってのは「身土不二」「適期適作」の概念をかなり重要視します。有機農業というのは「農」そのものの「あり方」の問題であって、たんに味がどうとか安全性がどうとか、そういう表層的なことじゃないんですよね。

だから、個人的な意見ですけど、消費者エゴむきだしの、きわめて皮相的な「有機野菜」の扱いにはものすごく違和感があるんです。

もうひとつ不思議なんですけど、そんなに食材の種類が多いと、料理そのもの、とくに味と香りについて、どういうロジックで組みたてることになるんでしょう? 食べる順番とか指定するんですかね? まさかメリメロでいいなんてこたぁないですよね? 種類が多いってことは、ただでさえひとつひとつの野菜はごく少量にならざるを得ないんですから、それを「まじぇまじぇ」しちゃったら何を食べてるんだかわけがわからなくなっちゃうでしょうからね。

これについては、前々から疑問だったんですよ。「付け合わせ」を構成している要素が多すぎるんじゃないか、って思うことがしばしばなんです。肉料理でも魚料理でもいいですけど、フランス料理でしたら、中心となる食材とソースの組みあわせがあって、それを補完する意味でガルニチュールを考えてきますよね。このとき、主役の食材、ソースとの相性ってのはもちろん重要ですけど、合えばいいってもんじゃない。理想を言うなら、このガルニチュールだからこそ料理が完成する、とまで言えるくらい料理としてのロジックというのがあってほしいものですよね。で、これが言えるのは、やっぱり要素を絞りこんだ場合じゃないかと。

まぁ、野菜生産者が言うべきことじゃないんですよね。いろんな野菜をたくさん使ってもらわないと「ショーバイあがったり」なんですから。ただ、ウチの商いにかんしていうなら、大量生産、大量消費がなじむジャンルでもないんですよね。

えー、ちなみに、まきもの屋の産直「おまかせ西洋野菜セット(定期便)」ですと、いちどに揃う品目はハイシーズンに最大で15種類くらいでしょうか? もちろん有機JASじゃございません。ビーツなんか色ごとに数えませんから、そういうのを勘定に入れたら20くらいにはなると思いますけど。個人の能力の問題でしょうけど、これ以上はムリですね。何をやっているんだか自分でもわからなくなっちゃいます。「有機」じゃなくてこうなんですから。きちんとJASの認証をとって、それに付随する膨大な事務作業をやって…となると半分以下になるでしょうね。これはあくまでも「まきもの屋の場合」なんで、ヨソ様はちがうと思いますけど。

あー、そうそう、20や30くらいの品目数ならまぁお気持ちはわからなくもないんですが、さすがに3ケタの品目を一皿に盛りこむとなると、生産者としてはご遠慮申しあげたいですな。それぞれの野菜に適した火入れと味つけをしているとおっしゃられても、じっさいに食べ手が知覚できなかったら意味ないんです。ここまでいっちゃうと、はっきりいって野菜を粗末にしているのと変りありませんがな。「飽食の時代」なんでしょうね。

低温調理って何度なの?

WEBで42℃とか38℃で「火を入れた」魚料理というのをみかけまして、ちょっと不思議に思ったんですよ。

いえ、フランス語で"tiède"っていえば、まぁなんとなくわかります。でも、だいたい芯温を60〜65℃、ギリギリで58℃くらいにすると思っていたんですよ。だって、そうしないと細菌が大増殖しちゃうじゃないですか。

真空調理だからダイジョブ? ンなわけありませんよね。たしかに、真空だと好気性細菌は滅菌できますけどね。黄色ブドウ球菌なんて食中毒をひきおこすので有名な常在菌ですけど、コイツ、嫌気性なんですよね。つまり、空気が少ないほうが繁殖しやすかったりするんです。大腸菌も嫌気性でしたな。で、あの有名なO157なんてのは大腸菌の一種なわけですよね。芯温75℃1分以上で滅菌すべし、なんて言いますけどね。

ふつうは「火入れ」が殺菌を兼ねていたりするわけですよね。その火入れが細菌の増殖を止めないどころか助長しちゃうんだとしたら、何か別の方法で除菌なり殺菌なりしてやらなきゃなりませんね。どうなさっているんでしょう?

食品に使用できる除菌剤、殺菌剤はけっこうたくさんありますよね。古くからあるのだと、次亜塩素酸とか過酸化水素、アルコール、いろいろですよね。

でもまぁ、フツーに考えて40℃くらいの温度にするって、よっぽど短時間じゃないと菌の増殖が不安になりますよね。やっぱり殺菌剤だか、除菌剤だかを使ってるんでしょうかねぇ。

まぁ、そのこと自体はいいんですよ。どういうふうに殺菌、除菌するのかなって思っただけなんですから。ただ、そういう調理方法をなさっているお店が、もし、無農薬の野菜をウリというかメニューに謳っていたとしたら、そりゃ小一時間(略)ってな感じには思うでしょうね。

って言うか、以前から疑問だったんですけど、有機とか無農薬のお野菜に「こだわる」お店って、燻蒸、燻煙とかしないんですかね? 気温の高い時期はとくに虫が外から入りこんできたりするでしょうけど、どうやって駆虫してるんでしょう? まさかスプレー式の殺虫剤をプシューなんてことホールや厨房でなさってないですよねぇ。スプレー式の殺虫剤は合成ピレスロイド剤が多いですね。 そりゃピレスロイドは残効性が低いから「残留」を気にする必要はないでしょうけど、コレ、思いっきり「農薬」とおんなじものなんですよね。

「無農薬のお野菜で安全、安心♪」なんて言いながら、店内で殺虫剤=農薬を撒いていたらシャレになりませんがな。ほんと、実際のところみなさんどうなさっているんでしょう? 知りたいです。どなたか教えてくださいな。って、こんな嫌味たっぷりの書きかたじゃ誰も教えてくれないかな…。

キタアカリのソテー、タブリエ・ド・サプール、ソース・グリビシュ

とてもひさしぶりの「おうちフレンチ」ですが、「専門料理 2月号」のルセットを見ながら一部手ぬきでやりましたんで、何も申しあげるべきことはございません。"bonnet"(ハチノス)が冷凍モノということもあって、茹でこぼしは計5回、さらにたっぷりの白ワイン、ハーブ、ニンジンで下茹でして、「なにもそこまでせんでも」というくらい臭いを抜きましたけど。

タブリエ・ド・サプールにあわせるソース・グリビシュはシブレット風味にするのがよい、なんてどこかで読んだ記憶がありますが、今回は雑誌のルセットにならってパセリ(ただしイタパセ)をつかってみました。ついでに玉子の白身もアシェして入れたんですが、これは好みじゃありませんでした。でも茹で玉子の白身だけ残っても困りますからねぇ。黄身を抜いた凹みにキャビアでも詰めればそりゃ、いい前菜になるんでしょうけど、マヨネーズじゃいけませんな。あれは黄身がないと耐えられませんから。

じつはこの料理、フランスで食べたことないんですよ。だからホンモノは知りません。「おうちフレンチ」の本領ってところでしょうか、なんとなく、そこそこおいしければOKってことになります。もっと臭みを抜いたほうがよかったかと思いましたが、家人にいわせると、これ以上抜くと何を食べてるんだかわからなくなりかねない、ということなんで、良しとしましょうか。上質のトリップの料理ってのは香りというか匂いというか、アレがないとおハナシになりませんが、どうも安い冷凍モノのせいでしょうか、似た匂いではあっても、根本的に何かが違う、やっぱり臭みになっちゃうんですよ。カンで食べた例の有名な煮込みなんてすごい匂いでしたけどね、旨いんですよ、匂いもふくめて。これが「おうちフレンチ」となるとうまくいかないんで、徹底的に無臭を目指しちゃうことになるんです。

それにしても高コレステロールな料理です。ワインは必需品です。パネをバターじゃなくてオリーヴオイルでソテーすれば多少はヘルシー? いや、立場上、ダイヨウ反対派ですんで。

飲食店での「有機」表示についてさらに補足しときます

お店のWEBサイトとかBLOGで「食材入荷情報」として「○○ファームさんの有機野菜」という表現で写真つきで紹介したとしますね。もし○○ファームさんが有機JASの認証を取得していなければ、これJAS法でアウトです。もしもお店で「○○ファームさんの有機野菜、お頒けします」なんてやっていたら完璧に真っ黒クロスケ。告発されたらペナルティが課される可能性もあります。

いっぽう、メニューに「有機野菜のテリーヌ」などと書くのはOK。ここが法(王庁)の抜け穴なんですよ(1)。瓶詰めやレトルトといった「加工食品」には有機JAS規格が適用されるんですが、レストランで提供される料理はこの「加工食品」あつかいにはならないんです。ただ、いわゆる「不当表示防止法」とか「不正競争防止法」あるいは刑法の詐欺罪を適用することだって不可能じゃないかもしれません。ホントはNGなはずなんですよ、これだって。

いいですか、有機JAS認証を取得していない、でも「有機農業にとりくんでいる○○ファームさん」という表現はOK。具体的な食材を指して「○○ファームさんの有機野菜」という表現はアウト。メニューに「○○ファームさんの有機野菜のテリーヌ」はOK(というかグレー)。役所の管轄がちがうからこんな奇妙な事態になってるんですよ。困ったものです。

どう思われますか? ショーバイだから売れりゃなんでもいい、って考えかたもあるかもしれませんけど、このあたりの事情をよく理解しないままに売るのはモラルの問題としてどうなんでしょう?

あとですね、「ビオ」って言葉。ヨーロッパの"BIO"は日本の「有機」にあたるんですよね。フランスだと"AB"マークがついたものだけがそう呼ばれます。まちがっても「リュット・レゾネ」のものを「ビオワイン」なんて呼ばないでくださいね。無知がバレます。ついでに申しあげると、日本では「オーガニック」という語は有機JASで規制されてますけど、現状では「ビオ」は野放し状態だったと記憶しています。まったくねぇ、農水省がおバカチンだからこういうことになるんです。

  • 注1) この冗談、だれにもわかってもらえないんでしょうねぇ。いえ、いいんですよ。このエントリの結びのヒトコトと共鳴することになってるんですけど。いわゆるオヤジギャクですから、あんまり品のいいモンじゃありませんしね。

参考文献

しつこいようだが、まきもの屋は有機農業を看板に掲げてはいない。それはさておき、有機だの無農薬だのとおっしゃる方々には、最低でもこのくらいはよくお読みいただきたいものである。

  • アルバート・ハワード『農業聖典』コモンズ、2003年。
  • アルバート・ハワード『ハワードの有機農業』上・下、農文協、2002年。
  • J.I.ロデイル『有機農法—自然循環とよみがえる生命』農文協、1974年

思想的な核として必読はこの3著(日本語版だと4冊)。福岡正信とかも面白いんだが、誤読する可能性があるのであんまりおすすめしたくない。まきもの屋の飼い猫「岡田松吉」とよく似た名の方は新宗教の教祖様だった方なのでビオディナミックのシュタイナーと同様、一般的ではないだろう(ちなみに「肥毒」という語が特徴的だからすぐにこの系列はわかりますな)。

やや技術的だが、

  • 西尾道徳『有機栽培の基礎知識』農文協、1997年。
  • カトリーヌ・ドゥ・シルギューイ『有機農業の基本技術』八坂書房、1997年。
  • 日本有機農業研究会編『有機農業ハンドブック』農文協、1999年。

は、一般の方にもおすすめできる良書だと思う。

個人的にはカーソンとか有吉はおすすめしたくない、というか、読んでほしくない。もう読んじゃったんならしょうがないけど、知らないんならそのままのほうが絶対にいいと思う。だいたい、偏りがはげしすぎる。センセーショナルだった分だけ、誤謬もあるみたいだ。

何かを糾弾しようとするときは、それに対するオルタナティヴを提案できるというのが最低条件だと思うんですよね。『沈黙の…』とか『複合…』にはそれがない。ハワード卿の著作はそこがちがうんですよ。オルタナティヴの提案でできている。しかもそれは説得力もあり実績もある。どこかの政党なんかとはずいぶん違いますよね。

有機、無農薬の表示について農水省、厚労省、経産省あたりが足並みを揃えるべき

タテ割り行政の弊害ってヤツでしょうな。農産物に「有機」「無農薬」「減農薬」といった表示をすることは、農林水産省が管轄している分野ではそこそこ規制が徹底されているんですよ。つまり、野菜とか米とか、農産物そのものあるいはその加工品のレヴェルです。

外食産業なんかですと、「有機」「無農薬」の表示は根拠なしに「やりたい放題」です。これを規制する法律はおろか法令も通達も存在を聞いたことがありません。あるんですかね、ホントは? ないとオカシイと思うんですよ。飲食店の「食品偽装」とかって大問題になるじゃないですか?

だいたい、「無農薬」という表示は農水省の「特別栽培農産物ガイドライン」で「望ましくない」とされておりまして、事実上は禁止と考えたほうがいいものなんですよ。「有機」についてはいわゆるJAS法という法律とその事実上の運用基準である「有機農産物のJAS規格」にもとづいて第三者機関による「認証」を得て、それをただしく表示したものだけが認められるんです。違反するとペナルティがあります。

ところが抜け道というんですか、やっぱりこれ「ザル法」みたいなところがありまして、生産者が「有機農業を営んでいる」とか「無農薬栽培に取り組んでいる」と表現することは可能なんです。有機JAS規格にしろ特別栽培ガイドラインにしろ農産物そのものにどういう表示をつけるかというところしか問題にしていないからなんです。

あまり知られていないことなんですけど、特別栽培ガイドラインは農水省の「通達」なんで、遵守する法的義務はありません。が、事実上は指導がはいっちゃうらしいです。よくわかんないのは、いろんな「認証団体」というNPO法人やら株式会社やらがけっこうな数ありまして、そういうところが「特別栽培」の「認証」ってのを有料でやっとります。

で、この「特別栽培」の「認証」をやっている団体ってのはようするに有機JASの認証を請け負っているところなんですよね。どうです? なんか香ばしいでしょ?

ちなみに、有機JASってのは膨大な書類作成と、その認証機関に支払うべき手数料といいますか、そういう経費がものすごいです。日本でそこそこ古くから有機農業にとりくんでおられる方々のなかには、有機JASの認証をとっておられないところも多い。

これが問題をややこしくしちゃってるんですよね。有機農業界の大御所がスルーしちゃってるもんだから、なくてもOKということになります。そりゃ、農産物の「表示」の問題だけですから、実務的にはそれでいいんです。が、有機農業界の大御所つまりは名の知れた有機栽培農家が生産したものであれば、やっぱり「有機」だと思いますよね、とくにお客さんは。

おわかりいただけるでしょうか? ようするに制度的に問題がいっぱいありまして、どうせ規制するんだったら作り手から食べ手までのあいだ全部をきっちりコントロールすべきなんですよね。そのへんがお役所仕事のせいでしょうか、うまくいっていないんです。

このBLOGをお読みくださっている方の多くは流通、飲食関係者、(あと生産者もいるんでしょうね、あんまりうれしくないんだけど)だと思いますんで、もういちど有機とか特栽といった表示問題についてはどういうスタンスでおつきあいなさるか再考なさることをおすすめします。とくに、飲食店さんは安易に「有機」「無農薬」という表記をつかっていいのか、法律上の問題ではなく、商倫理というかモラルの問題としてお考えいただけたらと思うんですがいかがでしょう? それに、いまどきは飲食店で「有機」「無農薬」って謳うのもかなりベタな印象があるんですけど…。

野菜物語?

なんか、以前に似たようなタイトルでぜんぜんちがう内容のエントリを書いたと思うんだけど、まぁ、誰も気になさらないだろうからスルーしちゃいましょう。

販売手法として、ストーリー性の付与というのはジャンルを問わず有効なもののひとつとされていますな。いまどきよくある作り手や売り手の「思い」なんてのもこのストーリー性付与のヴァリエーションといっていいでしょう。

野菜ですと、塩トマトとかバラフあたり、物語性の付与でうまくいっているパターンでしょうな。

野菜物語を仕立てる(もちろんでっちあげなんかじゃなく)のに、いちばん手っとりばやいのは栽培方法、それも工夫とか努力しているポイントとか、そういうところをアピールするわけです。ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ(いわゆるタルディーボ)なんかそうですよね。ものすごく特殊な栽培方法で世界的に有名なわけですから。

もうひとつ、物語としていいのは、品種なんです。それも土着の、先祖代々うけつがれてきたようなヤツ。できたら門外不出がいいですね。生産者の○○さんの家で昔からたいせつに伝えられてきた品種。かなりキャッチーですな。

うーん、まきもの屋は野菜物語にはあんまり向いていないんだろうか? なにしろ栽培方法は部外秘のものが多いし、品種だってそんなに特別なものは使っていません。ただ、マネされちゃかなわないから品種もお客様から聞かれなければ言いません。

いえね、「物語性」というコトバじたいホントは不適切だと思うんですよね。「わかりやすく魅力的な情報」と表現したほうが正確だと思いますね。だいたい、ホンモノの「物語」ってのは、かならず登場人物がいて、始まりがあって途中があって終りがある。これにあてはまらない物語というのは存在しません。ね、商品を売るときの戦略的手法としてはあんまり適切な用語じゃないでしょう?

いずれにしても、商売上のテクニックにすぎないんですけどね。

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